借地権を相続したときはどうすればよい?
そもそも借地権ってなに?

 親から実家を相続したけど自宅は借地に建っていた。借地権とは聞きなれない言葉だけれど、どういったものなのか。相続するにあたって悩んでしまう方もいるかと思います。それでは借地権とはどういったものなのか、借地権を相続した時の注意点を解説します。

借地権とは?

 借地権とは、土地を土地の所有者に対価を支払って使用していることで生じる権利をいいます。特に建物を所有する目的で借りている場合に「借地権」として保護されます。
 建物所有が目的であることが必要ですから、資材置き場や駐車場などは借地権の対象ではありません。借りている権利の内容は「地上権」または「賃借権」です。権利ですから当然に相続の対象になります。
 借地権には大きく分けて2種類あり普通借地権と定期借地権とがあります。また借地についての法令は平成4年まで借地法と借家法とに別々に規定されていましたが、現在では借地借家法として統一されています。平成4年8月1日以前に成立した借地契約(旧法借地権)は更新後も旧法借地法が適用されます。
親族間など土地の所有者と特殊な関係にあるため賃料を支払わないで土地を借りている場合もあります。この場合は「使用貸借」いい、借地権は発生しません。

借地権の種類

 前述したように、借地権には大きく分けて普通借地権と定期借地権の2種類あります。

 1.普通借地権
 正当な理由がなければ契約期間が満了しても更新される借地権です。
 旧法借地権でも新法借地権でも契約期間満了後も基本的に更新されることが特長です。

 2.定期借地権
 契約時に借地権の存続期間を定めておき、期間が満了すれば借地権は消滅します。
 旧法借地権によると借地権者の権利がとても強いために土地所有者が借地を取り戻すことは難しいことでした。
 これでは土地を貸す人がいなくなるため土地所有者が安心して土地を貸すことができるように新法によって新しくできた借地制度です。
 定期借地権の存続期間は一般的には50年とされており、契約の延長や更新はできない契約です。
 マンションなどでも販売価格を抑えるために定期借地権によって建物を建築し販売することがあります。

借地権の相続

 借地権を相続した時の手続きや相続税について解説します。

登記が必要?

 一般的には土地所有者に対して相続したことを伝えておけば相続登記をしなくても問題はありませんが、相続登記をしておくことで後日のトラブルを防ぐことができます。

借地権自体の登記をすることは住宅の場合はあまり多くありません。借地権の登記をするには登録免許税がかかり税率も10/1000と売買による所有権移転登記の半分必要なくらい高いためです。また、土地に借地権の登記をしなくても建物の登記をすることで借地権の「対抗要件」を取得することができることも理由です。建物が故人の名義になっていれば建物の相続登記をすれば借地権についても相続登記を行なったことになります。

 相続登記をすることで他人に権利を主張することができますから、建物や借地権の相続登記をなるべく早めに済ませましょう。相続登記の手続きは通常の相続登記と同様です。土地所有者の承諾書が必要になることはありません。

 「対抗要件」とは第三者に対して権利を主張するための要件をいいます。土地所有者とは当事者同士なので対抗問題はありませんが、土地を第三者が取得したような場合に対抗関係になります。

地主の承諾

 借地権を相続することについて土地所有者の承諾は不要です。相続は故人の権利を当然に承継するものだからです。

 借地権を第三者に譲渡や転貸をする場合には土地所有者の承諾が必要ですが、相続の場合は必要ありません。土地所有者の承諾は不要とはいえ、今後も長い付き合いになり土地所有者からの承諾が必要なことが多くあります。相続したことを土地所有者に連絡をして円滑に付き合うことが望まれます。

 「相続」をした場合に土地所有者の承諾は不要ですが、法定相続人でない人に「遺贈」された場合は「相続」ではなく「譲渡」になりますから土地所有者の承諾が必要です。また、相続人が高齢だからという理由で相続人ではない孫の名義にできないか考えることがありますが、こちらは相続したうえでの贈与になります。そのため土地所有者の承諾が必要ですし、贈与税もかかりますから注意しましょう。

相続時の評価

 一般的に借地権の価格は(更地の評価額×借地権割合)で計算されます。

 相続税の評価は国税庁が定める路線価あるいは倍率方式によって求められます。地域によって借地権割合は異なっていますから、下記のリンクから必要な場所を探して路線価を求め借地権割合をかけることでおおよその借地権価格を求めることができます。

 路線価

 下記のように借地権割合が表示されています。

 定期借地権を評価するには相続時からの存続期間を考慮する必要があります。
 詳しくは国税庁のホームページを参考にしてください。
 No.4611 借地権の評価|国税庁

相続した借地権を処分するときの注意点

 借地権を処分するためには土地所有者の承諾が必要ですから注意しましょう。

建物を売却する場合

 相続した借地上の建物を売却することは借地権も売買することですから土地所有者の承諾が必要です。売買契約を結ぶ前に必ず土地所有者に連絡をし、承諾をしてもらわなければなりません。売買にあたっての承諾には通常承諾料を支払う慣行になっており、おおよそ借地権価格の1割程度と言われています。なお、建物を賃貸することは借地権の処分にはあたりませんから土地所有者の承諾は不要です。

建物を建て替える場合

 建物を建て替えたり増改築を行なったりするためには土地所有者の承諾が必要です。建物の建て替えや増改築は借地権の存続期間に影響を与えるものだからです。

 旧法では建物の「朽廃」と「滅失」を区分して規定し、新法ではこれらを区別しないで規定していますが、どちらも借地権存続期間中に建物が滅失しても原則として借地権は消滅しないものとしています。
 新法借地権の場合、建て替えは2年以内に行う必要がありますから注意しましょう。
 土地所有者が承諾して建て替えや増改築を行った場合には借地権の存続期間が延長されます。なお、親が借地上の建物を相続したことを契機にその子ども名義で建物を建てることは借地権の譲渡・転貸になりますから土地所有者の承諾が必要です。建物を親と子供の共有にする場合も同様に土地所有者の承諾が必要ですから注意しましょう。

 建物の「朽廃」とは古くなって朽ち果てることをいい、「滅失」とは火災や事故などによって建物がなくなることをいいます。

まとめ

 借地権ならびに借地権の相続について概略を解説しましたが、借地権の相続には複雑な問題を含んでいることがあります。
 不安なところは専門家に相談しながらトラブルを未然に防ぐようにしましょう。

■地域ブログ

東北三大祭りの1つ 仙台七夕まつり

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■不動産売却コラム

私道とは?相続時の注意点を解説

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今回は、東北三大祭りの1つとされる宮城県仙台市の「仙台七夕まつり」についてご紹介します。
七夕まつりと聞くと7月7日を想像する方が多いと思いますが、仙台七夕まつりは8月6日から3日間にわたって開催されます。

東北三大祭りといわれる「秋田の竿燈祭り」「青森のねぶた祭り」は大規模な催しものが開催されることが大きな特徴ですが、仙台七夕まつりは大きな七夕飾りを見ながらゆったり歩き、沿道の出店などで買い物をし、お祭りムードを味わうのが特徴です。。

 

七夕まつりを歩いてみよう

仙台市の主な商店街(サンモール一番町商店街・ハピナ名掛丁・クリスロード商店街・ブランドーム一番町商店街・おおまち商店街・仙台朝市商店街など)を中心に、市内の商店街のほとんどが歩行者天国となります。

また各商店街で行われているイベントなども楽しむこともできます。

▲目を引かれる鮮やかな七夕飾り
▲目を引かれる鮮やかな七夕飾り

七夕飾りにも注目!

Tanabata in Sendai

七夕飾りは各個店さんが数か月前から手作りで作製します。

そして商店街毎に飾り付け審査が行われ、金、銀、銅の各賞が発表されます。仙台では短冊、紙衣、折鶴、巾着、投網、屑籠、吹き流しと七つの飾りが飾られています。

一つひとつどこにあるのか探してみたいですね。

仙台藩祖伊達政宗公の時代から動乱期や戦火を乗り越えて今日まで続く七夕まつりです。

お祭り前後は、お盆も近いということもあり県外からもたくさんの観光客が訪れます。ホテルなどは1ヶ月ほど前から満室になるぐらいなので、遠方から来られる方は早めに計画するのがいいですね。

▼【公式】仙台七夕まつりオフィシャルHP
https://www.hamanoeki.com/
▼アクセスマップ(仙台駅前地域商店街)

私道とは?相続時の注意点を解説

 今回は私道とはどういったものなのか、また私道を相続するときの注意点を解説します。
 私道は相続手続きにおいて忘れられがちな反面、建物を再建築する際や売却する際にとても大事なものです。

私道とはなにか?

 一般に道路といっても道路交通法による道路、建築基準法による道路など規制目的や利用状況によって定義が変わります。

 公道と私道
 今回解説する私道とは、個人や会社など私人が所有する道路を指します。対する概念として公道があり、公道とは国や県、市区町村が所有する道路を指します。
 なお、登記上の地目である「公衆用道路」は公道の場合も私道の場合もあります。

      私道の形態
 私道の形態として上記A~Cのように分類されます。
 A:公道から公道へと通り抜けができる形態になっています。
 このような形態の私道は固定資産税が非課税になっていることが多いです。
 B:私道の一端だけが公道と接していて数件が利用する形態です。
 固定資産税は非課税になっていることもありますが、課税されていることもあります。
 近傍の宅地の3割程度の評価額とされることが多いです。
 C:私道の一端だけが公道と接していて奥の1件だけが利用します。
 この場合の私道は宅地の延長とみなされます。

 私道の所有
 私道は複数人が持分を持ちあう共有が多いですが、単独で所有していることもあります。
 また所有ではなく地役権という権利が設定されている場合もあります。

 小型の分譲団地などで私道を共有することが多いです。ただし、昭和30年頃に分譲販売された区画の場合は私道部分を縦や升状に細かく分筆されそれぞれ単独で所有するものもあります。なかには私道全部を個人が所有しているようなケースもあります。

 私道の注意点
 敷地から公道に至るまでに私道がある場合に、私道に対する権利を持っていなければ以下のような不利益があります。
 1. 私道を利用するために他の人の同意が必要な場合がある
 2. 私道を所有していなければ敷地を有効利用できない
  a. 建物の再建築ができないおそれがある
  b. 私道を所有していなければ通行できないおそれがある
  c. 私道を所有していなければ売却できないおそれがある
 3. 私道は相続手続きの際にもれやすい

 それぞれ詳しく解説します。

 1. 私道を利用するために他の人の同意が必要な場合がある
 私道全てを所有あるいは持分をもつ共有であれば問題がありませんが、初期に区画分譲された団地では私道を細長く分筆したり細かくブロック状に分筆をしたりして各筆の土地を購入者が単独で所有するものがあります。
 このような私道では公道に至るまで他人の土地を利用することになりますから、建物の建築や水道管、ガス管などの引き込み工事、また通行などのために他人の同意が必要です。

 2. 私道を所有(共有)していなければ敷地を有効利用できない
 前記のように私道に何らかの権利をもっていない場合には次のようなリスクがあります。
 a. 建物の再建築ができないおそれがある
 建築基準法では幅員4m以上の道路に接していることが建物を建築する際の許可条件になっていますから、今ある建物を取り壊して再建築をしたくても私道に権利がなければ再建築ができなくなってしまいます。
 b. 私道を所有(共有)していなければ通行できないおそれがある
 道路の形をしていたとしても他人の土地を通行するためには何らかの権利が必要です。
 そのため私道に権利がなければ通行できなくなるおそれがあり、通行料や使用料を支払うこともあります。
 c. 私道を所有していなければ売却できないおそれがある
 私道を所有(共有)していないことで前記のようなリスクがありますから、リスクがあるものを売却することはできません。

 3. 私道は相続手続きの際にもれやすい
 相続手続きをするときに、私道はもれやすい実情があります。
 なぜ私道は相続手続きのときにもれやすいのか、詳しい説明を次項で行ないます。

相続時の注意点

 ここでは、私道が相続手続きのときにもれてしまう理由や私道の確認方法を解説します。

 なぜ私道は相続手続きから漏れてしまうことがあるのか?
 相続手続きから私道がもれてしまう理由は次の通りです。

 1. 道路が相続対象だと思わない
 2. 固定資産税の納税通知書に記載がない
 3. 「名寄せ」では記載されないことがある

 個別に解説します。

 1. 道路が相続対象だと思わない
 所有者や相続人において道路が相続の対象だという意識がないことが多いです。
 自宅の敷地や建物を所有している意識はありますが、通常通行利用している道路に対して普段は所有の意識が薄くなってしまいます。

 2. 固定資産税の納税通知書に記載がない
 先の図のAやBのような私道には固定資産税が課税されていないことがありますから、非課税であれば毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に私道の記載がありません。
 相続手続きを司法書士や税理士に依頼する時に資料として納税通知書を提出しても記載がないためにもれてしまいます。

 3. 「名寄せ」では記載されないことがある
 相続財産を把握するために被相続人の名寄せを請求することがあります。
 「名寄せ」とは市区町村役場で登録されている固定資産税課税台帳によって課税名義人全ての不動産を記載されるものですが、役場によっては非課税の不動産を記載しないことがあります。
 そのため名寄せによっても私道を所有(共有)していることがわからないことがあります。同様に保安林や墓地(一般の墓地は利用権のみです。ここでは所有権がある墓地のことをいいます。)、課税標準に達しない土地や建物なども非課税ですから相続手続きから漏れるおそれがありますので注意しましょう。

 私道の確認方法
 私道を被相続人が所有しているかをどのように確認するかを解説します。
 確認するには以下の方法があります。

 1. 公図と登記記録とを照らし合わせて確認する
 2. 登記事項証明書を取得する時は共同担保目録を添付してもらう。
 3. 権利書(登記済証や登記識別情報通知書)などで確認する
 4. 売買契約書や重要事項説明書など故人が取得したときの資料で確認する
 5. 市区町村役場の「道路を管理する担当係」に問い合わせる

 詳細は次の通りです。 

 1. 公図と登記記録とを照らし合わせて確認する
 法務局から公図や登記記録の証明書である登記事項証明書を取り寄せて確認をします。
 公図をみて自宅の敷地からどのような土地が形成されているかを確認しましょう。
 細長く道路のような形をしている箇所があれば私道である可能性があります。
 その地番の登記事項証明書を取得して所有者を確認します。

 2. 登記事項証明書を取得する時は共同担保目録を添付してもらう
 自宅の購入資金として住宅ローンを利用していれば抵当権が設定された履歴があります。
 銀行などの金融機関では自宅敷地を購入する際に私道があれば通常私道に対しても抵当権を設定しますから、共同担保目録をつけてもらえば私道の有無を確認することができます。

 3. 権利書(登記済証や登記識別情報通知書)などで確認する
 被相続人が相続や売買などによって取得したときに法務局から交付された権利書を確認します。
 登記制度が変わり以前は登記済証が交付されましたが現在では登記識別情報通知書になっています。
 同時に登記完了証とよばれるものが一緒に保管されていることもありますから、これらに記載されている不動産を確認します。

 4. 売買契約書や重要事項説明書など故人が取得したときの資料で確認する
 被相続人が売買によって不動産を取得したときには、売買契約書や重要事項説明書など取得に係る資料が残っていないか探してみましょう。
 売買対象になっていれば売買契約書に記載がありますし、重要事項説明書には利用できる私道について説明がされていることが通常です。

 5. 市区町村役場の「道路を管理する担当係」に問い合わせる
 市区町村役場には道路を維持管理する専門部署がおかれています。
 呼称は役場によって異なりますから、「道路を管理する担当係」へ問い合わせてみましょう。
 役場が管理している道路がどのようになっているかがわかります。
 役場によっては地番まではわからないことがありますから、そのときには役場から路線網図を交付してもらって法務局で交付される公図と照らし合わせて私道を確認することになります。

まとめ

 今回は私道について私道とはどのようなものか私道についての注意点を解説しました。
 相続手続きの際にもれやすい私道ですが、通行利用や売却に際してとても大事なものです。
 相続などの際には私道について、このような注意点があることに気をつけて手続きをすすめてください。        

■不動産売却コラム

自分でできる?不動産の名義変更登記

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自分でできる?
不動産の名義変更登記

不動産登記は自分でできるのか?
司法書士などの専門家に依頼すれば費用がかかるので、できるなら自分でしたいという要望は高いです。
登記手続きについて概略を解説します。

不動産の名義変更とは?

 不動産の権利に変動があった場合に不動産の名義変更を行ないます。
 不動産の権利に関する事柄を登記記録に記録していますから、この記録に変更があれば登記申請を行い登記記録の書き換えを法務局に依頼します。
 不動産の権利変動とは権利の主体が変わることをいいます。例えば相続や売買、贈与などによって所有者が変わります。
 このような場合に不動産の名義変更登記を行ないます。

 登記の種類

 不動産登記には登記する事項が定められています。
 この登記事項に設定、変更があれば登記をすることになりますから、その数だけ登記の種類があります。

 登記記録は大きく以下の3つの枠で構成されています。

  •  ●表題部
  •  ●甲区
  •  ●乙区
  •  

 ・表題部
  不動産が存在する場所や面積、用途などを登記する枠です。

 ・甲区
  不動産の所有権に関する事項が登記されます。
  所有者の登記、買戻特約の登記、差押・仮差押などの所有権を直接制限する事項が登記されます。

 ・乙区
  不動産に設定された抵当権などの担保権、通行や電線を地上に通すための地役権などの用益権などが登記されます。

 忘れてはいけない前提登記

 不動産の名義の変更登記をする前提として必ずしなければならない登記がありますから、注意しましょう。

 現在の登記事項と登記申請に添付する書類とに整合性がある必要があります。例えば登記記録上の住所がAになっているのに、Bの住所になっている印鑑証明書を提出して登記申請をすればその申請は却下されます。そのため所有権移転に先立ってまたは同時に所有者の住所変更登記を申請することになります。
 また、売買による所有権移転登記をするにあたって、その不動産に差押や買戻特約などの登記がされたままでは差押や買戻特約が優先されますから、買主は不測のトラブルに巻き込まれることになります。そのため所有権移転登記に先立って抹消登記を行なう必要があります。

 自分でするとリスクが高い登記は?

 登記申請は当事者本人が申請することが原則です。しかし、リスクが高い権利変動の場合には専門家にまかせることをおすすめします。
 専門家に依頼すれば費用がかかってしまいますが、トラブルに巻き込まれてしまえば節約した以上の出費になってしまうからです。

 リスクが高い権利変動の代表的なものは売買による所有権移転です。不動産売買では高額な売買代金の受け渡しが行われます。そして、代金の授受と登記申請は同時に行なうことが原則です。高額の売買代金を支払った後で、売買による所有権移転登記に必要な書類に不備があったり、売主の住所変更や抵当権の抹消に必要な書類を預かっていなかったりした場合に売主の協力が得られなければ大変なことになります。
 また、銀行などから融資を受ける場合には専門家である司法書士に依頼することが原則になっていますから、銀行などの金融機関から住宅ローンなどの融資を受ける場合には本人が申請することは事実上不可能です。ただし、日本政策金融公庫からの借入の場合には、原則として設定後の登記事項証明書を提出してからの融資になりますから本人が抵当権の設定登記を行なうことは可能です。

 

登記手続きの手順

 登記申請をするための手順は次のようになります。
 1. 事前準備
 2. 事前相談
 3. 申請
 4. 補正
 5. 登記済書類の受領

 1.事前準備
  登記申請をするために調査をし、必要な書類を準備します。
  登記申請をするためにまず不動産の登記記録を取り寄せます。
  目的とする登記申請のために、前提としてしなければならない登記はないか注意しましょう。
  登記申請に必要な住民票や印鑑証明書などの書類を取得します。
  登記には登録免許税を納付する必要があります。
  必要な額の登録免許税を、収入印紙を購入して準備します。
  収入印紙を申請書の余白に貼り付けますが、消印をしてはいけません。
  準備が整えば登記申請書を作成します。

  不動産登記申請書の様式についての説明が法務局のホームページにありますから、参考にしてください。
  不動産登記の申請書様式について:法務局

 2.事前相談
  現在法務局では登記相談を受け付けていますから、準備ができたら申請する前に登記相談を受けることをおすすめします。
  申請した後に、不備があれば補正を命じられ、補正を直すことができなければ申請は却下されてしまいます。
  補正のために無駄な時間を使うよりも事前相談をして不備がない登記申請書を作成しましょう。
  法務局の相談窓口は多忙ですから、事前に電話などで予約をしてから相談に行きます。
  コロナ禍の影響があり、電話相談のみ受け付けるなど対応が変わっている場合もあります。
  予め確認をしておきましょう。
  以前は法務局の対応はワースト1だとも言われたことがありましたが、現在ではとてもソフトな対応をしていますから、安心して相談できます。

 3.申請
  いよいよ登記の申請書を法務局に提出します。

  登記を申請するには
  ● 直接窓口に持参する
  ● 郵送
  ● オンライン
  の3つの方法があります。
  郵送する場合には必ず書留郵便や赤いレターパックを利用して、大事な書類を追跡できるようにしなければなりません。
  また、オンライン申請を行なうには電子化された本人確認資料が必要になります。

 4.補正
  提出された登記申請書を法務局がチェックして不備があれば補正をします。
  法務局に申請書を提出してその場でチェックしてもらえることはありません。
  法務局の繁忙具合によりますが、通常は2日~3日はかかるものと思ってください。
  登記申請書には連絡先の電話番号を記入するようになっていますから、不備があれば法務局から電話があります。

 5.登記済書類の受領
  登記申請が無事に終われば登記済に係る書類が交付されます。
  申請した登記が完了した証明となる登記完了証が交付され、権利の取得の登記申請であれば登記識別情報通知書が交付されます。

具体的な名義変更登記について解説

 登記申請にあたって必要な書類を解説します。

 共通する必要書類
 不動産の名義変更に関する登記申請をする際に共通して必ず準備するものは次のようになります。
 ● 登記申請書
 ● 登録免許税
 ● 不動産の評価証明書
 ● 名義にする人の住民票

 ・登録免許税
  登記申請の種類によって税率が異なります。

名義変更の理由 税率
相続 0.4%(非課税とされる場合があります。)
贈与 2.0%
売買 土地1.5%、建物2.0%(軽減される場合があります。)

 ・不動産の評価証明書
  登録免許税を計算するための資料です。
  原本の提出を要求される法務局と写しでよい法務局とがありますから、事前に確認してください。
  相続登記の必要書類
  名義人の相続人であることを証明する資料が必要です。

 故人の法定相続人の全員がわかる資料が必要です。
  1. 故人の出生から死亡まで連続した戸籍謄本(除籍、改製原戸籍を含みます)
  2. 故人の登記記録上の住所と最終の住所が記載された住民票(本籍地の記載のあるもの)又は戸籍の附票
  3. 相続人全員の現在の戸籍
  4. 相続人全員の住民票
 また法定相続分以外の割合で相続する場合には
  5. 遺産分割協議書(実印を押捺)
  6. 相続人全員の印鑑証明
  7. 遺言書

 遺言書があれば死亡記事のある戸籍と2の住所証明書、名義にされる方の戸籍ならびに住所証明書で足ります(遺言書の内容により若干異なります)。
 遺産分割協議を行なうためには、相続人に未成年者がいる場合には後見人あるいは特別代理人の選任を家庭裁判所に対して行う必要があります。
 現在のところ、相続登記は義務ではありませんが、令和6年4月1日から義務化されることが決まっています。

 贈与登記の必要書類
 相手方がいる共同申請による登記申請の典型として贈与登記を例にあげます。
 売買や離婚に伴う財産分与など登記原因証明情報以外は共通です。
  1. 登記原因証明情報
  2. 所有者の権利書(登記済証あるいは登記識別情報通知書)
  3. 所有者の印鑑証明書
  4. 受贈者の住民票

 具体的に解説します。
  1. 登記原因証明情報
   登記申請をする権利変動の原因となった事実があったことの証明書です。
   贈与の場合には、贈与証書、贈与契約書などがこれにあたります。
  2. 所有者の権利書(登記済証あるいは登記識別情報通知書) 
   所有者が所有権を取得したときに法務局から交付された登記済証あるいは登記識別情報通知書を添付します。
  3. 所有者の印鑑証明書(有効期間は3ヶ月)
   所有者が知らない間に登記がされてしまうことを防ぐために添付書類となっています。
   申請書または委任状(受贈者などの代理人が申請書に押印する場合)に実印を押捺します。
   登記記録上の住所と異なっていないか注意しましょう。
   変更があれば登記記録上の所有者の住所を変更する登記申請が必要です。
  4. 受贈者の住民票
   贈与を受ける人の住民票を添付します。
   贈与を受ける人は認印を申請書に押印すれば足りますから印鑑証明書は不要です。

 登記申請書に申請人が押印をします。直接押印を申請書にしない人は委任状を提出します。

 離婚に伴う財産分与が調停又は審判によってなされた場合は、新しい所有者が単独で登記申請できる例外があります。

司法書士に依頼する場合の費用は?

 ケースにより異なりますので、事前に相談されることをおすすめします。
 登記申請を行なう案件の複雑さ、筆数の多さなどにより変わってきます。1件あたり5万円~10万円程度になることが多いです。

まとめ

 不動産登記申請は本人が行なうことが原則です。
 ただし、売買などのリスクを伴う登記申請や複雑な相続登記などは専門家にまかせたほうが安心な場合もあります。
 また、登記申請の準備のための時間や事前相談、登記申請、補正(があれば)、登記済書類の受け取りと何回か法務局に出頭することになります。
 法務局の営業時間は平日に限られ通常の勤務時間と重なる方も多いですから、出費と手間と仕事の都合などとを勘案して判断してください。  

■不動産売却コラム

共有名義にするメリットとデメリットとは?

を更新しました。

共有名義にするメリットとデメリットとは?

親の財産を相続したけど相続人が複数いる場合や、自宅など不動産を購入する場合など一人の名義にするのか複数の名義にするのか、悩む方もいらっしゃるのではないでしょうか?
複数で物を所有することを『共有』するといいます。

不動産の共有とは?

  不動産の共有とは、不動産を二人以上で所有することを言います。
 相続が発生した場合に、配偶者(夫または妻)と子供二人がいる場合には法定相続人は配偶者と子供二人の合計3人になります。法定相続人は3人ですが、『遺産分割協議』をすることで一人にすることも二人や三人で法定相続分に関わらず共有することもできます。
 不動産を購入するときには売買ですから、売買代金を売主に支払う必要があります。この売買代金を準備するのに誰の資金を利用したかによって、名義が決まります。一人が売買代金全額を用意すれば一人の単独名義で登記をし、二人以上が用意した場合には二人以上の共有名義で登記をします。

相続時の共有

 実家を相続した場合など、思い出のある実家だからとりあえず法定相続分通りで登記をしておこうとする場合があります。先の例でいえば法定相続人3人の共有名義にします。しかし、これは後々問題をおこすおそれがあります。相続した不動産は、いずれはまた再度相続が発生します。子供にそれぞれ二人ずつ子供がいたとして、孫の代では子供は4人になり、ひ孫の代では8人になります。子供だけでも相当人数が増えていきますが、更に配偶者がいて、相続の態様によっては配偶者の身内が相続人になる場合もあります。このようになってくると段々と話し合いが難しくなってくるのが現実です。数人いる相続人のうち誰かの名義にまとめたいとか、自宅を売却したい場合には相続人全員の同意が必要になってきますが、全員の協力を得られないことがあるのです。
 相続人の共有を防ぐためには、相続人全員で協議をし、遺産分割をして単独にすることができます。また、相続した不動産を売却することが決まっている場合には手続きの便宜上相続人は一人で登記をして、売買代金を分割するという遺産分割の方法も可能です。
 相続の際に初めてする一回目の遺産分割には贈与税がかかりませんが、2回目以降遺産の再分割をすると贈与税がかかりますので、注意してください。

不動産購入時の共有

 例えば自宅を購入するのに、3,000万円の売買代金を夫婦二人で出し合った場合を考えてみましょう。
 夫が2,000万円、妻が1,000万円を用意した場合は夫が3分の2、妻が3分の1の持分(共有する所有権の割合)を取得します。1,500万円ずつを二人が用意すれば二人が2分の1ずつの持分を取得します。これを2,000万円用意した夫の持分を3分の1、妻が1,000万円用意したのに持分3分の2の割合で取得したと登記した場合には、差額分の1,000万円について夫から妻に贈与があったものとみなされて贈与税が課せられてしまいます。

 売買代金を、住宅ローンを利用して借り入れた場合も同様です。借りた人(債務者)が売買代金を用意したことになりますので、その額を持分の割合に反映させるようにします。

共有するメリット

 自宅を購入する時に借り入れをした場合には住宅ローン控除を利用できますが、夫婦二人が債務者になって借り入れをすれば夫婦二人ともが住宅ローン控除をうけることができます。住宅ローン控除は借入残高が計算の基礎になるので、収入が多い人が多く借り入れをした方が、メリットが大きくなります。
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1210.htm

 不動産を購入する時だけでなく、売却する時にも共有するメリットがあります。居住用財産の3,000万円の譲渡所得税の特例は一人ずつ利用できますので、夫婦二人であれば6,000万円まで特別控除の適用があります。
 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

 若く元気なときに自宅を購入しても年を経ればいずれは相続が発生します。夫婦共有にしていれば予め自分の持分だけは取得しているので、亡くなった配偶者の持分だけを相続することになります。そのため相続税の節税になります。このメリットは夫婦二人の場合だけでなく、親子間の共有でも同様にメリットになります。
 賃貸アパートなどの収益物件を相続した時に共有名義にすることで、その持分に応じて収益を分配することができます。
 負担を共有することができるのも、メリットといえます。草刈りの当番を輪番にしたり、固定資産税を持分の割合で負担したり、補修費用を分割することも可能です。ただし、このメリットは全員が協力してはじめてメリットとしていきるので、反対したり協力しない人がいればデメリットになります。

共有するデメリット

 共有の場合には不動産を自分だけの判断で売却したり、賃貸にだしたりする処分ができません。不動産を売却するには共有者全員が協力する必要があります。そのため共有者のうちの一人でも売却に反対する人がいれば不動産を売却できなくなります。ただし、自分が持っている『持分だけ』を売却することは可能です。そういった専門の業者もいます。購入した業者は残りの共有者に対して『共有物の分割』を迫るか、持分の売却を要求していくことになりますが、いずれにしても紛争が予想されますので慎重に考慮してください。
 不動産にはメンテナンスが必要です。共有の場合には補修費用は共有持ち分の割合で負担するのが基本ですが、中には相応の費用を払ってくれない人もいます。そうすると他の人は持分以上の負担を強いられることになってしまいます。
 固定資産税の負担についても同じ問題がおこるおそれがあります。

 不動産売却、購入をする際の参考にしてください。

■不動産売却コラム

「路線価」ってなに?

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「路線価」ってなに?

  • 『路線価』は土地の価格の指標の一つで、相続税や贈与税を計算する際に基となる価格です。

 土地の価格の4つの指標

 土地の価格の指標として主に言われるものは次の4つです。これらの価格を参考の一つにして、売買代金を査定します。

 路線価(相続税評価額)
 路線価とは、主要道路に1㎡あたりの単価を割り振ることで、土地の価格を算出するための指標にする価額です。路線価は相続税や贈与税を計算するための基準にするために国税庁が算出し、毎年7月ごろに公表しています。7月ごろに公表されますが、その年(1月1日~12月31)にあった贈与はこの基準によることになります。そのため値上がりが予想されるときには、公表される前の4月などに贈与したときに思わぬ贈与税が課されることもありますので、できるだけ路線価が公表された後に贈与をするのが無難です。国土交通省が公表する公示価格の8割をめどに国税庁が算出していると言われていますが、それぞれの地域の特性などを加味して独自に修正を加えています。全国すべての道路に価格を設定しているわけではなく、価格を設定していない道路もあります。その場合に相続税や贈与税を計算するには固定資産税評価額に一定の倍率をかけて算出する倍率方式を用いて計算します。

 公示価格
 国土交通省が担当し、毎年3月下旬に公表されます。この公示地価を基準にして路線価や固定資産税評価額が決められています。
 調査の基準日は毎年1月1日とされています。
 https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=0&TYP=0

 基準地価
 基準地価は、国土利用計画法に基づき一般の土地取引の指標とするために各都道府県が算出し9月下旬に公表しています。
 こちらの評価基準日は毎年7月1日とされています。
 https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_fr4_000044.html

 固定資産税評価額
 固定資産税評価額は文字通り固定資産税を計算する基準として各市区町村が算出してします。こちらの固定資産税評価額は公示地価の7割がおおよその目安になりますが、各市区町村がさらに独自の基準を用いて算出しています。固定資産税評価額は固定資産税の計算だけではなく、各都道府県が課税する不動産取得税の計算の基礎にもなります。また、不動産登記を申請する時の登録免許税もこの固定資産税評価額が基準になります。
 毎年課税台帳記載の所有者に宛てて4月以降順次固定資産税の納付書と一緒に評価額が知らされます。3月になれば所有者に内覧を許可する市区町村もありますので、あらかじめ新年度の固定資産税評価額を確認することができます。

 路線価の確認方法

 路線価は下記国税庁のホームページで確認をすることができます。
 https://www.rosenka.nta.go.jp/

 トップページから過去7年分の路線価を確認できます。相続税の申告は10ヶ月以内とされていますので、申告は年を越すことがあります。その際には被相続人が亡くなった年の路線価を参考にして相続税を計算してください。
 上記の国税庁のホームページ以外にも『一般財団法人 資産評価システム研究センター』が設置している『全国地価マップ』でも路線価を確認出来ます。こちらのホームページでは路線価以外の指標値も案内されているので便利です。

 路線価を使って土地の価格を計算してみる
 路線価図を見ると地図があり、道路に数字と記号が記入されています。数字は1㎡当りの価額を1,000円単位で表示しており、数字に続くA~Gの記号は借地権割合を示しています。

 下記は国税庁の路線価図の見方の説明にリンクしています。具体的に路線価図をみて見方に迷った時に参考にしてください。
 https://www.rosenka.nta.go.jp/docs/ref_prcf.htm

 最も単純な計算は、記載されている数字×1,000×土地の面積で土地の路線価による価額がわかります。

 土地は正方形ではなく、奥行きがあったり間口が狭かったりと、いろいろと条件が異なりますので、その条件を当てはめるために補正率で再計算を行ないます。
 下記のリンク先に国税庁が示す土地の奥行や隣接する道路、不整形地のための補正率など9種類の補正率が掲載されていますので、参考にしてください。
 https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/07.htm

■不動産売却コラム

外国在住者の不動産売却方法は?

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