
土地の売却時には、所有期間5年以内or5年超で譲渡所得税の納税額が大きく変動しますよね。
ただし相続した土地を売却する場合、「被相続人(故人)の取得日」が所有期間の起算日となるため、ご自身の所有期間が5年以内でも、軽減税率によって納税負担を大きく抑えられる可能性があります。
また、譲渡所得税には納税負担を軽減する多数の特例があり、土地の相続から3年以内に売却すると、さらに納税額をおさえられるケースもあります。
でも、譲渡所得税の特例は内容が複雑なため、「もっと簡単に適用要件や計算方法を知りたい」とお悩みの方がいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は、宮城県・福島県・茨城県で多数の不動産売却をサポートしてきた不動産会社『イエステーション』が、相続した土地の売却にかかる税金の計算・手続き方法などを、わかりやすく解説します。
相続時の状況・ご自身の状況に応じて納税負担を軽減し、確定申告・納税までの流れをクリアする方法がわかるので、ぜひ最後までごらんください。
宮城県・福島県・茨城県で不動産売却を検討中の方は、イエステーションへお問い合わせください。
税金などの手続き関する不安・疑問を解消しながら、スムーズな不動産売却をサポートいたします。
目次
Toggle相続した土地の売却にかかる税金(譲渡所得税)|基本の計算方法

相続した土地の売却にかかる譲渡所得税の基本の計算方法は、以下のとおりです。
| 譲渡所得税額:基本の計算方法 |
|---|
| 売却額−(取得費+譲渡費)=譲渡所得額 (譲渡所得額−特例の控除額)×税率=譲渡所得税額 |
〈参考〉国税庁ホームページ『土地や建物を売ったとき』>譲渡所得金額の計算・税額の計算
税率は以下のとおりで、所有期間が長いほど納税負担を軽減できます。
| 所有期間 | 5年以内・5年超の譲渡所得税の税率 (土地・建物) |
|---|---|
| 5年以下 | ・所得税:30% ・住民税:9% |
| 5年超 | ・所得税:15% ・住民税:5% |
〈参考〉国税庁ホームページ『土地や建物を売ったとき』>譲渡所得金額の計算・税額の計算
また、相続した土地・建物をマイホームとして使用していた場合限定ではありますが、「所有期間10年超」「譲渡所得額が6000万円以下」の場合、さらに税率が軽減されます。
| 売却価格 | 10年超の譲渡所得税の税率 (マイホーム限定) |
|---|---|
| 6000万円以下 | ・所得税:10% ・住民税:4% |
〈参考〉国税庁ホームページ『土地や建物を売ったとき』>譲渡所得金額の計算・税額の計算
譲渡所得税額の計算方法・税率は上記のとおりで、冒頭でお伝えしたとおり、譲渡所得税には多数の特例があります。
次に、「相続した土地を売却する場合にもっとも優遇が大きい特例」を紹介するので、ぜひご確認ください。
相続した土地を3年以内に売却|「3000万円の特別控除」or「取得費加算の特例」で譲渡所得税を軽減

相続した土地を3年以内に売却する場合、以下2種類の特例を受けられる可能性があります。
- 3000万円の特別控除(正式名称:被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)
- 取得費加算の特例(正式名称:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例)
2種類の特例は併用できず、ご自身にとって有利な方を選ぶ必要があるため、適用要件を一緒に確認しましょう。
「3000万円の特別控除」の適用要件
3000万円の特別控除は、以下の状況に該当する場合に「譲渡所得額から最高3000万円を控除できる(指し引ける)特例」です。
- 被相続人が居住していた家屋・土地等※を相続によって取得
- 相続した家屋・土地等を2016年4月1日〜2027年12月31日の間に売却
- 相続人が2人以内(相続人が3人以上の場合、特別控除額が2000万円となります)
※「土地等」には、土地の上に存在する権利(借地権等)も含まれます。
3000万円の特別控除を受ける場合、譲渡所得額が3000万円以下であれば、譲渡所得税の納税は不要となりますね。
3000万円の特別控除を受けるためには、上記の状況に加えて、以下の要件にも該当する必要があります。
| 項目 | 要件の内容 |
|---|---|
| 売却の要件 | ・相続開始日※から3年目の12月31日までに売却 ・1億円以下で売却 |
| 家屋に関する要件 | ・相続開始の直前に、被相続人が1人暮らしをしていた ・1981年5月31日以前に建築 ・区分所有建物登記がされていない ・家屋のみ売却、家屋・土地を売却どちらでもOK ・相続から売却までの期間に、賃貸転用などをせず空き家だった ・一定の耐震基準を満たしているor売却から翌年2月15日までの期間に耐震基準を満たす |
| 土地に関する要件 | ・土地のみ売却する場合は、家屋を解体後に売却する ・家屋を解体後、相続から売却までの期間に賃貸転用などをせず空き地だった ・家屋を解体後、建物の新築・構築物(看板など)設置をしていない |
| 売主の要件 | ・家屋・土地の相続人であること ・他の譲渡所得の特例を受けていない |
※「相続の開始日」とは、被相続人が亡くなった日or被相続人が亡くなったことを知った日のことです。
〈参考〉国税庁ホームページ『No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』
上記の中で、「相続開始の直前に被相続人が1人暮らしをしていた」という要件に関しては、被相続人の状況が以下に該当していて有料老人ホームなどで暮らしていた場合にも該当します。
- 要介護認定or要支援認定or介護保険免除や猶予の特例措置を受けていた
- 有料老人ホームに入居してから相続開始日までの期間、家屋に被相続人の荷物が保管されていた
- 有料老人ホームなどが、主な居住場所だった
- 有料老人ホームに入居してから相続開始日までの期間、家屋が賃貸転用などをせずに空き家だった
〈参考〉国税庁ホームページ『No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋』
「取得費加算の特例」の適用要件

取得費加算の特例は、以下の要件に該当する場合に「相続税額の一部を、譲渡所得税を計算する際の取得費に加算できる特例」です。
| 項目 | 要件の内容 |
|---|---|
| 売却の要件 | ・相続税の申告期限※の翌日から3年を経過する日までに建物・土地等の財産を売却 |
| 売主の要件 | ・建物・土地等の財産の相続人であること ・建物・土地等の財産の相続税を納税済 |
※「相続税の申告期限」は、「相続開始日の翌日から10ヶ月以内」です。
〈参考〉国税庁ホームページ『No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例』
「取得費に加算できる相続税額」の計算方法は以下のとおりで、加算額が3000万円超の場合は、3000万円の特別控除よりも納税負担を軽減できます。
| 取得費に加算できる相続税額の計算方法 |
|---|
| 相続税額×(建物・土地等の相続税評価額※/建物・土地等の相続税課税価格等※) =取得費に加算できる相続税額(上限:譲渡所得額) |
※「相続税評価額」とは路線価など客観的な資料に基づいて定める相続財産の額、「相続税課税価格等」とは相続税額を計算する元になる額です。
「相続税課税価格等」の計算は非常に複雑なため当記事では詳細を紹介しませんが、取得費加算の特例を受ける場合には、税理士などの専門家にアドバイスを受けることをおすすめします。
〈参考〉国税庁ホームページ『No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例』
「3000万円の特別控除or取得費加算の特例」を選択する際の注意点
3000万円の特別控除・取得費加算の特例は、適用期間が違う点にご注意ください。
3000万円の特別控除・取得費加算の特例を比較して有利な方を選べる期間には限りがあることを、念頭に置いておく必要があります。
| 特例 | 適用期間 |
|---|---|
| 3000万円の特別控除 | 相続開始日〜3年目の12月31日 |
| 取得費加算の特例 | 相続税の申告期限の翌日〜3年を経過する日 |
「有利な特例を受けられるうちに相続した空き家・土地を売却したい」とご希望の方は、こちらの記事でスムーズな売却方法などを確認できます。
〈関連ページ〉空き家売却の方法と注意点|費用を抑える方法、相続税・譲渡所得税の優遇制度なども簡単解説
宮城県・福島県・茨城県で「相続した土地をなるべく早く売却したい」とご希望の方は、イエステーションへお問い合わせください。
イエステーションは仲介・買取両方に対応している不動産会社で、地域専属の担当者がご希望を実現する売却プランを提案いたします。
「3000万円の特別控除」「取得費加算の特例」以外の特例一覧(譲渡所得税)

譲渡所得税の納税負担を軽減する効果が高い「3000万円の特別控除」「取得費加算の特例」をはじめに紹介しましたが、譲渡所得税には、他にも特例が多数あります。
| 特例の名称 | 概要 |
|---|---|
| 平成21年及び平成22年に取得した国内にある土地を譲渡した場合の1,000万円の特別控除の特例 | 2009年1月1日〜2010年12月31日の期間に土地等を取得し、2016年以降に売却 |
| 低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例 | 2020年7月1日〜2025年12月31日の期間に極端に使用程度が低い土地(所有期間5年超)を800万円or500万円以下で売却 |
| 公共事業などのために土地や建物を売った場合の5,000万円の特別控除の特例 など | 各事業等の実施者からの申し出によって土地等を売却 |
| 特定土地区画整理事業などのために土地を売った場合の2,000万円の特別控除の特例 | |
| 特定住宅地造成事業などのために土地を売った場合の1,500万円の特別控除の特例 | |
| 農地保有の合理化などのために土地を売った場合の800万円の特別控除の特例 |
〈参考〉国税庁ホームページ『No.3223 譲渡所得の特別控除の種類』
・国税庁ホームページ『No.3225 平成21年及び平成22年に取得した土地等を譲渡したときの1,000万円の特別控除』
・国税庁ホームページ『No.3226 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除』
・国税庁ホームページ『No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例』
「低未利用土地等を売った場合の100万円の特別控除の特例」以下の特例は該当するケースが少ないと思いますが、適用の可能性がある場合には、お住まいの地域を管轄する税務署に問い合わせをして、詳細を確認してください。
相続した土地の売却時に発生する譲渡所得税以外の税金・納税義務者も確認

ここまで相続した土地の売却にかかる譲渡所得税を解説してきましたが、相続した土地を売却する際には、ほかにも複数の税金が発生します。
土地を複数人で相続する場合の納税義務者(税金を負担する方)を判断するのが難しいため、あわせて紹介します。
| 税金 | 納税義務者 |
|---|---|
| 固定資産税 (毎年1月1日に納税義務が発生) | 一般的に、代表者が総額を納税して、後から持ち分に応じて精算 |
| 登録免許税 (相続・売買の登記時に発生) | |
| 印紙税 (売買契約時に発生) | |
| 復興所得税 (譲渡所得税に加算される) | 各自が自身の持ち分を売却する際に納税 |
固定資産税・登録免許税・印紙税は「連帯納税義務」がある税金で、相続した土地を複数人が所有する場合、各人が全額に対する納税義務を負います。
土地の相続から売却・確定申告・納税までの流れ

相続した土地を売却して納税を終えるまでには、複数の手続きが発生します。
また、「相続は税理士等」「登記は司法書士」「売却は不動産会社」など各分野の専門家が違うため、全体の流れを管理するのは相続人ご自身となるのが一般的です。
土地の相続から売却・確定申告・納税までの流れを、把握しておきましょう。
| ステップ | 流れ |
|---|---|
| 相続開始日 〜相続税の申告 | 相続開始日 ↓ 遺産分割協議 ↓ 相続登記 登録免許税の支払い ↓ 相続税の申告 相続開始日の翌日から10ヶ月以内が期限 |
| 相続した土地の売却 | 不動産会社を選定し仲介を依頼 ↓ 土地(・建物)の売却活動 ↓ 購入者が決定し売買契約 印紙税の支払い ↓ 売却代金の受け取り・引き渡し ・不動産会社へ仲介手数料を支払う ・3000万円の特別控除or取得費加算の特例を選択できる期限は、相続開始日から3年目の12月31日まで ・取得費加算の特例を受ける期限は、相続税の申告期限の翌日から3年を経過する日まで |
| 確定申告・納税 | 引き渡しの翌年2月16日〜3月15日の期間に確定申告書を提出 ↓ 譲渡所得税を納税 引き渡しの翌年3月15日が納税期限 ↓ 同年6月頃に住民税の納付書が届く ↓ 住民税を一括払いor分割払い(4回)で納税 |
相続した土地は売却するべきか、売却に適したタイミングはいつなのか

相続した土地の売却にかかる税金の全体像を把握してきました。
ここで、「相続した土地は本当に売却するべき?」とお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
相続した土地を売却するメリット・デメリットなどを紹介するので、売却判断の参考にしていただけると幸いです。
相続した土地は売却するべきか|売却のメリット・デメリット

相続した土地を売却する主なメリットは、以下のとおりです。
- 早期に売却をすることで、相続税の納税資金を獲得できる
- 相続した土地を現金化することで、遺産分割をしやすくなる
- 長期間所有後に売却するよりも、3000万円の特別控除・取得費加算の特例を受けるほうが、譲渡所得税の納税負担を軽減できるケースがある
- 固定資産税の納税・管理費用の支払いなど、所有によって発生する費用負担を避けられる
- 家屋の劣化対策・外構の雑草駆除など管理の手間が必要ない
- 災害時に状態確認をする必要がない
- 今後人口が減少していくエリアの土地を売却する場合、価格下落の影響を抑えられる
- 次の世代が土地を利用しない場合、固定資産税の負担・管理の手間などを引き継がずに済む
相続した土地を売却する主なデメリットは、以下のとおりです。
- 仲介手数料・測量費など、一時的な支出負担がある
- 売却益が高額な場合は、翌年の住民税・介護保険料などの負担が重い
- 一般的に相続税評価額は市場価格よりも低いため、売却による現金化でご自身の下の世代の相続税負担が重くなるケースがある
- 一度手放した土地は、買い戻したい場合に希望が実現しないケースが多い
- 活用価値のある土地の場合、長期にわたって利益を獲得し続けるチャンスを逃すことになる
- 土地の売却によって、地域・コミュニティとのつながりも手放したことに後悔するケースがある
土地に明確な利用目的・価値を見いだせる場合は、売却を後悔する可能性があります。
不動産会社に土地の需要などを確認しながらの売却判断をおすすめします。
相続した土地の売却に適したタイミングはいつなのか
相続した土地の売却に適したタイミングは、ご自身の状況に応じて判断する必要があります。
| 状況例 | 判断例 |
|---|---|
| なるべく納税負担を抑えて、早く売却したい | 相続開始日から3年目の12月31日までに売却をして、3000万円の特別控除を受ける |
| 小規模宅地等の特例※を受けて相続税を抑えたうえで、譲渡所得税の納税負担も軽減したい | ・相続税の申告期限の翌日〜3年を経過する日までに売却をして、取得費加算の特例を受ける ・相続した土地・家屋に居住して、被相続人の取得から10年を経過後に売却する |
| 愛着のある土地なので、なかなか売却できず時間が経ってしまった | ご自身が居住しない場合は被相続人の取得から5年超、ご自身が居住する場合は被相続人の取得から10年超となるのを待って売却 |
※「小規模宅地等の特例」とは、被相続人が居住・事業などに使用していた土地を配偶者・同居の親族などが相続した場合に、一定の面積(200〜400㎡)までの部分について、 相続税評価額の一定割合(50〜80%)を減額できる特例です。
相続した土地の売却に適したタイミングを判断するために、不動産会社に相談をしたうえで計画的に売却活動を進めていくことも可能です。
こちらの記事で、不動産売却の方法・今後の不動産価格の推移予測などを確認できます。
〈関連ページ〉仙台の不動産売却|売買に強い不動産会社や売却方法の選択、今後の売却価格の推移、売却時の工夫を紹介
宮城県・福島県・茨城県で相続した土地の売却を検討中の方は、イエステーションへお問い合わせください。
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相続した土地を放置するとどうなるのか
建物がある土地を相続して、「こまめに管理できないが、売却の決断も難しい」とお悩みの方もいらっしゃると思います。
空き家になった建物がある土地を放置すると、以下のリスクがあります。
- 庭木が隣地に侵入してトラブルが発生
- 害虫・害獣の侵入でトラブルが発生
- 建物の劣化が進行 など
また建物・土地の状況によっては、自治体から「特定空き家」「管理不全空き家」という認定を受けるリスクもあります。
【特定空き家とは】
- 倒壊等のおそれがある空き屋
- 地域の衛生を害する空き家
- 地域の景観を損なう空き家 など
【管理不全空き家とは】
特定空き家になる可能性がある空き家のことです。
【特定空き家・管理不全空き家の認定を受けるリスク】
- 固定資産税の「住宅用地の特例(住宅がある土地の税額を1/6に軽減する特例)」が適用されなくなり、固定資産税が本来の額になる
- 自治体の助言・指導に従わない場合、現状改善・解体などの勧告・命令を受けることがある
- 勧告などを受けて従わない場合に、50万円以下の過料を課されることがある
〈参考〉仙台市ホームページ>トップページの検索窓に「「空家等」とはどのようなものですか?」と入力して検索
建物がある土地の売却を迷っている期間は、以下のような管理を定期的に実施しましょう。
- 建物・物置などを施錠して人の侵入を防ぐ
- 除草・庭木の剪定
- 建物の窓を開けて換気
- 雨漏りなど建物の倒壊につながる不具合を修繕 など
相続した土地の売却にかかる税金Q&A

最後に、相続した土地の売却にかかる税金に関する疑問・お悩みをお持ちの方から、イエステーションがよくいただく質問・回答を紹介します。
Q.譲渡所得税の計算に使用する「相続した土地の価格」を調べる方法がわからない
A.相続した土地の価格は贈与所得税の「取得費」に含める重要な項目ですが、売買契約書などの取得当時の資料が無い場合には、「売却額の5%」を取得費総額とみなして譲渡所得税を計算できます。
〈参考〉国税庁ホームページ『No.3258 取得費が分からないとき』
ただし取得費が売却額の5%のみだと、譲渡所得税が高額になる場合もあると思います。
以下のような資料を探して、なるべく取得費を集めることをおすすめします。
- 土地取得時の通帳
- 不動産会社が発行した販売情報
- 抵当権の設定額等から取得当時の価格を推論して、税務署へ取得費だと主張する方法もある
〈参考〉国税不服審判所ホームページ『(平12.11.16裁決、裁決事例集No.60 208頁)』
Q.相続した土地を売却予定なら「単独で相続or複数人で相続」どちらがいい?
A.相続した土地を複数人で相続すると、今後、土地に関わる手続き・決済などに相続人全員の出席や署名が必要になります。
そのため、「相続人全員の関係性」「土地の譲渡所得額」など、多面的な視点で「単独で相続or複数人で相続」を検討する必要があります。
【例:土地の譲渡所得額から検討】
3000万円の特別控除or取得費加算の特例の適用要件に該当する場合、複数人で相続をすると各人が特例を受けられるため、全体の納税負担を軽減する効果があります。
〈参考〉国税庁ホームページ『No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』>特例の適用を受けるための要件>(4)売却代金が1億円以下であること。
Q.特例以外に納税額を抑える方法はある?

A.譲渡所得税を含む所得税総額を抑えるために、以下の控除を活用する方法もあります。
相続した土地を売却した年のみ所得額が高額になる場合は、活用できる控除を再確認してください。
| 控除 | 例 |
|---|---|
| 社会保険料控除 | お子さまの年金を前納して控除額を増やす |
| 小規模企業共済等掛金控除・iDeCo | 掛け金全額を控除できるため利用を開始する |
| 生命保険料控除・地震保険料控除 | 控除額上限額以上を支払っている場合、相続をした方が余った生命保険料控除・地震保険控除を使う |
| 扶養控除 | 仕送りをしている親御さんを扶養家族に含める |
| 雑損控除 | 自然災害で被災した後の修繕費・シロアリ駆除費など該当する雑損がないか見直す |
| 医療費控除 | 通院・ドラッグストアでの薬品購入費などを見直す |
| 寄付金控除 | ふるさと納税を増やす |
Q.相続した土地を売却する際の注意点を知りたい
A.相続した土地を売却する際の主な注意点は、以下のとおりです。
- 土地の売却契約をできるのは、相続登記完了後
- 隣地との境界が曖昧な場合は、測量で境界確定後に売却するのが一般的。境界が確定するまで数カ月かかるケースがある
- 土地を複数人で共有するかたちで相続した場合、全員の承認が無いと売却できない
- 住民税・介護保険料(国民健康保険の方・年金を受給している方)の納付は売却の翌年なので、資金確保が必要
- 相続税の申告期限前に土地を売却すると、「小規模宅地等の特例」を受けられない
- 土地を分割して複数人が相続し、3000万円の特別控除を受ける場合、「相続のもとになった1筆の土地に対して売却額が1億円以下」という要件があるため、同じタイミングでの売却を検討
〈参考〉
・小規模宅地等の特例:国税庁ホームページ『No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)』
・土地を分割して複数人が相続:国税庁ホームページ『No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例』
Q.譲渡所得税額が0円の場合、確定申告は不要?
A.譲渡所得税が0円の場合でも、以下の理由から確定申告は必要です。
- 譲渡所得税が0円になったことを、特例適用の証明書類提出などで証明する必要がある
- 相続した土地に建つ家屋に居住していて、売却後に住宅ローンを利用して新居を購入する場合、「売却額−(取得費+譲渡費)」が赤字になると、赤字を今後3年間の所得税計算時に繰越可能(今後3年間の所得税額を抑えられる可能性がある)
〈参考〉国税庁ホームページ『No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)』
2026年の住宅ローン減税の内容を、こちらの記事で確認できます。
〈関連ページ〉令和8年度も住宅ローン減税延長の見込み|適用条件、減税額シミュレーション、確定申告の流れなど簡単解説
まとめ
相続した土地の売却にかかる譲渡所得税は、特例を受けることで納税負担を大きく軽減できます。
税金の適用要件などは内容が複雑ですが、この記事で紹介した情報を参考にして、ご自身が活用できる特例を見つけていただけると幸いです。
また、相続した土地の売却から確定申告・納税までの流れの中でも、注意するべき点が多数あります。
納税などの制度にも詳しい不動産会社を選び、売却のサポートを依頼してください。
宮城県・福島県・茨城県で相続した土地の売却を検討中の方は、イエステーションへお問い合わせください。
土地売却に関連する手続きのサポートをしながら、スムーズな土地売却を実現いたします。



