マンションの大規模修繕と売買について

マンションの大規模修繕とは

建物であれば一戸建ての住宅でもマンションでも同じように年数の経過とともに劣化し、傷みがあらわれます。一戸建てであれば所有者の都合や考え方で自由に修繕の周期や内容を決めることができますが、たくさんの人が住むマンションの場合は多くの人の同意が必要です。そのため、外壁の補修やシーリング工事など足場を組んでするような大掛かりな修繕をまとめてすることになります。

大規模修繕の周期

大規模修繕をする時期や規模に決まりはないですが、一般的には12年程度の周期で行われています。

国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査について」

https://www.mlit.go.jp/common/001234290.pdf

 

  1. 長期修繕計画を確認する

マンションを維持管理するために所有者でマンションの管理組合を組織しています。通常はマンションの管理組合が長期修繕計画をたて、その計画にそって修繕積立金を設定し、集金管理しています。この長期修繕計画をみれば何年周期でいくらくらいの予算建てで大規模修繕を計画しているかがわかります。

 

  1. 前回の大規模修繕の時期と周期から推測

中古のマンションであれば過去の大規模修繕の履歴が管理組合で記録されていますので、その履歴をみることで過去の周期がわかります。そこで次回の大規模修繕がいつごろ行われるかが推測できます。

大規模修繕には多額の費用が必要であること、それに伴いマンション所有者の同意が得にくいこと、また材料の改良によって耐久性や防汚性能がよくなってきているために、12年よりも長い周期で大規模修繕が行われることが増えています。

所有者にとっては、いつごろ次の大規模修繕が行われるのかは大事なことです。

修繕積立金があるのにどうして
一時金の出費が必要?

  1. 大規模修繕の費用の引き当て

大規模修繕の費用は月々支払っている修繕積立金をあてるのが原則です。国土交通省の平成30年度マンション総合調査結果によれば修繕積立金の月額平均は11,243円となっています。ところが、現在の積立額が長期修繕計画に比べて不足しているマンションが 34.8%あり、不足の割合が20%を超えているマンションが15.5%あります。この不足する額を、実際に大規模修繕工事を行なう際に所有者が補てんすることになります。

 

国土交通省「平成30年度マンション総合調査結果」

https://www.mlit.go.jp/common/001287061.pdf

 

  1. なぜ修繕積立金に不足が生じるのか

修繕積立金の額はマンションの所有者の合意で決まります。新築時は特に初期の負担をおさえたい希望が多いので、だんだんと修繕積立金の額を増やす方法を選ぶことが多いのが理由といえます。また、材料費や工事費が値上がりしたために修繕費用全体が上がり不足が生じることもあります。

 

  1. マンションの老朽化により修繕費用も高くなる

マンションが老朽化してくると補修個所が増えてきますし、エレベーターの交換となると多額の費用が必要です。このため建築後年数がたてば、それだけ修繕積立金も高くなることになります。

 

  1. 修繕積立金を使いきってしまった

前回の大規模修繕工事に予定外の費用がかかってしまったので、次回に繰り越す予定だった修繕積立金を使いきってしまうことがあります。このような場合、今回の工事費の不足分を補てんする他に、次回のために修繕積立金を増額して積み立てることが必要になります。

大規模修繕の売買への影響

  1. マンション売却価格の下落

修繕積立金が高くなると毎月の支出も増えるため、売却には不利。そのためマンションの売却価格を下げざるを得なくなってしまいます。

例えば、3,000万円の分譲マンションを金利1%、35年の住宅ローンで購入しようとすると、月々の返済額は8.4万円程度ですが、これとは別に毎月修繕積立金が発生します。仮にマンション価格が同じで修繕積立金が1万円の物件と2万円の物件があるとすると、実質負担額は前者が9.4万円程度、後者は10.4万円程度になります。修繕積立金が高くなるほど売れにくくなるため、マンションの売却価格も安くせざるを得ないことがあるのです。

例えば、売却価格を2,700万円に下げた場合、同じ条件の住宅ローンだと約7.5万円の支払となり、修繕積立金が2万円の場合でも合計約9.5万円の負担に抑えられます。

このように、分譲マンションでは、修繕積立金の額を考慮して売却価格を調整する必要があるのです。

  1. 修繕積立金の残高の少なさは買主様の不安要素

大規模なメンテナンスに備えるための修繕積立金が、どれくらい積み立てられているかは、購入を検討している買主様にとって非常に重要な判断基準となります。積立残高が明らかに少ないとなれば、当然不安を感じる方もいます。工事に必要な費用が積立残高で賄えないと、毎月の修繕積立金の値上げや、不足分を補うために臨時徴収する可能性があるからです。

売却にあたっては、毎月の修繕積立金の額だけでなく、現在どの程度の額が積み立てされているかも確認しておく必要があります。

 

  1. マンション売却は大規模修繕前がベスト

大規模修繕工事の実施後は、積立額が一気に減り、修繕積立金を増額する可能性が高くなります。そのため、マンションを売却するなら、大規模修繕工事の実施前がベストです。

 

マンションの売却を検討されている方は、お住まいのマンションの長期修繕計画がどのようになっているのか、しっかり確認し、

売却のタイミングを見極めましょう。

イエステーションはマンションの売却も行っておりますので、お気軽にご相談ください。

親子間売買をする際の注意点は?

メリットとデメリット

長く暮らしてきた愛着のある我が家をできれば子供に引き継いでもらいたい、そう考える方も多いでしょう。

どのようなときに親から子供へ名義を変えたいと思うのでしょうか。親子間の売買で注意すること、親子間の売買のメリットとデメリットを紹介します。

 

親子間の売買を考える3つの場合

  1. 親にお金を渡したい
    • 親の債務整理

親が住宅ローンを組んでいたり、事業のために借り入れをしていたりして、高齢や病気・事故のために返済が苦しくなることがあります。そのようなときに、引き続き親に自宅に住んでもらうために子供が親の借金を肩代わりする目的で売買を検討することがあります。

 

  • 親の介護費や医療費のねん出

高齢になった親の介護施設への入所費用や医療費をねん出するために自宅を売却したいけれど、他人に売却するのは抵抗があるので子供に買ってくれないかと相談することがあります。

 

  1. 相続対策

親が高齢になると相続対策も考えておく必要があります。相続人が複数いる場合には不動産だと遺産分割の協議が整わなくて、なかなか相続手続きができないことがあります。そこで同居している子供に買い取らせることで自宅を手当てしてあげることも有効でしょう。

 

  1. 贈与の代替

親としては、不動産をただであげても良いけれど、贈与税がかかるので売買をして贈与税を回避することもあります。売買をした場合には譲渡した親に譲渡益があれば不動産譲渡所得税が課税されますが、贈与税よりは少なくなることが多いです。

親子間の売買で気をつけること3つ

売買の当事者は親子間ですから、お互いに気心も知れて安心して取引ができます。しかし、親子間の売買だからこそ気をつけなければならないことがあります。

 

  1. 贈与税がかからないように注意しましょう。
    • 売買契約書をつくる

売買契約書は第三者に対して売買があったことを証明することができる確実な証拠です。売買をすれば翌年に税務署に対して申告をする必要がありますが、その際に提出する書類になります。

 

  • 適正な売買価格

親子間だから利益よりも情が優先されて、なるべく安く売買したいと思うものです。しかし、売買価格はその実勢価格(時価)でなければなりません。実勢価格よりも大幅に安い金額で売買をすると税務署はその差額について贈与だと認定し、贈与税を課します。

 

そのため、次のことに注意しましょう。

 

  • 売買代金の適正な基準は実勢価格となります。

実勢価格は近隣類似の実際の不動産の売買事例によります。

そのため不動産会社や不動産鑑定士による適正な評価をしてもらうと安心です。

 

  • 不動産会社や不動産鑑定士に依頼すると費用がかかるので避けたい場合には国土交通省の公示地価を参考にしたり、税務署が公表する路線価を参考にしたりして売買代金を決めることもあります。

この場合路線価を1.25倍した金額を下回らない方が無難です。

路線価は実勢価格の8割だとすることが根拠です。

路線価額そのままでもよいとする裁判例もありますが、トラブルをさけるために上記の基準によって売買価格を決めるのがよいでしょう。

 

  • できるだけ不動産会社や税理士などの専門家に詳しいことを相談することをおすすめします。

 

国税庁『著しく低い価額で財産を譲り受けたとき』

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4423.htm

 

  • 実際にお金の授受をすること

親子間の売買だから売買代金の支払もルーズになりがちです。

しかし、実際に代金の授受がなければ税務署は売買ではなく贈与だと認定し、贈与税を課税します。

そのために、売買代金は現金での授受はさけて、振込などの客観的な証拠を残しましょう。また、領収書も発行してください。

 

  1. 住宅ローンが通りにくい

親子間の売買では住宅ローンを組みにくいことが多いです。親子間の売買では不動産会社を仲介として利用しないことが多くあります。

仲介業者は重要事項説明書を作成し、その不動産の用途地域やガスや水道の供給、土砂災害警戒区域などの防災情報等を提供しますが、融資する金融機関にとって、この情報は不動産評価をするための重要な情報になります。ただし仲介業者が不在ならこの情報が手に入りません。

また、親子間の売買を仮想して不正な取引が行われるのではないかと危惧して融資に消極的な金融機関もあります。

 

  1. 他の相続人に話をしておく

特に相続対策として子供の名義に変える場合には、名義にしない他の兄弟などとよく話をして、わだかまりがないようにしておくことが大事です。いざ相続が始まった時に、無用なトラブルがないようにしたいものです。

親子間の売買のメリット5つ

親子間だからこそのメリットがあります。

 

  1. お互いに知っているので安心して売買できる

第三者である他人との売買ではないので、境界確認や隠れた瑕疵の確認、売却による売主の義務に対しての不完全履行を請求される心配がありません。

 

  1. 支払いや引渡しの条件を柔軟にできる

売買代金の支払時期や不動産の引渡し時期、瑕疵担保責任などの条件をお互いが納得できるように厳しくしてもゆるくしてもよく、柔軟に定めることができます。

 

  1. 相続対策としても活用できる

相続開始までに親の意向を反映して名義を変更できます。複数の相続人がいれば遺産分割協議がなかなか整わないこともありますが、スムーズに相続手続きができます。

 

  1. 外部に経済状況がもれない

親の債務整理のために親子間の売買をする場合に、親子間で契約から決済まで完了するので、第三者に経済状況がわかりません。

 

  1. 住み続けることができる

親子間の売買ですから、売買が完了しても引き続き親の希望でその家に住み続けることができます。家賃を定めることも自由にできます。

親子間の売買のデメリット5つ

親子間の売買にはデメリットもあります。

 

  1. 贈与を疑われやすい

注意点で説明しているように、親子間の売買は贈与ではないかと注目されやすいので、売買契約をきちんと作り、その支払も明確にしましょう。

 

  1. 税務上の特典が使えない

親子間の売買では第三者との売買と比べて使えない税務上の特典があるので注意が必要です。

 

  • 自宅の売買でも3000万円の特別控除などが使えません。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

 

  • 10年超所有軽減税率の特例が使えません。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3305.htm

 

  • 住宅ローンが残っているマイホームの売却の譲渡損失の特例が使えません。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3390.htm

 

  • 生計が同一の場合は住宅ローン控除が使えません。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1214.htm

 

  1. 子供が自分の住宅ローンを組めなくなるおそれがある

親子間の売買で住宅ローンを組んでいれば、子供が自宅を購入したいときに子供の名義で住宅ローンを組めないおそれがあります。持家は1個とするのが金融機関の原則です。

また返済能力から重ねてローンが組めないこともあります。

 

  1. 買主が自分で住まなければ税金が高い(減税がない)

自分で住む住宅を購入した場合には登録免許税や不動産取得税の軽減が適用されて減税されますが、自宅として使用しない場合には適用がありません。たとえば、自宅として購入した条件に適合する建物の移転登記の登録免許税の税率は3/1000ですが、自宅でない場合には20/1000の税率で計算されます。

 

  1. 専門家が関与しないと不備があるおそれ

親子間の売買ということで、費用をなるべくおさえるために自分たちだけですすめることが多いですが、どうしても不備があって時間やお金が余分にかかることがあります。

できるだけ、専門家に相談をしながらすすめましょう。

  • 税金・・・・・税理士
  • 契約書・・・・宅地建物取引士(不動産会社)
  • 登記手続・・・司法書士

その空き家の火災保険、
本当に大丈夫ですか?

知っておきたい空き家の火災保険

今あなたが所有している『空き家』は、火災保険に入っていますか?空き家になっている理由はいろいろあると思います。

一時的な転勤なので、そのまま空き家にしている場合。

親から相続したものの、自宅が別にあるので空き家になっている場合。

 

空き家になっている理由と管理の状況によっては、せっかく火災保険に入っていても、いざ必要な時に保険金が支払われない場合があります。

なぜ空き家に火災保険が必要なのか

いろいろな理由によって、現在空き家になっている家屋にはどのようなリスクがあるのか整理してみましょう。空き家を適切に管理していくためには、空き家のリスクを正確に把握しておく必要があります。

 

空き家の3つのリスク

  1. 犯罪

人が常時住んでいないため充分に管理できない家屋だと、不審者が知らない間に不法侵入していてもわかりません。不法侵入による被害は盗難だけではなく、火の不始末による火災の原因になることもあります。また、だれも住んでいない家だから、といたずらに放火をされるおそれもあります。

放火及び放火の疑いがある火災が平成29年では5833件おきています。

 

消防庁『平成30年消防白書』P.80 

https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/h30/items/h30_hakusyo_all.pdf

*量が多いPDFのため通信料に注意してください。

 

  1. 建物の老朽化

建物が古くなると倒壊のおそれが高くなります。また倒壊まではしなくても瓦が落ちたり、塀が壊れたりして通行人に被害を及ぼすおそれもでてきます。

空き家で管理ができない状態だと雨漏りにも気づけずに放置される可能性もあり、建物のいたみがすすんでしまいます。

 

  1. 衛生・外観

長い間空き家になっていて管理できていない建物は換気も悪くダニやゴキブリなどの害虫やシロアリが繁殖しても気付くことができません。

また瓦や外装材がはげ落ちて外観が悪くなってもそのままになってしまうことになります。

 

以上3つのリスクの中でもとりわけ火災のリスクが大きいものです。

いったん火災が起きると、『重過失』がなければ法律上の責任を負わない(『失火ノ責任ニ関スル法律』)とはいえ、近所の方に謝罪する必要もありますし、火災がおきた建物をそのまま放置すると迷惑をかけることになるため、早急に解体撤去をしなければなりません。しかし、保険金が支払われなければそれらの費用を全て自分で準備しなければならなくなります。

そのため空き家であっても必ず火災保険に入っておく必要があるといえます。

空き家と火災保険

空き家の場合の3つのリスクを整理しましたが、これらのリスクのために空き家だと火災保険に入れないこともあります。

 

火災保険では建物の利用状況によって次の3つに分類しています。

  1. 住宅物件

住むために利用している家屋。転勤などで一時的に空き家になっている建物や定期的に使用している別荘などは住宅物件に分類されます。

  1. 一般物件

店舗や事務所など住居以外に利用している建物。

  1. 併用物件

上記住宅と一般物件とを併用している物件

 

相続した親の実家は本来『住宅物件』なのですが、ほとんど使用していない状態であれば火災保険の契約上では『一般物件』に分類されてしまいます。

このため、いままで親がかけていた火災保険をそのまま継続していても「火災保険に入っているから安心」ではありません!保険会社に住宅物件として認定してもらえなければ、いざ火災にあったからと火災保険を請求しても保険金が支払われないおそれがあります。

 

火災保険料は住宅物件よりも一般物件の方が割高になるのが一般的です。火災保険には火災や風災を補償するものと、日常の災害や突然の事故による破損までカバーするものとがあります。補償内容を充実させた方がいろいろなトラブルに対応できるので安心ですが、保険料も割高になります。補償内容が不充分だと万一のときにせっかく入っている火災保険が役にたたないおそれもあります。

また共済など、空き家だと火災保険に入れない保険会社もあります。けっして自分だけの判断で安心だと決めつけないで、保険会社とよく相談しながら、今のままの火災保険でよいのか、どのような条件の保険に入ればよいのかを充分に検討することが大切です。

空き家だと地震保険に入れない

地震によって火災がおきても火災保険が適用されません。そのため空き家でも地震保険に入っておきたいものですが、地震保険は被災した後の住宅再建を目的とした保険であるために、一般物件とされた空き家では火災保険とセットでは地震保険に加入できないことに注意してください。

ただし、一般物件でも地震保障特約をつけることができる保険商品もあります。親がかけていて、そのまま継続している火災保険とセットになっている地震保険についても、今のままの管理状況で保険が適用されるのか、保険会社とよく打ち合わせをしておいて、万が一のために備えをしておきましょう。

相続と生前贈与どっちがいいの?

生前贈与のメリットとデメリット

『生前贈与』とは、生きている間に、無償であげる、もらうと双方の意思が合致することからなる契約です。いつでも、だれでもすることができます。

しかし、生前贈与にはメリットだけではなく、デメリットもあるので、しっかりと確認をしておく必要があります。

生前贈与のメリット2つ

  1. 相続財産を減らせる(相続税の節税)

(ア)110万円の暦年贈与を使う

 1年間に110万円までは贈与をしても贈与税がかかりません。

相続税を心配するのですから、子供が2人として基礎控除額の 3,000万円+600万円×2の合計で少なくとも4,200万円以上の財産があるので、それと比較すれば110万円はわずかだと思うかもしれません。しかし、子供だけではなく、孫たちに長年の間110万円を贈与していけば相当な額を贈与することができます。

例えば毎年110万円を10年間続ければ1,100万円を贈与することができます。

(イ)収益のある不動産を贈与する

 収益がある不動産の場合は年々収益がたまっていくので、それだけ相続財産が増えてしまいます。生前贈与を行なうことで相続財産が増えるのを防ぐことができます。

  1. いつ、誰に、何を、贈与するかを選択できる

贈与をする人の意思でいつでも、誰にでも、何を贈与しても構いません。(もちろん贈与は契約ですから相手の承諾は必要です。)

(ア)そのため、事業を継がせたい子供に事業のための不動産や会社の株式を生前贈与することで親の意思を反映できます。

(イ)不動産などは遺産分割協議が整わなければ名義を変えたり換価したりすることが難しいので、生前贈与をすることで相続時のトラブルを防ぐことができます。

しかし、他の相続人の同意を得ておかないと逆に紛争がおこるおそれもあります。

不満がある相続人は『遺留分減殺請求』をして遺留分に満たない額を請求することができます。

生前贈与のデメリット3つ

  1. 贈与税がかかる

年間110万円を超える贈与には贈与税が課税されます。贈与税は相続税よりも税率が高いので、一般的には相続よりも贈与の方が多く税金を納めることになります。

 

  1. 登録免許税、不動産取得税がかかる

不動産を贈与されたときは登記を行ないます。この不動産の贈与登記の際に登録免許税を不動産評価額に対して20/1,000の税率で納付しなければなりません。

相続登記の税率が4/1,000ですので、贈与の方が割高の登録免許税を納めることになります。

また、相続によって不動産を取得したときには不動産取得税はかかりませんが、贈与の場合には課税されます。土地の場合は固定資産税の評価額の1/2、建物の場合は評価額のままが課税対象となり、住宅の場合は3/100の税率で納めることになります。

 

  1. 遺留分減殺請求をされるおそれ

兄弟姉妹以外の相続人(具体的には子供や配偶者等)は、法定相続分の一定割合を遺留分として保護されています。

親が亡くなる前に相続人に対して贈与したものは、亡くなる前10年間に行なった財産は相続財産に割戻して計算することになります。(民法1044条3項)

利用できる特例と贈与をするときの注意点

  1. 生前贈与をするにあたって、有利に使える特例があります。特例を利用するには必ず申告が必要です。

     

    利用できる税制5つを紹介します。

     

    1. 相続時精算課税制度

    60歳以上の親等から30歳以上の子や孫に2,500万円を限度に贈与時に贈与税を課税しないで相続時に贈与した額を相続財産に加算して相続税を計算する特例です。

    2,500万円を超す贈与に対しては一律20%の税率で贈与税が計算されます。

    また、相続時精算課税制度を選択した以降は110万円の暦年贈与の特典を受けることができなくなります。

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm

     

    1. 居住用不動産の配偶者控除

    婚姻期間が20年以上の夫婦間では住宅用の不動産または購入資金の贈与をしても2,000万円まで控除されます。暦年贈与の110万円も加算できます。

    同じ配偶者間では一生に一度だけ利用できます。

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm

     

    1. 住宅取得資金の贈与

    親等から子や孫に対して最高1,500万円まで住宅用家屋の取得資金として贈与をしても非課税になる特典です。

    もらう側に所得制限があり、現在のところ令和3年12月31日までが適用期間とされているので要件を確認のうえ利用してください。

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4508.htm

     

    1. 教育資金の贈与

    親等から30歳未満の子や孫に対して1,500万円を限度に贈与しても贈与税が課税されません。

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4510.htm

     

    1. 結婚・子育て資金の贈与

    親等から20歳以上50歳未満の子や孫に対して結婚や子育て資金を贈与しても1,000万円までは非課税となります。

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4511.htm

贈与するときの3つの注意点

相続するまで待つか、生前贈与を選択するか、悩むところですが、決める前にまず次のことを考慮してください。

 

  1. 相続税がかからないなら節税対策で生前贈与をしない

そもそも相続税の節税対策のために生前贈与を考えるのなら、相続税を収める必要があることが前提です。

万が一相続開始した時に、相続税をいくら払うことになるのか、試算してみましょう。

 

配偶者が相続する場合は、法定相続分または1億6,000万円のどちらか高い額まで相続税がかからないので、こちらも念頭に置いて計算しましょう。 

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4158.htm

 

そのうえで、生前贈与にかかる贈与税やその他費用を比較して、どれくらいのメリットがあるかを考えるのが得策です。

 

  1. 定期贈与とみなされないように

毎年同じ時期に暦年贈与額110万円を贈与していくと税務署がはじめから一定額を贈与することになっていたと認定して贈与税を加算されるおそれがあります。また相続税を逃れるために贈与を仮装しているのではないかと疑われることもあります。

そのため、毎年贈与契約書をきちんと作成し、その都度振込などで贈与の事実が証明できるようにすること、また、贈与されたものが金銭ならば、贈与を受けた側が自分で通帳などを保管し管理することが大事です。

 

  1. 死亡前3年以内の贈与は相続税の対象

相続開始前3年以内の贈与は相続税を計算するうえではなかったことになり贈与した財産も相続財産として計算されます。

 

(ア)『相続を受けた人』が贈与を受けた財産が対象となるので、相続人ではない孫などが受けた贈与は対象になりません。

(イ)次の特例税制を利用した贈与は対象になりません。

  ➀配偶者控除

  ➁住宅資金の贈与

  ➂教育資金の贈与

  ④結婚・子育て資金の贈与

(ウ)贈与をしたときの価格を加算するので相続時の価格ではありません。

(エ)贈与をしたときに納めた贈与税は、相続税から控除されます。

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4161.htm

 

 

相続がいいのか、生前贈与がいいのか、各人の個別の状況によって変わってきますので、悩んでいるかたはまず税理士など専門家に相談することをお勧めいたします。

急な転勤…持家はどうする!?

持家をどうするかの選択肢はどのようなものがあるのでしょう

転勤になったら持家はどうすれば良いのでしょうか。

5つの例でそれぞれのメリットとデメリットを整理してみましょう。

1 単身赴任

2 家族全員で引っ越す

  ① 売却

  ② 賃貸

  ③ 空き家

  ④ 管理委託

転勤をするにあたって単身赴任をした場合に家賃補助や帰省手当てなどの会社からの補助はどれくらいあるのでしょうか。

他の家族はどのような意見でしょうか。

子供が幼ければ問題も少ないでしょうが、進学を控えていれば進路のことが気になりますし、子供は友達と離れることに抵抗を感じてしまいます。

住宅ローンはどれくらい残っているでしょうか。

売却しなければ自宅を持ち続けることによって住宅ローンを引き続き支払う必要があります。

転勤の期間が決まっているのでしょうか。

どのくらいの期間が予想されるかによって選択肢も変わってくるでしょう。

また、転勤が終わっても持家に戻る気持ちがあるでしょうか。

単身赴任

メリット

  • 家族が引き続き自宅に住み続ける場合は、住宅ローンの借主が国内に単身赴任なら住宅ローン控除がそのまま使えます。

  住宅ローンの借主が国外に単身赴任をする場合には自宅を購入した時期によって違いがあります。

  ➤ 赴任先が海外なら使えない場合もある

    No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等

    https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1234.htm

  • 子供や家族は今まで通りに生活ができます。
  • 引き続き家族が住むので自宅の掃除や風通しなどの管理の心配をしなくてもすみます。

デメリット

  • 住宅ローンが残っていれば単身赴任先の生活と二重生活なので、家具や自宅に帰る移動費用、食費などが二重の負担になってしまいます。
  • 家族が離れ離れになることで単身赴任をする人に精神的な悪影響がある場合もあります。性格的に単身赴任に合わない人もいるでしょう。
  • 料理が苦手な人もいるので外食が続いてしまう場合は、健康にも食費にも心配がでてきます。

家族全員で引っ越す

  家族全員で引っ越しをして、自宅は売却や賃貸を考える場合に共通するメリットとデメリットがあります。

 

メリット

  • 家族がずっと一緒にいられることは最大のメリットといえるでしょう。

 

デメリット

  • 住宅ローンは住宅として利用する目的で不動産を買うための資金です。

  家族全員で引っ越しをすればその利用目的からはずれることになるので、住宅ローンの一括返済をしなければならないおそれがあります。

  転勤を理由で家族全員が引っ越す場合には、やむをえない理由だとして引き続き住宅ローンが利用できる金融機関もありますので、まずは利用している

  金融機関の担当者とよく相談をしてください。

  相談をしないで引っ越しをしている場合は、条件違反だとして一括返済を迫られる場合もあるので注意が必要です。

  • 家族全員が引っ越して自宅に住んでいない場合には住宅ローン控除が使えません。

  転勤が終わって自宅に帰った場合には残りの期間については、また使えるようになります。

  • マンションの場合は家族全員が引っ越して住んでいなくても持ち続ける限りは管理費や修繕積立金などの支払が必要です。
  • 留守にすれば家はどうしても傷みますので、掃除や換気などの管理が必要です。

売却

  家族全員で引っ越しをして転勤が終わっても自宅に帰る予定がないのなら、売却をするのもよいでしょう。

1 良い条件で売却するには『一括査定』という方法もあります

  複数の会社に同時に査定額を出してもらえるのが『一括査定』です。複数社で見積をだしてもらって、最も条件がよい会社を選びましょう。

  売却額の査定がでれば住宅ローンの残高と照らし合わせて住宅ローンの返済のめどをたてましょう。

2 引っ越す前に売るか、引っ越した後に売るかを決めましょう。

 (ア)引っ越し前だと居住しながら売るので購入希望者への内覧対応が必要です。

    まだ自宅に住んでいるので内覧に抵抗を感じる方もいます。

 (イ)引っ越し後なら家をきれいにして内覧も抵抗なくすることができます。

    内覧や売却活動を自宅の地元の不動産会社に一任することができるので、引っ越し先でゆっくりとすることができます。

3 売却をする場合には税金に注意をしてください。

 (ア)短期譲渡

    取得後5年以内の売却は短期譲渡といい、譲渡所得がでる場合には5年越しの売却と比べて高額の譲渡所得税を納める必要があります。

 (イ)自宅を引っ越してから3年以内に売却すると特例があり、譲渡所得税の軽減をうけることができます。

    ① 損益通算

    ② 3,000万円特別控除

No.3302 マイホームを売ったときの特例

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

 

メリット

  • 自宅を売却することにより不動産を現金化できます。住宅ローンが残っている場合には住宅ローンをまず返済しなければなりません。住宅ローンの残高を確認しましょう。
  • 売却することにより自宅の固定資産税やマンションの管理費などの維持費がかからなくなります。
  • 空き家のように換気や掃除など自宅の管理をする必要がなくなります。
  • 賃貸にした場合と比べてリフォームや家賃の回収の心配がなく賃貸管理が不要です。
  • 売却により住宅ローンが完済できれば住宅ローンから解放されます。

 

デメリット

  • 一度自宅として住んでいるため中古物件となり、購入時よりも安くなるのが一般的です。
  • 売却には手間や費用がかかります。すぐに買い手がみつかるとは限りません。
  • 売却価格が住宅ローン残高よりも安ければ住宅ローンを一括返済できないおそれがあります。手元資金の持ち出しが必要になり、手元に資金がない場合には住宅ローンよりも利率が高い借り入れをする場合もあります。
  • 転勤が終わってもとの職域に戻った時に住むところを一から探さないといけなくなります。

  ➤ 新しく購入するときは、自宅を買った時と同じように仲介手数料などの費用と手間がかかります。

  ➤ 気に入って購入した現在の家と同じ物件は二度と手に入らないこともあります。

賃貸

  普通に住宅として賃貸契約をすると簡単には賃貸契約を解約することができなくなります。一定期間に戻ってくるなら必ず『定期借家契約』にすることが大事です。

 

メリット

  • 家賃収入が得られます。
  • 賃借人が住むので家の管理維持の手間が省けます。
  • 引き続いて不動産を持ち続けることができます。

 

デメリット

  • 他人に賃貸し、自宅を使われることに抵抗感がある人がいます。
  • すぐに賃借人が見つかるとは限りません。

特に定期借家契約だと借りられる期間が限られるため借りたい人が限られます。

また、借りる人が限定的だと貸し出す家賃も低くなってしまいます。

  • 賃借人がいれば元の職域に戻ってもすぐには持家に住むことができません。

明け渡してもらうまでは戻ってきても自宅に住むことができなくなります。

  • 賃借人によっては持家が傷むことが心配されます。

また長期になればリフォームやハウスクリーニングが必要になることもあります。

賃借人が代わったときのリフォームは原則家主の負担です。

特別に乱暴に扱ったために残った傷みを除き、普通に使用しての劣化は賃借人に請求することができません。

  • ローンの支払が残ります。

自宅を賃貸にする場合には住宅ローンが利用できなくなるおそれがあります。

ローンを組みかえて収益物件の借り入れにすると利息が高くなることが通常ですので、以前と比べて月々の返済額が上がることになります。

賃料収入が増えるとはいえ、どれだけの収支があるかを予測しましょう。

  • 賃借人によっては家賃滞納のリスクがあり、乱暴な賃借人だと自宅を荒らされるリスクもあります。
  • 途中で売る気になっても売却しにくいことがあります。

借家人がいれば収益物件の扱いになるため、売却価格が空き家に比べてさがるおそれがあります。

また、収益物件の場合はファミリータイプだとワンルームに比べて収益性が低いために売却しにくいのが一般的です。

 

空き家

メリット

  • 持ち続けていれば好きな時にいつでも戻ってこられます。
  • 自宅に荷物をそのまま置いて行かれるので、転勤先には必要なものだけ持っていくことができます。
  • 売却しないので自宅をそのまま持ち続けることができます。
  • そのまま持ち続けるので売買契約や賃貸契約などの面倒な手続きがいりません。

 

デメリット

  • ローンが残っていれば転勤先の家賃などと二重の支払をする必要があります。
  • 空き家にしておくと家の傷みが早いので、風通しをしたり自宅に帰るための費用や補修費など管理維持のための手間や費用がかかります。
  • 空き家にしていればどうしても家の劣化が早まるおそれがあります。

管理委託

誰にも貸さないで第三者に管理を委託することも考えられます。

その場合は次の共通のメリットとデメリットがあります。

 

メリット

  • 他人に使われなくてすみます。
  • 自宅なので自分の都合に合わせて戻ってこられます。

 

デメリット

  • ローンが残っていれば転勤先の家賃などと二重の支払をする必要があります。
  • 委託管理費のコストがかかります。
  • 賃料収入がないのでローン負担が重くなります。

 

管理会社に委託する場合には次のメリットやデメリットがあります。

 

メリット

  • プロだと安心して管理をまかせることができます。
  • 管理会社所定の管理メニューに従う必要があるのでこちらの都合どおりにはいきません。

 

デメリット

  • 費用がかかります。

 

知り合いに管理を依頼する場合には次のメリットやデメリットがあります。

 

メリット

  • 管理会社に依頼するよりも管理コストに融通がきくでしょう。
  • また管理の内容もお互いに話ができるので融通がききます。

 

デメリット

  • そもそも頼める人がいない場合もあるでしょう。
  • 依頼をされる側は素人なので、どうしても目が届かないところもあるでしょうし、限界があります。

 

  転勤は社内での飛躍のチャンスですが家族に与える影響も大きいもの。メリットとデメリットを家族全員で話し合い、後悔しない転勤をなさってください。

防災マップと不動産取引の関係とは?

防災マップとは

 防災マップとは地図上でその地域にどのような災害のおそれがあるかを示したものをいいます。防災マップでは被害の影響だけではなく、避難場所や避難経路の確認ができます。

 国内では昔から地震や水害などの自然災害が多くおきてきました。過去のデータから、これから想定される被害範囲をまとめることで地域の人に注意喚起し、少しでも被害を防ぐことが防災マップの目的です。

防災マップの入手方法3つ

1.国土交通省のサイト

国土交通省では『ハザードマップポータルサイト』を公開しています。

https://disaportal.gsi.go.jp/

このサイトでは①『重ねるハザードマップ』と②『わがまちハザードマップ』が用意されています。

①重ねるハザードマップでは洪水、『土砂災害』、『高潮』、『津波』、『道路防災情報』、『地形分類』の項目ごとに表示でき、お互いを重ね合わせて表示することもできます。

また過去と現在の航空写真を比べて造成工事の様子をみることができますし、高低差も色分けでわかりやすく表示できるようになっています。

また過去の代表的な災害情報もこちらで入手できます。

 

②わがまちハザードマップではそれぞれの市町村のハザードマップに案内されます。

 

2.各自治体のサイト

各市町村で独自に防災マップを準備していますので、『市町村名+防災マップ』で検索してみてください。

参考に福島県、宮城県、茨城県がそれぞれ公開している防災マップへのリンクを紹介します。

 

福島県

https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/16025b/bousaimap.html

宮城県

https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kasen/ki-kouzui-hm.html

茨城県

https://www.pref.ibaraki.jp/doboku/kasen/keikaku/shinsui.html

 

3.市町村役場・役所の窓口

各市区町村役場・役所では紙の防災マップを配布していますのでお出かけの際に確認されることをおすすめします。

災害リスクは契約前にする重要事項説明項目

 宅建業法により、不動産会社は買主に対して、土砂災害や津波災害について売買契約成立前に説明することが義務付けられていましたが、新たに2020年8月以降は水害についても説明義務が追加されました。

 地震については、その予測が難しいためでしょうか、今のところ重要事項説明の対象になっていません。

重要事項説明は契約成立前に行う

 重要事項説明は売買契約成立前にしなければならないとされています。そのため、買主がその物件を契約するか否かの判断材料となります。

事前の調査で納得して買う

 購入の検討をはじめるときに災害リスクの情報を把握しておくことで、新築であれば災害リスクを軽減する対策を施工会社に求めることができますし、中古住宅であればリスク対策の費用として売買価格を交渉してくる買主もおります。

 自身で災害リスクを把握しておくことで、「リスクはあっても希望条件にあっているから購入したい。」「同じリスクがあるならこちらの物件の方が条件がよい。」と選択できる余裕ができます。

 不動産は高額な買い物です。事前に十分な調査をし、選択のうえで納得したと満足できる買い物をしたいものです。

 

査定への影響

 例えば防災マップに浸水被害が予想されるとあっても、今までの取引事例や公示地価などは、既に災害情報をおりこんでいるため、査定への影響はありません。

 しかし、新たに土砂災害のリスクがあると指定されたり、直近に実際に水害にあったりすれば買い手の需要が少なくなるため、どうしても売買価格に影響を及ぼすことは免れません。

 それでも駅に近いとか、商業地に近いとか、リスクと利便性との比較によって売買価格への影響の大小が違ってきます。

販売のプロに相談

 防災マップの災害リスクがある地域に分類されているとか、以前災害にあった土地だとか、売却にあたりいろいろと心配される方もいらっしゃることでしょう。そういったときこそ、経験豊富な不動産売却のプロに相談しましょう。

 どうすれば買い手がつくか、良い条件で売却できるか一緒に考えてもらえます。

     査定額が思ったより高い!      うれしいけど心配…!?

査定が高くなる理由3つ

どうして査定価格が高くなっているのでしょうか。

  1. 自信がある

  一つにはその地域で販売実績があり、しっかりとした相場観をもっている会社だからです。広告もあらゆる分野を利用して大きく売り出してくれる会社かもしれません。

販売力に自信があるからこそ、高い査定ができるのだといえます。

  1. 顧客獲得

  次に考えられるのは、不動産会社の中には、「売主様からどれだけ売却物件をお預かりできるか」を営業の評価にしている会社もあります。

そのため、営業自身が「この価格では売れないのではないか」と危惧をしながらも、とりあえずお客様をつかむために高い査定額を示すこともないとは言い切れません。

  1. 他の会社は早期成約を狙い低めの査定をした

  3つ目に考えられるのは、「成約までの期間」の設定の違いです。A社の査定額は、成約までの予想期間を1年くらい見越して、高い査定をした。B社は、成約までの予想期間を3ヶ月と見越して相場ぴったりの査定をした。この場合は、当然A社の方が査定価格が高くなります。

損をしないためには何をしておくべき?4つの知っておくこと。

  査定額を提示されて、果たしてその価格で売れるのか、売主様ご自身もある程度の相場観を持っておくことが必要です。

① 3つの方法で相場を知る

  1. 公示価格

  毎年公表される公示価格は、物件価格の一つの目安となります。不動産会社でも実際の査定で利用することもあります。

 国土交通省地価公示へのリンク

  https://www.land.mlit.go.jp/landPrice/AriaServlet?MOD=0&TYP=0

 

  1. 国土交通省などのサイト情報

  実際の成約価格をベースにした公的なサイトを利用すれば自分の不動産がどれくらいで売れるのか過去のデータをもとに身近に感じることができます。

  不動産会社のホームページに掲載されている物件情報はあくまでも「売出価格」なので、実際に成約になった価格ではありません。

 国土交通省の土地総合情報システム

  https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet

 レインズマーケットインフォメーション

  http://www.contract.reins.or.jp/

 

  1. 新聞広告や折り込みチラシ

  新聞広告や折り込みチラシは身近で、ほぼ毎日手に入る物件情報です。こちらに掲載されている価格も売出価格です。

  自分の売りたい不動産の近くで売りに出ている場合には、現地を実際に見てみると自分の不動産と比較することができるので参考になります。

 

②査定のチェックポイントを知る

不動産会社は不動産を査定するにあたり、どの点をチェックしているのかを知っておくことが必要です。

 

  1. 近隣の成約事例

  なんといっても過去の事例は貴重なデータです。近隣の成約事例と大きくかけ離れて売買が成立することは特殊な事例を除いてほとんどないと言ってよいでしょう。なぜなら、その地域の相場を一番よく勉強しているのは、その地域で物件を探している買主だからです。

 

  1. 公示価格

  国土交通省が公表している資料なので信頼性があります。

 

  1. 立地条件

  駅や商業施設、学校等と近ければ通勤や普段の生活に利便性があるため買い手も多く、それだけ価格も高くなります。

 

  1. 物件の状態

  瓦や壁の塗装の状態、雨漏りや建具の不具合は物件価格に直結します。戸建はマンションと比べて特に個別性が強いので、近隣の成約事例と比べる際に同程度のものと比べることが必要です。

 

③査定方法の種類を知る

  不動産会社に査定を依頼したら、不動産会社はどのような方法で査定額を算定するのか。その方法を知っておくことも大事です。

  1. 簡易査定(机上査定)

  地図や過去の成約事例をもとに、現地をみないで理論値を提示する方法です。査定のチェックポイントにある物件の個別の状態が反映されていないため、実際に売り出すとしたら、査定額そのままの価格では難しいことがあります。戸建ての場合だと特に、建物内部の状態が査定価格のカギを握ります。

 

  1. 訪問査定

  実際に現地を訪れて、不動産の状態や近隣の様子なども考慮に入れて物件価格を査定します。訪問査定は、より実勢に近い査定額が示されることになります。

 

④担当者から査定価格の「根拠」を直接聞く

  直接不動産会社の担当者に、その査定価格を付けた「根拠」を聞き、納得できる材料(公示価格や直近での成約事例、その地域で探している買主がどれくらいいるのか等)をきちんと確認しましょう。また、担当者は近隣の物件情報(売出物件や成約物件)に詳しいか、近隣にその会社の販売実績がどれくらいあるのかを確認してください。不動産売買は、その営業担当者の自信や情報量、売りたいという熱意も成約までのスピードに大きく関わってきます。

売却査定を依頼するコツと準備すること

査定を依頼する前に準備すること

売却時期と価格を決める

  不動産の売却を考えるには、動機や目的があります。転勤のため、自宅を買い替えたい、親から相続したけど使わないなど、様々です。その目的をかなえるために、いつまでに売りたいか、最低限この金額で売りたい、という目標を定めましょう。

 

住宅ローンの残高を確認する

  不動産を売却するには、住宅ローンを組んでいる場合、一括で返済する必要があります。返済後の手取り額で売却の「目的」を果たすことができるのか、確認しましょう。

  住宅ローンの残高は返済予定表が手元にあればその予定表を見ればわかりますし、返済予定表がなければ取引先の金融機関から取り寄せることが可能です。

 

相場を自分自身で調べておく

  査定を依頼して金額を言われても、その査定額が果たして妥当なのか相場を知らなければ判断ができません。自分自身でどれくらいが相場なのか、あらかじめ目安を知っておくといいでしょう。

  過去の成約価格がわかる国土交通省の土地総合情報システムやレインズマーケットインフォメーションなどを利用できます。

 

国土交通省の土地総合情報システム

  https://www.land.mlit.go.jp/webland/servlet/MainServlet

レインズマーケットインフォメーション

  http://www.contract.reins.or.jp/

 

査定の種類を知っておく

  査定の種類は以下の2種類があります。机上査定は現地調査がない分結果が早くでますが、現地調査をしていないので査定額がそのまま実際の売出価格とはならないことが多いです。

 

  1. 机上査定(簡易査定)

  地図や過去の成約事例などをもとに、現地に行かずに計算上の査定額を提示します。

 

  1. 訪問査定(詳細査定)

  実際に現地を訪問し、詳しく物件を調査してから査定します。

 

手元にある物件資料の確認をする

  査定をスムーズにし、より有利に査定をしてもらうためにできるだけ次のような資料を準備しておきましょう。売却する不動産が土地だけなのか、一戸建ての建物か、マンションなのかによっても準備するものが変わってきます。

 

  1. 共通して準備するもの

 (ア)購入時の重要事項説明書

     売買で取得した不動産であれば購入時に重要事項説明書が交付されています。

    重要事項説明書にはその地域がどのような用途地域にあるか、どのような災害リスクがあるかなど詳細な説明がされています。この説明書に記載さ

    れている事項は売却する際に買主に説明することになり、建築制限などがあれば売却価格に影響があるためです。

 (イ)住み心地や周辺環境などのアピールポイントを整理

     その地域に住んでいる利便性、例えば近くの公共施設にどんな良いところがあるとか、おすすめのスーパーがあって安くておいしい食材が売られ

    ているとか、夜になると星がきれいに見えるとか、住んでいるからこそわかる買主にとってうれしい、良いところを書き出しておきましょう。

 (ウ)修繕やリフォームの履歴

     シロアリ駆除や外壁の塗り替え工事をした履歴があれば整理しておきましょう。

    定期的にメンテナンスが行われている場合はよい評価が得られます。またマンションの場合は数年に一度大規模修繕が行われますので、いつごろ行

    われるのかわかれば、売却しやすいかどうかの目安になります。

 (エ)固定資産税納入通知書や評価書

     査定をするにあたり不動産会社では公示価格も調査します。固定資産税の評価額も公的評価額であり、査定のうえで参考になります。

 (オ)土地の履歴

     住宅が建っていれば問題がクリアされていることが多いですが、更地の場合は過去の施設によっては土壌汚染や地中埋設物が心配されます。その

    ため、過去にどのような施設があったのかを確認しておき、査定の際に説明できるようにしておきましょう。

     また過去に水害にあった等の災害の記録も重要です。このようなことは売買契約にあたっての重要な告知事項となり、隠して売買してしまうと

    後々大変なトラブルとなりますので、査定の際にきちんと説明しておきましょう。

 

  1. 戸建住宅

 (ア)境界確認資料

     土地だけで売却する場合もそうですが、隣地との境界は一戸建ての場合重要です。最近は境界トラブルが増えていることから、売買に際して土地

    の測量をすることが多くなっており、境界確定図面があれば余分な出費がありません。また、隣地からの越境があったり逆の場合もあったりするの

    で、早めに確認しておきましょう。

 (イ)建築確認書や建築図面

     建築に関する図面等があれば構造などを把握しやすいので査定にあたっての重要な資料になりますし、保存されている場合は買主に引き継ぐべき

    書類です。

 

  1. マンション

 (ア)管理規約・使用細則

     マンションで生活していくうえでの重要な決まり事ですから、査定の際に提示できるようにしておきましょう。管理の内容も、買主が購入を検討

    する際の判断材料となる為、査定の参考になります。

 (イ)管理組合の総会議事録等

     マンションの管理組合の活動状況がわかり、管理規約や使用細則に反映されていないことがあるので、それらを把握するために手元にあれば査定

    に役立ちます。

 (ウ)分譲時のパンフレット、間取り図

     分譲されたときのパンフレットや当時のチラシがあればマンションの特長やアピールポイントが書かれていますし、間取り図があるので売り出し

    準備がスムーズになります。

査定を依頼する前にしなくてよいこと

  1. リフォーム

  壁紙の張替や水回りの取り換えなどのリフォームをしても、売却価格に必ず上乗せできるとは限りません。わざわざ査定の為に修理修繕などはせず、修理修繕が必要と思われる箇所をピックアップしておく程度にとどめましょう。

  そのままでは売りに出せないほど汚れたり壊れたりしていれば、売却にあたりリフォームをする場合もありますが、そのままでも売却できる方法など、売り出し方は不動産会社と相談して決めることができます。

  特に戸建てやマンションの場合はご自身でリフォームやリノベーションを前提に買う人もいるので、壁紙の汚れや傷などが気にならない買主を探すこともできます。

 

  1. ハウスクリーニング

  査定をするために、他人が家を実際に見に来るのだからきちんと片付けないといけないと思うのは人情ですが、査定の面から言えば、専門業者のハウスクリーニングをいれるなど必要以上に綺麗にする必要はありません。査定の目的は建物自体の調査です。

  同じ片づけをするのなら買主候補が内覧に来る時です。きちんと片付いた家はきっと買主の気をひくことでしょう。内覧の際には、その家での快適な暮らしをイメージさせるくらいに徹底的にきれいになっていれば理想的です。

査定を依頼する時に注意すること

信頼できる不動産会社、担当を選ぶこと

  今は「一括査定」という、複数の不動産会社に査定を依頼するサイトが数多くあり、会社ごとに査定額に差があることも当然あります。ただし、単純に「査定額が高いから。」という理由だけで不動産会社を選ぶことは危険です。なぜなら、ただ「高い査定価格」を提示することで顧客(売主様)を囲い込みたいだけの場合もあるからです。

  事前にご自身で調べたおおまかな相場と比較し、そして不動産会社に査定価格の「根拠」を必ず確認したうえで、ご納得いただける価格を提示してくれた会社を選びましょう。

  また、直接不動産会社の担当者と面談し、その担当者の人柄や熱意、その地域の不動産に対する情報量などを確認しましょう。不動産売却にあたって、担当者との相性はとても大事です。

査定の時に注意すること3つ

  1. 希望をきちんと伝える

  査定を依頼する前に決めていた目標の売却価格、売却までの期間、販売活動方法(近所の人に知られたくないなど)、連絡方法(電話はNG、メールだけ、都合の悪い時間帯など)をはっきりと担当者に伝えましょう。

  1. セールスポイントを伝える

  定期的に行なってきたシロアリ駆除や外壁塗装などの維持修繕は重要なセールスポイントになります。またそこに住んでいる売主様だからこそ分かるお家のメリットや環境などもより多く担当者に伝えてください。

  耐震基準の適合証明などをお持ちの場合も、買主にメリットがあるため売却に有利になり、それだけ査定もよい結果になります。

  過去にホームインスペクション(住宅診断)を受けていればその結果も重要なセールスポイントになりますので、書類があれば準備しておきましょう。

  1. 瑕疵をきちんと伝える

  売却にあたり、その不動産に瑕疵(目に見えない、または知らされていなかった隠れた傷、不具合)があるのに黙って売ってしまうと「契約不適合責任」売主が問われることがありますので、把握している瑕疵は隠さずに説明しましょう。些細なことでも、判断に迷ったらとりあえず担当者に説明しておきましょう。

瑕疵の種類として次の4つがあります。

(ア)物理的瑕疵

   シロアリ被害、雨漏り、家の傾斜、地中埋設物など

(イ)法律的瑕疵

   建築制限や用途制限など

(ウ)心理的瑕疵

   過去にその場所で自殺や殺人、火災など忌まわしい事故や事件があったこと

(エ)環境的瑕疵

   近所の騒音(工場や高速道路など)や臭気(ごみ処理場、汚水処理場など)、日照の問題、振動など

 

 

  その土地や家のことを一番よく理解しているのは売主様です。査定の際は、より詳しい情報があればあるほど、より信ぴょう性のある査定価格がだせますし、なにより売り出しをする際に、買主のかたも、売主様からの情報が多ければ多いほど、より安心して購入することができるので、売却全体に有利に働きます。

空き家が売れない4つの理由と6つの対策

空き家が売れない4つの理由

空き家がある場所の問題

  空き家がどこにあるか、建っている場所に売れない理由がある場合があります。

  1. 地方や田舎にある

  地方や田舎に家がある場合は、都市部と異なり高齢化や過疎の問題があり、住んでいる人が高齢化しているためそもそも住宅需要が高くない場合があります。そのため買い手をみつけるのが難しいのです。

  1. 主要駅から遠くて不便

  以前は都市部の企業に勤めていても、自宅は郊外のベッドタウンに構えることが多かったのですが、最近は勤務地と自宅が近い職住接近が好まれています。

  また以前の日本住宅公団は各地に分譲マンションを建築し販売しましたが、民業圧迫との批判を避けるため競合する物件のない場所に建築し、駅から遠い場所にベッドタウンを形成した経緯があります。また古い間取りのために現在の需要と合わず買い手がつきにくいともいえます。

  1. 災害リスクがある地域

  土砂災害や水害のリスクがあれば買い手がなかなか見つかりません。近年大規模な自然災害が多数発生していることから行政は災害地域の線引きを見直し新たに線引きをしました。そのために指定された場所がありますし、過去に自然災害が発生していれば売りにくい物件となります。買い手になる人も災害リスクに敏感になっているといえます。

  1. 再建築できないため

  建築基準法が改正されたために家の建て替えができない場合があります。例えば接道条件に抵触する場合です。セットバックといって道路部分を空き地にすれば再建築できることもありますが、セットバックする分、利用できる土地が小さくなるデメリットがあります。

 

買主が買いたくても住宅ローンが利用できない

  買主になる人の多くは住宅ローンを利用するため、住宅ローンが利用できなければ購入できません。

  1. 耐震基準を満たしていない

  1981年に建築基準法が改正されて耐震基準の見直しがされました。それ以前の建物は耐震基準に満たない可能性があり、融資を受けにくくなります。

  1. 築年数が経過しすぎている

  あまり古い建物だと金融機関が希望する担保評価が出ないため融資を受けられないことがあります。金融機関は融資に際して担保評価を重視しています。

 

国土交通省『令和2年度民間住宅ローンの実態に関する調査 結果報告書』

  https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001394336.pdf

 

空き家の建物に問題がある

  家は空き家にして誰も住んでいないと、どうしても傷んで荒れてきます。

  1. 荷物がそのままになっている

  相続した空き家で遺品がそのままにしてあるとか、引っ越し荷物が多くなるのでいらない荷物をそのまま置いてある状態ではないでしょうか。売却希望の空き家はなるべく荷物の少ない状態にしておくことがおすすめです。

  1. 朽廃して荒れている

  定期的に空き家に通い風を通したり、掃除をしたりとメンテナンスをこまめにしているでしょうか。瓦が落ちていたり外壁が崩れていたり、雨漏りがあったりすれば買い手は敬遠してしまいます。

  1. リフォーム費用が多くかかる

  古い建物だと現在とは生活様式などの違いから間取りが若年者の需要に合わなかったり、建具の不具合があったりするのでリフォームが必要なことが予想されます。古い建物だと建物の耐震性に不安があることもあります。買主は売買代金に加えてリフォーム費用を計算しますので、売り出す価格もリフォーム費用を考慮した金額でなければなかなか買い手が見つかりません。

 

土地が広すぎる

  土地が広ければゆったりとしているだけではなく、デメリットがあるので買い手が見つからない可能性があります。

1 土地が広ければ広い分だけ固定資産税が高くなります。

   あまり広いと敷地の一部であっても建物がある土地に適用される固定資産税の減額措置から外れてしまうこともあります。

2 除草や雪かきなどの管理の手間が増えてしまうために敬遠されてしまうこともあります。

3 土地が広い分、土地の売買代金が高くなり、購入できる人が少なくなってしまう場合もあります。

売却するための6つの対策

売却方法を変えてみる

  1. 売り方を変える

 (ア)売値を下げる

    「住宅ローンがまだ残っているので高く売りたい」「生活費の足しにしたい」「思い入れのある家だからこのような値段になるはずがない」と売主様には様々な思い入れがありますが、相場からかけ離れた価格だとどうしても買い手が見つかりません。

 (イ)別荘として売るまたは賃貸を検討する

     地方や田舎にあることを利点として、別荘として売りに出したり、賃貸物件として出したりすることも一つの方法です。

  1. 古い空き家の売買に慣れた会社に変える

 (ア)別荘として売却する時はそのような市場を専門に扱っている不動産会社に依頼することを考えましょう。

 (イ)古い空き家の場合には売買価格が高くないため、不動産業者の報酬(仲介手数料)も高くなりません。そのため利益が少ないので積極的に取り組まない会社もなかにはあります。不動産の売却を依頼するにあたって積極的に売却活動を行なってくれる会社なのかよく見極めましょう。

更地にする

  空き家が古すぎて売れないのなら、空き家を取り壊して更地にすることもひとつの方法です。買主が購入後にリフォームしたり解体したりする費用や手間がかからないので、買い手が見つかりやすくなります。

  更地にすれば家を建築するだけでなく、駐車場にしたりトランクルームを設置したりできるので購入後の用途が広がります。しかし更地にすると固定資産税が上がるデメリットがあります。その地域で、中古住宅の需要が高いのか、土地の需要が高いのか、不動産会社によく説明を聞いてから、判断するようにしましょう。

耐震基準の適合証明をとる

  新しい耐震基準を満たしていない可能性があるため住宅ローンが利用できないので買い手が見つからない場合、耐震基準適合証明を取得するのもひとつの方法です。耐震基準適合証明があることで、住宅ローンが利用できるほか、買主は取得時の不動産取得税や登録免許税などで優遇措置をうけることができるため買主のメリットは多くなります。しかし、費用をだして証明申請をしても証明書がとれないこともありますので、注意してください。

リフォームをする

  まずは空き家周辺のゴミを片付け、雑草を抜いてみましょう。それだけでガラッとお家の印象は変わります。

  空き家の掃除、傷んでいる場所の修繕、壁紙の張替、水回りの清掃や交換など自分でできることはないでしょうか。

  どうしても自分でできない場所の清掃やリフォームは専門業者に依頼しましょう。見た目がよくなり、機能が改善されれば買主候補が興味をもつ可能性が高まります。

  地方自治体が空き家のリフォーム資金を補助する制度がありますので検討してください。

しかし、リフォーム費用がそのまま売買代金に上乗せされて売却できるとはかぎりません。リフォームする前に不動産会社に相談することをおすすめします。

空き家バンクを利用する

  地方であれば空き家バンクを利用するのも一つの方法です。インターネット上に掲載されるので地方物件に興味をもつ人の目に止まります。不動産会社に売却依頼をすると基本的に3ヶ月ごとに仲介契約を更新する必要がありますが(専任媒介契約の場合)、空き家バンクに更新はありません。

不動産会社に買取を依頼する

  土地が広すぎて売れない場合、売主が土地を分筆したりすると多額の費用がかかります。

また建物をリフォームしたり解体したりするのも費用がかかります。

  不動産会社に直接買い取ってもらえばこのような費用を負担しないで、そのまま買い取ってもらうことが可能です。不動産会社はリフォーム費用や解体費用などの費用を考慮したうえで買取額を決定するため、市場価格より安くなる場合もありますが、買取が決まればすぐに現金化できるというメリットがあります。

 

 

  以上のように、売却の方法は様々あります。その物件の立地、状態、需要と供給のバランス、売主様の状況等に合わせて、より早期に売却できる方法を不動産会社と見つけていきましょう。

売却時は空にして引き渡すのが原則です①

片付けのタイミングと遺品整理で気をつけたいこと

 自宅や相続した親の実家を売却する時は、引き渡す前に家の中の家具や生活用品がまったくない状態にするのが基本です。自分にとってはどれだけ思い入れのある家具や生活用品であっても、買主には新しい生活があり価値観があるので、邪魔になるもの、不要なものとしかみてもらえません。

片付けのタイミング

 自宅を売却することになって、まず売却価格の査定を不動産会社に依頼します。売却価格をいくらにするか相談がまとまり、売却活動が始まると買主様が見つかるまでに約3ヶ月、売買契約をして引渡しまでに約1~3ヶ月程度、トントン拍子に売却がまとまれば早ければ約4ヶ月で引き渡すことになります。

 親の実家を売却する場合には、なおさら思い出もあり、なかなか片付けまで気持ちの整理がつかない方もいるでしょう。売却までのどのタイミングで片づけを進めていくのがよいかスケジュールを組んでおきましょう。

査定前

 売却価格の査定では基本的に不動産本体の価格を査定するので、家具や生活用品がそのままでも査定に影響しません。注意が必要なのは、価格査定の見積りのなかで、家具などの処分費を差し引いて減額してある場合です。引渡し前にきちんと売主様側で片付けるのであれば処分費はかからないため、処分費用分が査定額から減額されていないか確認してください。

 売却することが決まっているのであれば、片付けのスタートは早すぎることはないので査定前から少しずつ荷物を整理しておくことは無駄にはなりません。買主様が見つかったらご自身で引き取るものと、処分するものとを整理しておけば、査定のときに家の状態を確認しやすく、査定がスムーズにすすみます。

内覧前

 内覧は買主候補が実際に家を見にきて、入居後の生活をイメージする大切な機会です。

家の掃除や整理をし、家を広く清潔にして買主候補の人に良い印象をもってもらえるようにしましょう。買主候補は他の物件も見ていることが多いので、そちらとの比較対象になります。築年数や間取り、駅からの距離などの立地条件、周辺環境などは変えることができませんが、家の中の印象は変えることができます。ハウスクリーニングやリフォームなどをどの程度するのが良いか、不動産会社とよく相談しながら進めておきましょう。

 なお、ハウスクリーニングなどの費用は売買契約を行なった後にすることで、売却のための費用として認めてもらいやすくなり、不動産譲渡所得税の節税にもなります。買主候補にとって新しい生活がよりイメージしやすくなり、購入を決断するまでの時間も早くなります。

 内覧までに大切なものを運び出しておけば、売却を依頼した不動産会社に鍵を預けることができます。売主様は内覧の度に立ち会う必要がないため、買主候補と不動産会社の都合がよいタイミングで内覧出来ます。そのためより多くの買主候補が内覧する機会ができ、売却活動がスムーズに進み、早く売却できる可能性が高くなります。

引渡しの前

 いよいよ売買代金の授受が行なわれるのと交換に、家の引渡しを行ないます。具体的には、買主様が住宅ローンを組んでいる場合はその金融機関に売主様と買主様、仲介をした不動産会社や司法書士らが集まり必要な書類等をやりとりします。売主様は代金を受け取り、家の鍵を買主様に渡して引渡しは完了です。

 この時までに、家はからっぽの状態にしておかなければなりません。買主様の都合により、引渡し当日からすぐ内装の模様替えや入居する可能性もあります。代金決済が終われば所有者は買主様ですから、買主様がすぐ使える状態にしておかなければいけません。

遺品整理で気をつけたいこと

 親が亡くなり、その悲しみが癒えないまま遺品を片付けるのは、気持ちの整理もつかず体力も消耗してしまいます。

遺品整理の手順をきめましょう

  1. まず親が残した家の中に貴重品がないか探しましょう。

   売却のための遺品整理なら、親が取得した時の売買契約書等が重要になります。契約書や通帳などは大事なものをしまう引き出しなどを探せばまとめ

  てしまってあることが多いです。思わぬところから出てきて驚くのが現金です。本の中に挟み込んであったり、屋根裏に隠してあったりすることもある

  ので注意して探してください。

 

  1. どこから整理していくのかをきめましょう

   まず傷みやすい食品類を整理し、移動しやすいように廊下や玄関を片付けます。写真や思い出のある品物などは少し整理するのに時間がかかります

  ね。最後に家具など大きなものを片付けることになります。

 

  1. スケジュールや担当者を決める

   実家のある地域の生ごみや大型ごみの収集日を確認し、ゴミ出しの日程を決めていきます。地域によってごみの分別方法が異なりますので、その確認

  も必要です。

  兄弟姉妹や親族が手伝えるなら日程を合わせて担当者を決めておきます。

 

親族間のトラブルがおきないように注意しましょう

 相続人が複数いたり、親族がたくさんいたりする場合は遺留品の管理でトラブルにならないように注意が必要です。

 

  1. 貴重品はひとまとめにして代表者をきめ管理をしましょう。

   できれば貴重品を探したり、初めに手を付けたりするときには兄弟姉妹や親族が集まり共同して作業しましょう。後々のトラブルを回避することがで

  きます。貴重品の管理を誰がするのか、どのようなものがあったのかを記録しておきましょう。後から現金が見つかった場合には隠さずに関係者に知ら

  せることが大事です。

 

  1. スケジュールと担当者を決めるのに不公平にならないようにする。

   どうしても近くの人が実際に片付け作業などを担当することになり、遠くにいる人が作業を手伝えない場合、遺品整理業者を手配したり金融機関の相

  続手続きをしたりと、不公平感を抱くことがあります。皆で集まった時に、きちんと話し合い、メモをとったりして話し合いをしておきましょう。

 

 

 買主様とのトラブルを避けるためにも、お家を引き渡す際には、家の中を空にするのが原則です。今回は、片付けのタイミングと遺品整理で気をつけたいことをご紹介しました。

売却時は空にして引き渡すのが原則です② 
処分方法は?

遺品の整理は遺品整理の専門家に頼む方法もあります

 遺品整理を専門とする会社があり、民間資格ですが遺品整理士という資格もあります。亡くなった親の実家を売却する時に、遺品の整理に迷ったらゴミの処分等も相談できるので利用を考えてみましょう。遺品の整理に慣れているので、わかりにくいところにある貴重品の捜索にも有用です。ただし、ブームにのった悪質な業者もいますので、注意が必要です。

次のような業者であればひとまず信頼がおけます。

  • 遺品整理専門の業者
  • 料金体系がしっかりしている業者
  • 代表者の顔を公開している業者

 

総務省が遺品整理のサービスについての調査報告を公表していますので参考にしてください。

https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01hyouka02_200313000139953.html

 

自分で処分する

 業者に頼むと楽に処分できますが、当然その分、費用がかかります。できるだけ自分で処分する方法を考えてみましょう。

友人や知人にあげる

 ゴミの分別方法や収集方法は各自治体によってまちまちです。インターネットで公告している自治体が多いので予め確認しましょう。自治体の大型ごみ収集日に合わせて予約しチケットを買えば近くに搬出することで処分できます。

 大型ごみの収集センターに持ち込みできるものであれば、自治体によりますが、低額な料金や費用なしで処分できます。

家電リサイクル法に則った方法で処分

 エアコン、テレビ、冷蔵後、洗濯機は家電リサイクル法が適用されます。そのため正しい方法で処分してください。

  • 以前購入したお店や買い替えるお店で引き取ってもらう
  • 家電リサイクルのチケットを購入し指定の場所まで搬入する

 小型家電製品も小型家電リサイクル法にそって処分する必要がありますが、自治体によっては小型家電や付属品を無料で回収してくれる回収ボックスや回収拠点を設けています。

買い取ってくれる業者に持ち込む

 リサイクルショップや古本屋、古着屋、骨とう品店などに持ち込んで買い取ってもらいます。リサイクルショップに持ち込むときは予め値段がつかなくても引き取ってくれることを確認しておけば手間が省けます。

 家財道具や生活用品の種類に応じて専門の店に持ち込むことで高く買い取ってもらえます。特にブランドものや絵画、骨とう品は価値がわかってもらえる店に持ち込むことが大事です。ブランド品を出張買取してくれる会社もあります。インターネットで検索できますので利用を検討してください。

 なるべく高く買い取ってもらうために、きれいにしてから持ち込みましょう。まとめて持ち込む時は一覧表にしておけばお店も確認しやすくスムーズに売却ができます。ストーブや扇風機、冬服や夏服など季節によって需要があるものは、その季節に売る方がより高く売れます。

インターネットを利用する

 比較的新しく型番がわかるものや、荷造りして発送しやすいものはインターネットを利用して売ることもできます。メルカリやフリマアプリ、オークションサイトを利用することにより買い取り業者に持ち込むよりも高く売れる可能性があります。登録や発送の手間がかかりますし、絶対に売れるとは限らないので、そのあたりを考慮して利用するかを判断しましょう。

 地元に住んでいる人を対象にして、引き取りにきてもらうことを条件にタダであげたり、安く売ってあげたりすることもできます。

業者に頼む

 運搬が難しいものやタダでも処分できなかったものは業者に頼んで処分してもらいましょう。

引っ越し会社に依頼する

 引っ越し会社でも有料のオプションになることが多いですが、不用品の回収をしてくれることがあります。引っ越しの際に引っ越しと不用品の処分が同時にできれば手間がかからず便利です。

 

不用品処理業者へ依頼する

 不用品処理業者の収集費用は全てごみとして考えますので、トラック何台分とか立方メートル単位での計算になります。場所をとってしまう大きな家具やベッドのマットレスなどは別料金になることがあるので事前に確認しましょう。

収集の依頼にあたって次の事項を確認してください。

  • 実績があるか
  • 見積りがきちんとしているか
  • 一般廃棄物処理の許可を得ているか

 一般廃棄物処理業者について自治体がそれぞれのホームページで公表していることが多いので確認してみましょう。

不動産会社に頼む

 不動産会社に物件の買い取りをしてもらうときに、予め家財道具一式もそのままで買い取ってもらうように相談することができます。不動産会社が買い取る場合、再販売することが前提なので、市場価格よりも少し安く売却することにはなりますが、片付けの手間がかからないというのは、精神的にも、体力的にも売主様にとって非常にメリットになります。

旗竿地は売りづらい?上手な売却方法とは

旗竿地のデメリット

  旗竿地には次のようなデメリットがあるため、一般的に評価がさがります。

1.建築制限があるため

  (ア)建物を建てるには幅員4m以上の公道に接している部分が2m以上なければなりません。以前は2m以下でも建てることができたため、今ある建物

     を壊してしまうと建物が建てられない『再建築不可物件』となるおそれがあります。

  (イ)3階建以上の建物には「道または幅員4メートル以上の通路」に面する外壁面に非常用進入口を設けなければなりませんが、旗竿地ではできない

     ため3階建以上の建物は建てられません。

2.周囲を建物に囲まれていれば日照や風通しが悪い可能性があります。

3.防犯・防災の面で心配があります。

  (ア)道路から建物が離れているため消防車が近くまで来られないために消火活動に遅延や支障があるおそれがあります。

  (イ)道路の通行人から見えないので空き巣や不法侵入に気づくのが遅れるおそれがあります。

4.路地部分の幅員が2mだと駐車場として使えません。

  軽自動車で約1.5m。普通車で約1.8mの車幅があるので、幅が2mの路地だとドアを開けて乗り降りするのが難しく駐車場として使うことができませ

  ん。

5.引っ越しや荷物の運搬が大変

  道路から路地部分を通って荷物を運ぶのに車が入らなければ道路から人手で運ぶことになります。

6.取り壊しや建築コストが割高になる

  これも路地部分が狭いことから道路から建築資材を運ぶのが大変ですし、重機などの建設機械が入らないため取り壊しや建築コストが高くなりがちで

  す。

  また、工場で作ったユニットを組み立てるユニット工法のプレハブはユニットの搬入ができないために建てることができません。

7.有効面積が狭い

  路地部分には建物を建築できないので、利用方法が限定されます。

旗竿地のメリット

  デメリットがある反面、メリットもあります。

 

1.建物が道路から離れていて、周囲には家が建っていることが多いので車の騒音が気にならず、静かに生活できます。

2.また、大きな道路に面していないことから見知らぬ通行人の視線を気にする必要がなく、プライバシーが確保しやすいのも利点です。

3.家をでても路地があるため、小さい子供が道路に飛び出す心配がなく安全です。路地部分でも車が入って来ないので子供が安心して遊べます。

4.路地部分をガーデニングや家庭菜園にして花を飾ったり、エクステリアに凝ったりして玄関までのアプローチを楽しむ工夫ができます。

  疲れて帰ったときの一息入れる機会になりますし、お客様の気分も晴れやかになります。

5.家への侵入が路地部分だけなので接道部分に門扉を設置すればセキュリティーが守れて見栄えも良くなります。

上手な売却方法

  売却しにくいと言われている旗竿地ですが、売却方法を工夫することで有利に売却することも可能です。

 

1.価格の安さを前面に出して売り出す

  (ア)駅に近いとか、買い物に便利な場所だとか、人気エリアでも取得しやすい価格になります。

  (イ)近隣の同じエリアと比べて価格が安ければ購入希望者の目にとまりやすくなります。

2.隣地の所有者に購入を打診する

  一般に売却活動をする前に隣接地の所有者に購入を打診してみましょう。

  隣地を欲しいという方は多く、隣地の人にとって自分の土地が広くなり有効活用できるので、意外とスムーズに話が運ぶ場合があります。

3.セキュリティー対策を施しデメリットをなくし、メリットをアピールしましょう。

  (ア)防犯ガラスや防犯カメラを設置すると買主が安心します。

  (イ)入り口に門扉を設置すれば防犯に有効ですし、見栄えもよくなります。

4.不動会社に売却する

  (ア)不動産会社では資金力があるので、隣地との等価交換や購入して合筆分筆するなど区画を整理して売り出すなど、資金力を使った旗竿地の有効利

     用が可能です。

  (イ)不動産会社には旗竿地を有効利用するノウハウがあるので旗竿地だからとの理由で敬遠することがありません。

     例えば都心部だと車がいらないのでアパートとして利用できるためアパートのオーナーに売却することが可能です。

     建築して売却する業者だと垣根やフェンスで目隠しをして天井から採光する家を建てるなど、日照や風通し、周囲の目線といった旗竿地のデメリ

     ットを考慮した家を建てることができます。

 

旗竿地だからと言って、決して売れない訳ではありません。旗竿地のメリットをアピールし、積極的に販売活動してくれる不動産会社におまかせすることをおすすめします。