住民票の異動届に注意!

自宅を売却すると引越しをして住民票の異動届をするのが一般的です。

しかし、住民票の異動届をするタイミングによっては余分に費用がかかることがあるので注意してください。

この記事では、自宅を売却したときに引越しをして住民票の異動届をするときに気をつけておきたいことを解説します。

住民票の異動届

住所を移したときには移したときから14日以内に住民票の異動届をしなければなりません。

この手続きをしなければ5万円以下の過料[1]というペナルティがあります。

住民基本台帳法 | e-Gov法令検索

住民票異動の手続き

同一市区町村内の異動の場合は転居届を市区町村役場に提出すればよいのですが、他の市区町村への異動の場合は現在の住所地の市区町村役場に転出届を提出して転出証明書を取得し転居先の市区町村役場に転入届をすることになります。

不動産を売却するときには印鑑証明書が必要

自宅を売却して買主に所有権を移転する登記をするときに売主は印鑑証明書を提出しなければなりません。

印鑑証明書には住民登録をしてある住所が記載してあるので住民登録を変えてしまうと現在の住所では印鑑証明書が発行されなくなります。

そのため、住民票の異動届をするときに気をつけておきたいことがあります。

買い先行と売り先行

自宅を売却するときには、自宅を売却する前に新居を購入する「買い先行」と自宅を売却した後に新居を購入する「売り先行」とがあります。

売り先行の場合には住所は売却する自宅の住所になっているので問題ありませんが、買い先行のときには住民票の異動届をするときに気をつけてください。

登記記録の住所と印鑑証明書の住所が同じでなければ売却できない

不動産の登記記録には所有者の情報として住所や氏名が記録されています。

所有者が知らないあいだに他人に所有権が移転してなくなってしまうとたいへんな損害になるので、このような不測の事態を防ぐために不動産の所有権移転登記には所有者の印鑑証明書が必要です。

提出された印鑑証明書の住所氏名と登記記録の住所氏名を照会して申請された登記をしてもよいのかを登記所が判断します。

このため登記記録から住所が変わっているときには登記記録に記録されている住所を印鑑証明書と合わせる必要があります。

登記記録の住所変更には費用がかかる

登記記録に記録されている住所を変更するときには土地や建物一つに対して1,000円の登録免許税を納めなければなりません。

土地建物一つずつなら2,000円になります。

この住所変更の登記を司法書士に依頼すると1万円~2万円程度の手数料がかかります。

登記記録の確認をしておく

現在自宅の登記記録にはどこの住所で記録されているか登記記録を取り寄せて確認しておきましょう。

購入するときに自宅の住所にしてあることが多いのですが、なかには購入前に住んでいた住所のままになっていることがあります。

そのような場合は、登記記録に記録されている住所から現在の住所まで履歴がわかる連続した住民票[2]が必要になります。

原則的には市区町村役場では引っ越した後5年間しか記録を保存していないので、市区町村をまたいで他の市区町村に転居したときに変更した証明書を用意するのが難しいことがあります。

そのため、できるだけ早く自宅の登記記録を確認して変更事項が証明できる住民票を取得しておきましょう。

住民票の異動届を提出する前に印鑑証明書を取得しておく

以上のことから登記記録の住所が売却する自宅の住所で記録されているときには現在の住所の記載がある印鑑証明書を取得しておけば余分な費用がかからないことがおわかりいただけたことでしょう。

住所が違えば変更した後でもよい

登記記録の住所が自宅を購入する前の住所になっていれば既に印鑑証明書の住所と記録が違っているので、新しい住所で印鑑証明書を取得してもかまいません。

いずれにしても登記記録の住所変更登記が必要だからです。

ただし、登記記録から変更後の住所まで連続した履歴がわかる住民票が必要になり、取得することが難しい場合があるのは先の解説の通りです。

早めの確認をおすすめします。

印鑑証明書の有効期間は3か月

登記に利用する印鑑証明書の有効期間は3か月となっています。

そのため、住民登録の異動前に印鑑証明書を取得しても3か月たってしまえばその印鑑証明書は利用できなくなります。

その場合には新しい住所で印鑑証明書を再度取得しなければなりません。

売却する自宅の決済の流れを確認しておきましょう。

引越し前の印鑑証明書では決済できないこともある

住民登録の変更前に印鑑証明書を取得して3か月以内でも決済できないことがあります。

所有権移転登記を依頼する司法書士によっては新しい住所の印鑑証明書を要求されることがあるからです。

厳密にいえば引っ越しているので提出された印鑑証明書は古い住所のものなので実際とは異なるわけです。

そのことを理由にして以前の住所の印鑑証明書は利用できないといわれてしまうと決済ができなくなってしまいます。

決済のときにあわてないように、売却を依頼する不動産会社に取得する印鑑証明書の住所を事前に確認しておきましょう。

 

[1] 過料とは行政罰の一種で金銭的な負担を課すことで行政上の秩序を維持しようとするものです。刑罰である罰金とは異なり前科にはなりません。

[2] 正確には「住民票」は市区町村役場に記録されている住民基本台帳のことをいい、市区町村役場が発行した証明書は「住民票の写し」といいます。住民票の写しは現在の住民票、改正原住民票、除票など状況によって呼び方が変わります。

ライフライン解約のタイミングは?

住んでいた家を売却しようとするとき、引っ越してしまえばいらない費用をかけたくないので、電気や水道を解約したいと思うものです。

しかし、電気や水道を早く解約してしまうと売却活動に支障がでてしまうこともあります。

この記事では、不動産を売却するときの電気や水道などのライフラインを解約するタイミングや解約する際に気をつけておきたいことを解説します。

主なライフライン

電気や水道などのライフラインは売却した不動産を引き渡すまでには解約をしておかなければなりません。

しかし、売却活動では内覧として購入希望者が物件を確認するために訪問することがあります。

そのようなときに、購入希望者は水回りや床暖房などの設備がきちんと動作するかを確認したいものですが、電気や水道が解約してあればそのようなことができません。

また、内覧前や引渡し前には、少しでもきれいな状態にしておきたいものですが、電気や水道が解約してあると掃除ができなくなってしまいます。

電気

内覧は雨が降って暗い時や夜間にされることもあるので照明器具も残して電気は解約しないまま、引渡し直前に解約することをおすすめします。

部屋が明るいほうが内覧するときに雰囲気がよく、良い印象を与えるでしょう。

照明器具は内覧に支障がない程度でよいので、シーリングライトなど最小限のものを残しておけば大丈夫です。

また、掃除をするときにも電気は必要です。

夏や冬であればエアコンも動作するようにしてあると快適に内覧できるので内覧の印象がよくなります。

売却物件から引っ越したために普段の電気代がもったいなく感じられますが、そのようなときは契約するアンペアを変更すれば節約になります。

照明だけなら10A、エアコンを動作するようにしている場合は20Aで契約しておけば基本料金が節約できます。

水道

引っ越した後に空き家にしておくと埃がたまりやすくなります。

売却活動中に購入希望者が内覧に訪問したときに良い印象をもってもらうためには掃除をしておいたほうがよいので、水道は解約しないで残しておきましょう。

また、水道を長く使わずにいると下水の匂いが上ってくることがあります。

そのためにも水道は残しておく方が無難です。

ガス

ガスの場合は引っ越してしまえば利用することはあまりないので引越直後に解約しても問題ありません。

ガス器具は都市ガスとプロパンガスでは共用できないので、引っ越し先で利用しないときには付帯設備として残しておくことも可能です。

購入希望者が決まっていれば相談してみましょう。

ライフラインを解約する方法

ライフラインとの契約先に解約前の1週間以上前に予約しておくとスムーズにすすみます。

特に引越シーズンだと相手先企業の日程がとれないことがあるので引渡しに間に合わないことが考えられるため、早めに予約をしておいた方がよいでしょう。

解約・精算するときに立ち合いが必要なことがあるので、予約をするときに立ち合いが必要かを確認しておくと確実です。

解約申し込みは企業に直接電話をするかインターネット上で解約申し込みをすることになります。

マンションのエントランスがオートロックになっていて検針のためにマンションの中に入らなければならないことがあります。

そのようなときには本人の立ち合いが必要なのか、管理人などで対応可能なのかを確認しておきましょう。

電気

電気を解約するときには基本的に立ち合いは不要です。

電気は引渡し直前まで解約しないでおいた方がよいので照明器具も残したままのことが多いですが、そのまま置いていった方がよいのか購入した方に確認しておくと安心です。

水道

水道料金は通常2か月単位での検針がされていますが、引越などの場合は前回の検針日から解約までの日割り計算で水道料金を請求されます。

水道の解約にも基本的に立ち合いは不要です。

ガス

ガスは使い始めるときには安全確認のために立ち合いを求められますが、解約の際には基本的に立ち合いは不要です。

火災にあった家は売却できる?

以前火災があった家を売却しようとするとき「問題なく売却できるだろうか」「安くなってしまうだろうか」と心配になる方もいらっしゃるでしょう。

この記事では、火災にあった家の売却で気をつけることや売却方法について解説します。

火災の状況によっては「瑕疵」になる

一言で「火事」「火災」といっても程度の差があります。

料理中に手元がくるってキッチンの天井を焦がした程度から家が完全に焼け落ちてしまうような火事もありますし、中には人が亡くなる不幸があるようなこともあるでしょう。

天井を焦がしてしまった程度であればきちんとリフォームしておけば問題なく売却できますが、人が亡くなってしまったような火事だと「瑕疵がある物件」となるため「告知義務」があり、売却価格も下がってしまうことが多くなります。

このように人が亡くなっていないボヤ程度の火事では告知義務はないといえますが、売却を依頼する不動産会社には実情を説明しておくことをおすすめします。

何をもって「瑕疵」と考えるかは人によって判断基準が異なり、ボヤ程度であっても建物に何らかのダメージが与えられているおそれもあるため、後日の紛争を防ぐために専門家の意見を聞いたうえで売却をすすめた方がよいからです。

瑕疵とはキズや欠陥のこと

「瑕疵」とはキズや欠陥のことを法律的にこのようによんでいます。

瑕疵には以下の種類があるといわれています。

  1. 心理的瑕疵

火災、自殺、事故死、殺人があった場合など

近隣施設で心理的に嫌悪感を抱きやすい施設がある場合は別に「環境的瑕疵」とよぶことがあります。

環境的瑕疵

火葬場・葬儀場・暴力団組事務所、騒音・異臭を発生させる工場があるなど

  1. 物理的瑕疵

雨漏り、シロアリ被害、土壌汚染など

  1. 法律的瑕疵

建築基準法、消防法、都市計画法などの法律・法令に違反している場合など

告知義務

不動産の購入者に不動産の状況を知ってもらったうえで納得して購入してもらうために購入者の判断基準となる事項をあらかじめ告知しなければなりません。

告知すべき事項を告知せずに売却すれば後日になって不要な紛争を招いてしまうことになってしまいます。

国道交通省が2021年10月に「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を公表しているので告知義務について参考になるでしょう。

報道発表資料:「宅地建物取引業者による人の死の告知に関するガイドライン」を策定しました

事故物件の告知については法律上の明確な基準がないため不動産取引において判断が難しく、室内での自然死や事故死についても、何年前まで告知しなければならないのか、死亡原因によって告知義務に差があるのか、判然とせず同じようなケースでも一方は告知され一方は告知されない、ということもありトラブルを招くこともありました。

そこでこのガイドラインによって一般的な判断基準が示されたものです。

人の死にかかわることについて告知義務がないとされたものは以下のようになっています。

  • 自然死
  • 日常生活の中での不慮の死(転倒事故、誤嚥など)

  *特殊清掃がされたものを除く

このことから次のような事例では告知義務があるといえるでしょう。

  • 他殺、自殺
  • 事故死(日常生活における不慮の事故といえないもの)
  • 特殊清掃が行われた自然死、不慮の事故
  • その他原因不明の死

事故物件の売却価格相場は?

事故物件の価格相場とハッキリいえる基準はありません。

一般の方が嫌悪感をどの程度抱くのかが一つの判断基準になります。

たとえば、下記のような傾向があるといわれています。

  • 自然死で特殊清掃を行った場合:20%~30%
  • 自殺:30%~50%
  • 殺人:50%

嫌悪感を上回るメリットがあれば高く売却できる場合もある

火災があったことによって事故物件といわれるものであっても火災は「心理的瑕疵」と呼ばれているようにヒトの心理の影響が強くはたらきます。

判断基準は人によってそれぞれ異なるものなので、火災があってもそれほど気にしない方もいます。

また、駅の近くや商業施設、学校や病院など周辺施設に恵まれているような立地であれば購入意欲が高まることで心理的な影響は少なく、価格を下げずに売却できる可能性が高くなるといえるでしょう。

火災があった物件の売却方法

ここでは、火災があった物件の売却方法の工夫と売却の依頼先について解説します。

なお、売却を検討するときには複数の不動産会社に査定を依頼してもっとも信頼できる不動産会社に仲介を依頼することは一般の売却と同様です。

  1. ハウスクリーニングをする
  2. 一定期間をおいて売り出す
  3. 更地にする
  4. 不動産会社に売却依頼する
  5. 事故物件を専門に扱う不動産会社に売却依頼する
  6. 直接買取を依頼する

ハウスクリーニングをする

ハウスクリーニングやリフォームをしてできるだけきれいにし、火災のあとが感じられないようにしておきましょう。

購入希望者が訪問してうける第一印象はとても大事になります。

一定期間をおいて売り出す

火災が発生した直後は人々の記憶に残っていることが多く抵抗を感じることがあるでしょう。

心理的な要因が大きいため、記憶が薄れるまで一定期間をおいた方がよいので可能であれば数年間あけて売却活動をするのが得策です。

ただし、時間がたっても告知義務がなくなるとはいえないため、売却を依頼する不動産会社に相談しながらすすめてください。

更地にする

火災により痛ましい事故がかさなり人々の記憶に残ってしまうような状況であれば建物を取り壊して更地にするのも一つの方法です。

建物がなくなれば心理的な要因は薄まるでしょう。

ただし、建物を取り壊すには解体費用が必要になり、建物がなくなると固定資産税などが高くなることがあります。

建物を取り壊してしまう前に売却活動について不動産会社に相談しましょう。

不動産会社に売却依頼する

火災があった物件でも通常通り売却活動は可能なので、一般の不動産と同じように不動産会社に売却を相談しましょう。

火災の状況によっては売却が難しいと断られることがありますが、その場合にはその他の方法を検討しましょう。

事故物件を専門に扱う不動産会社に売却依頼する

不動産会社には事故物件を専門に扱う会社もあります。

そのような会社では心理的瑕疵を気にしない顧客を抱えているので売却仲介に応じてもらいやすくなるでしょう。

直接買取を依頼する

不動産会社では一般の方から購入希望者を募集する仲介業務のほかに、その不動産会社で直接不動産を買取り、リフォームなどをして再販売を行っている会社があります。

不動産会社が直接買取る場合には、

  • 一般の購入者よりも不動産の瑕疵に対しての責任が軽減される
  • 購入希望者を探す手間がなくなり早く売却できる
  • 仲介料が不要になる

などのメリットがあります。

ただし、直接買取の場合は再販売による利益を見込んでの買取になるため市場価格よりも安くなります。十分に検討して依頼しましょう。