
秋風が澄み渡り、日本の山々が一年で最も華やぐ季節、錦秋(きんしゅう)が訪れます。東北南部を構成する茨城県・宮城県・福島県は、山々や渓谷、歴史的な名所が鮮やかな紅葉に染まる、まさに錦秋(きんしゅう)の絶景エリアとなります。このコラムでは、各県の主要な紅葉スポットを、例年の見頃、アクセス情報、そしてその魅力を交えながら、それぞれの県が持つ自然と歴史が織りなす、魅力的な紅葉スポットをご紹介します。
茨城県:滝と渓谷が織りなすダイナミックな紅葉
茨城県の紅葉は、特に北部の奥久慈エリアに集中し、滝や渓谷といったダイナミックな自然の中で鮮やかな色彩を見せてくれます。平野部では、歴史的な名所や公園の落ち着いた紅葉が楽しめます。

1.袋田の滝(ふくろだのたき)
日本三名瀑の一つに数えられる雄大な滝と、それを囲む山々の紅葉が見事なコントラストを描きます。特に滝見台からの眺めは圧巻で、水しぶきと赤や黄色に染まった木々の競演は感動的です。
・例年の見頃: 11月上旬~11月中旬
・紅葉の特徴: 落差120m、幅73mの「四度の滝」と呼ばれる滝を、ブナやカエデなどが赤や黄色に染まりながら囲みます。滝見台からは、水しぶきと紅葉の競演という力強い自然美を堪能できます。
・アクセス(公共交通): JR水郡線「袋田駅」からバスで約10分、または徒歩約40分。
・アクセス(車): 常磐自動車道「那珂IC」から車で約50分。周辺には有料駐車場が複数あります(紅葉時期は大変混雑するため、早朝の到着が推奨されます)。
2.花貫渓谷(はなぬきけいこく)
「汐見滝吊り橋」からの眺めが有名です。吊り橋を渡りながら、眼下に広がる紅葉に包まれた渓谷を眺める体験は格別です。川のせせらぎと共に紅葉狩りを楽しめます。
・例年の見頃: 11月中旬~11月下旬
・紅葉の特徴: 花貫川の清流沿いに広がる渓谷で、特に汐見滝吊り橋から見下ろす紅葉が人気です。紅葉に覆われた木々が橋を覆い、まるで紅葉のトンネルを歩いているような感覚を味わえます。
・アクセス(公共交通): JR常磐線「高萩駅」から車で約25分(公共交通機関でのアクセスはやや不便なため、タクシーの利用が現実的です)。
・アクセス(車): 常磐自動車道「高萩IC」から車で約20分。紅葉まつり期間中は駐車場が有料化され、混雑します。
3.偕楽園・もみじ谷(かいらくえん)
日本三名園の一つである偕楽園に隣接する「もみじ谷」は、深紅に染まったモミジが静かに鑑賞できます。歴史的景観の中で秋の訪れを感じられるスポットです。
・例年の見頃: 11月上旬~11月下旬(ライトアップは例年11月中旬から下旬)
・紅葉の特徴: 広大な敷地内にあるもみじ谷は、その名の通りモミジやカエデが多く、深紅に染まります。見頃の時期には夜間ライトアップも行われ、幻想的な紅葉の姿が楽しめます。
・アクセス(公共交通): JR常磐線「水戸駅」からバスで約20分、「偕楽園」または「歴史館・偕楽園入口」下車、徒歩7分圏内。JR水戸駅からバスで「桜山」で下車すると、もみじ谷に直接アクセス可能です。
・アクセス(車): 常磐自動車道「水戸IC」から車で約20分。駐車場は本園と拡張部に有料・無料のものがあります。
宮城県:V字渓谷と伊達文化が彩る紅葉
宮城県は、豪快なV字渓谷の景観と、仙台や松島といった歴史的・文化的な街並みが融合し、多彩な紅葉の表情を見せてくれます。変化に富んだ紅葉スポットが魅力です。

1.松島(まつしま)
日本三景の一つに数えられる松島は、松島湾に浮かぶ約260の島々と、伊達家ゆかりの歴史的な寺社仏閣が調和した景勝地です。紅葉シーズンには、国の重要文化財である円通院や瑞巌寺といった古刹の庭園が赤や黄色に染まり、風光明媚な湾の景色に彩りを添えます。
・例年の見頃:10月下旬~11月下旬
・紅葉の特徴:モミジやカエデなどが中心となり、古都の情緒あふれる庭園を鮮やかに彩ります。最大の魅力は、歴史的建造物と紅葉の組み合わせ、そして夜間のライトアップです。特に円通院の「紅葉ライトアップ」は、幽玄で幻想的な美しさで知られ、石庭の苔と紅葉のコントラストは必見です。また、松島四大観(扇谷、富山など)と呼ばれる展望地からは、多島美と紅葉の雄大な眺めを俯瞰できます。
・アクセス(公共交通):JR仙石線 松島海岸駅下車。主要な紅葉スポット(円通院、瑞巌寺など)は、松島海岸駅から徒歩圏内(円通院まで徒歩約7~8分)に集中しており、電車でのアクセスが便利です。
・アクセス(車):三陸自動車道 松島海岸ICから国道45号線経由で約5分(円通院・松島海岸周辺)。周辺には有料駐車場が多数ありますが、紅葉シーズンは大変混雑し、渋滞も予想されるため、公共交通機関の利用が推奨されます。
2.鳴子峡(なるこきょう)
宮城県で最も人気のある紅葉名所の一つ。大谷川が削り出したV字峡谷の断崖絶壁が、一斉に赤や黄色に色づく様はまさに絶景です。展望台からの眺めはもちろん、散策路を歩けば紅葉に包まれた渓谷美を間近に感じられます。東北地方でも指折りの人気を誇ります。
・例年の見頃: 10月下旬~11月上旬
・紅葉の特徴: 大谷川の浸食によってできた深さ100mのV字峡谷の断崖絶壁が、ブナやカエデ、ナラなどの広葉樹で一斉に赤や黄色に染まる壮大なスケールです。鳴子峡レストハウスの展望台からの眺めは、眼下に大深沢橋を見下ろす絶景ビューポイントです。
・アクセス(公共交通): JR陸羽東線「鳴子温泉駅」から車で約5分(紅葉シーズンには臨時バスやタクシーの利用が便利です)。
・アクセス(車): 東北自動車道「古川IC」から車で約45分。鳴子峡レストハウス周辺に駐車場がありますが、紅葉時期は早朝から満車になることが非常に多いため注意が必要です。
3.秋保大滝(あきうおおたき)
国の名勝にも指定されている大滝と、周囲の山々の紅葉が見事な調和を見せます。豪快な瀑布と周囲の紅葉が美しいコントラストをなします。名取川の上流にあり、特に滝見台からの眺めは迫力満点。マイナスイオンを浴びながらの紅葉狩りが楽しめます。
・例年の見頃: 10月中旬~11月上旬
・紅葉の特徴: 落差55m、幅6mという豪快な滝と、周囲のモミジ、カエデ、ナラなどの紅葉が織りなす景色は、迫力と美しさを兼ね備えています。滝見台からの全景も素晴らしいですが、遊歩道を降りて滝壺近くまで行けば、より迫力ある紅葉とのコラボレーションが楽しめます。
・アクセス(公共交通): JR仙台駅から宮城交通バスで約1時間20分(土・休日のみ運行)。平日はJR仙山線「愛子駅」から仙台市営バスで約23分、「秋保大滝」下車すぐ。
・アクセス(車): 東北自動車道「仙台南IC」から車で約30分。駐車場は無料で約200台分あります。
福島県:壮大な山岳景観と秘境の紅葉
福島県は、標高の高い山岳地帯から里山まで、広範囲にわたって紅葉が楽しめるのが特徴です。特に、会津地方の秘境感あふれる紅葉は、旅情を掻き立てます。

1. 裏磐梯・五色沼(うらばんだい・ごしきぬま)
五色沼湖沼群(ごしきぬまこしょうぐん)は、明治21年(1888年)の磐梯山噴火によって形成された、数十の湖沼の総称です。特に有名な「五色沼自然探勝路」では、毘沙門沼、赤沼、みどろ沼など、エメラルドグリーンやコバルトブルー、茶褐色など、沼によって色が異なる神秘的な景観を楽しめます。秋は、その幻想的な湖面と周囲の紅葉のコントラストが、訪れる人々を魅了します。
・例年の見頃:10月中旬~11月上旬(五色沼湖沼群周辺:標高約800m付近)
・紅葉の特徴:カラマツ、モミジ、ナナカマドなどが色づきます。最大の特徴は、コバルトブルーの沼と、赤や黄色に染まった木々の鮮烈なコントラストです。探勝路は高低差が少なく整備されているため、初心者でもトレッキングを楽しみながら紅葉狩りができます(全長約3.6km、徒歩約1時間30分)。湖面に映り込む紅葉も絶景です。
・アクセス(公共交通):JR磐越西線 猪苗代駅より、磐梯東都バス(裏磐梯高原駅行きなど)で約25~30分。「五色沼入口」または「裏磐梯高原駅」バス停下車。
・アクセス(車):磐越自動車道 猪苗代磐梯高原ICから国道459号経由で約25分。裏磐梯ビジターセンターや五色沼入口観光プラザに駐車場があります。
2.磐梯吾妻スカイライン・浄土平(ばんだいあづまスカイライン・じょうどだいら)
「空を走る道」とも称される山岳観光道路で、「吾妻八景」などの絶景ポイントが点在します。最高標高地点の浄土平周辺から色づきが始まり、山肌一面が錦に染まる壮大なパノラマ紅葉を楽しめるドライブの聖地です。
・例年の見頃: 9月下旬(浄土平周辺)~10月下旬(土湯温泉周辺)
・紅葉の特徴: 最高標高1,622mの浄土平周辺から色づきが始まり、山頂付近では9月下旬という早い時期に、ハイマツやナナカマドなどの草木が赤・黄・茶色に染まり、錦絵のような壮大な景色が展開します。天狗の庭、つばくろ谷(不動沢橋からの眺め)など、「吾妻八景」と呼ばれる絶景ポイントが連続します。
・アクセス(車): 東北自動車道「福島西IC」から高湯温泉方面へ車で約1時間。または「猪苗代磐梯高原IC」から土湯峠方面へ。
・特記事項: 磐梯吾妻スカイラインは11月中旬から翌年4月上旬まで冬季閉鎖となります。また、凍結の恐れがある時期は夜間通行止め(17時~翌朝8時)となるため、時間には十分な注意が必要です。
3.第一只見川橋梁ビューポイント(だいいちただみがわきょうりょう)
秘境・奥会津のシンボルとして、鉄道ファンだけでなく多くの観光客を魅了する絶景スポットです。只見川の深い緑と紅葉に彩られた山々、そして鉄橋を渡る只見線の列車が織りなす風景は、まるで絵画のようです。
・例年の見頃: 10月下旬~11月上旬
・紅葉の特徴: 只見川の深い谷をまたぐ鉄橋を、ディーゼルカーの只見線が渡る姿と、周囲の山々が織りなす紅葉が、まるで一枚の絵画のような美しさです。特に川霧が立ち込める早朝の情景は、幻想的で格別の美しさです。
・アクセス(公共交通): JR只見線「会津宮下駅」から車で約10分。
・アクセス(車): 磐越自動車道「会津坂下IC」から車で約1時間。国道252号沿いの道の駅「尾瀬街道みしま宿」に駐車場があり、そこから徒歩でビューポイントへ向かいます。
4.大内宿(おおうちじゅく)
江戸時代の宿場町の面影をそのまま残す茅葺き屋根の街並みと、背景の山々の紅葉が郷愁を誘います。歴史的な街並みと自然の美しさが調和した、フォトジェニックな紅葉スポットです。
・例年の見頃: 10月下旬~11月上旬
・紅葉の特徴: 街道沿いに並ぶ茅葺き屋根の古民家と、その背後にそびえる山々が赤や黄に色づく様子は、日本の原風景そのものです。タイムスリップしたかのような街並みの中で、落ち着いた紅葉狩りが楽しめます。
・アクセス(公共交通): 会津鉄道「湯野上温泉駅」からタクシーまたは猿游号(周遊バス)で約10~20分。
・アクセス(車): 東北自動車道「白河IC」から国道289号経由で約1時間20分。または磐越自動車道「会津若松IC」から約1時間。周辺に有料駐車場があります。
紅葉の旅を最高の体験にするために

茨城・宮城・福島の紅葉スポットは、山間部や渓谷が多く、朝晩の冷え込みが厳しくなります。以下のポイントを押さえて、快適で安全な紅葉狩りを楽しんでください。
1.服装の工夫: 標高が高い場所では特に寒暖差が激しいため、脱ぎ着しやすい防寒着(フリースやダウンなど)を必ず準備し、動きやすい服装にしましょう。また、渓谷や遊歩道を歩く際は、滑りにくい歩きやすい靴が必須です。
2.最新情報の確認: 紅葉の見頃は、その年の気象条件により大きく変動します。お出かけ前に、公式サイトや観光協会の最新の紅葉情報を必ずチェックしましょう。
3.交通手段と混雑対策: 鳴子峡や袋田の滝など人気スポットは、週末や見頃の時期に大渋滞や駐車場満車になることが予想されます。可能な限り平日の訪問を検討するか、早朝など混雑する時間帯を避けるのが賢明です。磐梯吾妻スカイラインのように、冬期閉鎖や夜間通行止めがある道路もありますので、車の利用者は特に注意が必要です。東北南部の豊かな自然と歴史が織りなす、この秋だけの特別な絶景。
茨城・宮城・福島を巡り、日本の豊かな自然が魅せる感動的な紅葉の旅に出かけてみませんか。
ぜひ最寄りのイエステーションへご相談ください



