
住宅ローン返済中のご自宅から何らかの事情で離れる必要があり、「賃貸転用」という選択肢を検討している方がいらっしゃると思います。
住宅ローン返済中に無断で賃貸転用転用することは住宅ローン規約違反ですが、SNSなどで「住宅ローン返済中の自宅を無断で賃貸転用しているけど、黙認されている」という情報も見かけますよね。
今回は、ご自宅の住み替え・不動産管理などの専門家『イエステーション』が、住宅ローン返済中に賃貸転用を検討する際に、知っておいていただきたい情報をわかりやすく解説します。
ご自身にとって最適な選択をして、現在のご自宅・新しいご自宅に関する手続きをスムーズに進めるために、ぜひ最後までごらんください。
住宅ローン返済中のご自宅の賃貸転用や売却についてお悩みの方は、イエステーションへお問い合わせください。
ご希望や資金状況を伺い、最適な選択のサポートをいたします。
住宅ローン返済中の賃貸転用は黙認orばれて一括返済どちら

住宅ローン返済中の賃貸転用について判断する第一の基準は「住宅ローンの規約」、次の基準は「やむを得ない事情がある場合の金融機関の対応」です。
あいまいな情報を信じてトラブルが起きることのないよう、確認していただきたい4つのポイントを紹介します。
- 基本の取り扱い|住宅ローンは居住が前提なので無断での賃貸転用はNG
- 住宅ローン返済中の賃貸転用を相談できる金融機関もある
- 「住宅ローン返済中の賃貸転用が黙認される」という口コミは信用しない
- 賃貸転用がばれて一括返済となるのは投資目的の住宅ローン利用など悪質なケース
基本の取り扱い|住宅ローンは居住が前提なので無断での賃貸転用はNG
住宅ローン規約には、「住宅ローンの資金使途」「資金使途を変更する場合の対応」が明記されています。
住宅ローン返済中の賃貸転用を検討する場合には、はじめに住宅ローン規約を確認しましょう。
(例)複数の大手都市銀行の住宅ローン契約を参考に、一般的な内容を例として紹介します。
項目 | 内容 |
---|---|
住宅ローンの資金使途 | 住宅ローン契約者が居住する住宅の新築・増改築など |
資金使徒を変更する場合の対応 | ・金融機関の承諾なく資金使途を変更しない ・資金使途の変更時には、銀行へ直ちに報告が必要 ・資金使途の変更を希望する場合は金融機関に届け出が必要 ・資金使途を変更する場合は変更の承諾を得ると同時に、銀行の指示に従う |
上記から、金融機関は一般的に「賃貸転用のような資金使途の変更を認めない」とはしていないものの、資金使途を変更する場合は「報告・承諾・指示に従う」ことが必要だということがわかります。
住宅ローン返済中に賃貸転用ができるケースもある

住宅ローン規約を確認したら、次に利用している金融機関が「住宅ローン返済中の賃貸転用に関する情報を公表しているか」を確認することを、おすすめします。
例として、フラット35は以下の情報を公表しています。
- 住宅ローン返済中の住宅に戻ることを前提に、賃貸転用が可能
- 金融機関の窓口で住所変更の手続が必要
- 投資用物件を購入するためにフラット35を利用した場合、住宅ローン残額の一括返済を求めることがある
〈参考〉住宅金融支援機構「フラット35サイト」:Q 返済中に融資住宅を賃貸にしてもいいですか。
「住宅ローン返済中の賃貸転用が黙認される」という口コミは信用しない
SNSなどで以下のような情報を見かけますが、情報元・事例数などが不明で責任の所在がない情報ですので、信用しないことをおすすめします。
【SNSなどで見かける口コミの例】
- 「住宅ローン返済を滞納していなければ、賃貸転用がばれても黙認される」
- 「金融機関で賃貸転用を相談したら「聞かなかったことにする」と言われた」
- 「賃貸転用してもばれるケースはほとんどなく、黙認されているのと一緒」 など
こちらで、住宅ローン返済中でも赤字が出ないようにご自宅を売却した事例を確認できます。
〈関連ページ〉住宅ローンが残っていましたが、残債が消える金額で売却できました。
賃貸転用がばれて一括返済となるのは投資目的の住宅ローン利用など悪質なケース
金融機関は、はじめから居住するつもりがなく、投資物件購入のために住宅ローンを不正利用する契約者に対して、厳しい対応をすることを住宅ローン規約などに明記しています。
【例:住宅金融支援機構の対応】
- 住宅ローン残高の一括返済請求
- 警察への通報
- 損害賠償請求 など
〈参考〉住宅金融支援機構「フラット35サイト」:【フラット35】の不正利用に巻き込まれないために
紹介してきた4つのポイントから、やむを得ない事情があって住宅ローン返済中のご自宅から離れる必要がある場合には、無断での賃貸転用という選択をすることはおすすめできません。
適切な選択肢が複数あるため、次に紹介します。
住宅ローン返済中に転勤・返済困難などで賃貸転用をしたい場合の選択肢・手続き

住宅ローンの返済期間は長いため、返済期間中にご自身の状況が変わることは珍しくありません。
状況に応じた適切な選択肢をわかりやすく解説するので、参考にしていただけると幸いです。
- 転勤・介護など|一時的に賃貸転用をして住宅ローン返済中の住宅に戻りたい
- 結婚・離婚など|住宅ローン返済中の住宅を今後は賃貸物件として所有する
- 返済困難|住み続けたいけど住宅ローン返済が難しいので悩んでいる
転勤・介護など|一時的に賃貸転用をして住宅ローン返済中の住宅に戻りたい
「転勤で数年間違う土地に移動する。住宅ローン返済が負担だし、空き家にすると住宅が傷むので、賃貸転用したい」とお考えの方がいらっしゃると思います。
この場合には、一時的な賃貸転用が承諾される可能性があるため、早い段階で金融機関に相談しましょう。
金融機関に相談して承諾を得たうえで、手続きの流れも相談することをおすすめします。
ちなみに、賃貸転用をしている期間は住宅ローン減税を活用できませんが、一定の手続きをすることで、ご自宅に戻った翌年から住宅ローン減税の活用を再開できます。
【一時的に賃貸転用をする場合の住宅ローン減税の手続き】
転居する日までに、以下の書類を賃貸転用をするご自宅の地域を管轄する税務署へ提出
- 転任の命令等により居住しないこととなる旨の届出書(税務署の指定様式)
- 住宅ローン減税の残期間分の住宅借入金等特別控除申告書(住宅ローン減税を活用し始めた年に、税務署から郵送された書類)
↓
ご自宅に戻ったら、翌年3月15日までに住宅ローン減税を受けるための確定申告
↓
ご自宅に戻った年から住宅ローン減税の活用を再開できる
〈参考〉国税庁ホームページ『No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等』
結婚・離婚など|住宅ローン返済中の住宅を今後は賃貸物件として所有する

「家族構成が変化して住み続けることが難しくなったけど、好立地の住宅なので賃貸物件として活用していきたい」といった場合もあるのではないでしょうか。
この場合には、住宅ローンを不動産投資ローンへ借り換えて、住宅を賃貸物件として所有し続けるのが一般的です。
【住宅ローンを不動産投資ローンへ借り換える手続き】
住宅ローンを利用している金融機関へ、ご自宅を今後は賃貸物件として所有したい旨を相談
↓
金融機関から指示を受ける(今回は「不動産投資ローンへの借り換えを指示された」と仮定して紹介します)
↓
利用する不動産投資ローンを検討
・住宅ローンを利用している銀行と同じ銀行の不動産投資ローン
・住宅ローンを利用している銀行と違う銀行の不動産投資ローン
・ノンバンク(預金業務を行わない金融機関)の不動産投資ローン
↓
不動産投資ローンに申し込み、審査を受ける
↓
・審査に通過したら、不動産投資ローン契約
・不動産投資ローンの実行・住宅ローンの完済
↓
不動産業者を決め、ご自宅を賃貸物件として運用し始める
・賃借条件の決定
・賃借人募集
・賃借の申込みを受けて審査
・賃貸借契約
ご自宅を賃貸物件として運用し始めてからは、住宅ローン減税を活用できません。
また、毎年「不動産所得」の確定申告が必要になるため、賃貸運用のために支出した費用の領収書を保管するなど、確定申告に備えましょう。
返済困難|住み続けたいけど住宅ローン返済が難しいので悩んでいる

現在、「住宅ローン金利の上昇」「物価上昇」「電気代高騰」など、生活費が上昇し続けていますよね。
「住宅ローン返済の継続が難しいので、自宅は賃貸転用をして収入源にし、毎月の住居費が安い住居に住み替えたい」とご希望の方もいらっしゃると思います。
この場合は選択肢が複数あるので、負担の少ない選択を検討することをおすすめします。
- 金融機関へ相談して指示を受ける
- 住宅ローンを不動産投資ローンに借り換えて、ご自宅を賃貸物件として運用
- 金利の低い住宅ローンに借り換え
- リースバック(ご自宅を一旦売却し、賃料を支払ってご自宅に住み続ける仕組み)を利用
- ご自宅を売却
〈参考〉リースバック:国土交通省ウェブサイト『「住宅のリースバックに関するガイドブック」 を公表しました』>【別紙1】住宅のリースバックに関するガイドブック
金融機関に相談する場合には、以下のような対応を想定できます。
- 一定期間、支払いを猶予
- 返済期間を延長して毎月の返済額を減額
- 金利引き下げによって毎月の返済額を減額
- 任意売却
こちらの記事で、任意売却の内容を確認できます。
〈関連ページ〉任意売却のメリットとデメリットを徹底解説
金融機関は、「住宅ローン契約者から返済に関する相談を受けた場合に、返済条件変更などの対応に務めるべき」とされているため、住宅ローン返済にお悩みの場合は、はじめに金融機関へ相談しましょう。
〈参考〉金融庁ウェブサイト『中小企業等に対する金融円滑化対策について』
住宅ローン返済中の賃貸転用or売却でお悩みの方は、イエステーションへご相談ください。
現状やご希望を丁寧にうかがい、最適な選択を実現するサポートをいたします。
住宅ローン返済中の賃貸転用Q&A

最後に、住宅ローン返済中の賃貸転用を検討中の方から、イエステーションがよくいただく質問・回答を紹介します。
Q.無断で賃貸転用をしてもばれないのでは?ばれる理由を知りたい
A.住宅ローン返済中の賃貸転用を金融機関が把握するのは、主に郵送物が返送されたときです。
金融機関は、「住宅ローン残高のお知らせ」などを定期的に封書で発送していますが、発送時に「転送不要」とすることで居住確認をしていると想定できます。
転居後、郵便局に「転居届」を提出すると1年間は郵便物の転送をしてくれますが、「転送不要」の郵送物は転送されず、発送者に返送されます。
Q.住宅ローン返済中の自宅に住めなくなったら買い替えor賃貸どちらがお得?
A.買い替えor賃貸の判断は、資金状況・ライフスタイル・住み替え後の住居費などによって総合的に判断する必要があり、どちらかが必ずお得になるとは言えません。
信頼できる不動産業者に相談しながら、住居費負担を軽減できる&理想のライフスタイルを実現できる住居を選ぶことをおすすめします。
宮城県・福島県・茨城県で住居に関するお悩みをお持ちの方は、イエステーションへお問い合わせください。
現状やご希望を丁寧にうかがい、最適な選択を実現するサポートをいたします。
Q.住宅ローン返済中に賃貸物件を借りることは可能?
A.住宅ローン返済中に、賃貸物件を借りることは可能です。
ただし、「賃貸物件の所有者が、住宅ローン返済中の方には貸さない」という判断をする可能性もあることを、念頭に置いておきましょう。
Q.住宅ローンの複数利用は可能?
A.住宅ローンは原則「1契約者につき1契約」ですが、金融機関が承認をした場合には複数利用が可能です。
(例)
- セカンドハウス購入
- 住み替えで、一時的に住宅ローン契約が複数になる
- ペアローン利用者で、返済能力があると認められる など
まとめ
住宅ローン返済中の賃貸転用を検討している方へ、賃貸転用が認められるケースや手続きの方法などを紹介してきました。
「住宅ローン返済中に無断で賃貸転用をして金融機関にばれても、住宅ローンの滞納がなければ黙認される」といった噂がありますが、「噂を信じて判断・行動していいのか」と不安を感じている方が多いのではないでしょうか。
今回紹介した情報を参考に、ご自身の状況に応じて適切な判断をし、スムーズに手続きを進めていただけると幸いです。