最近、日本各地で地震が頻発しています。2025年6月には、鹿児島県で最大震度5弱を観測する地震が発生し、その後の余震活動など、わたしたちの住む日本が地震大国であることを改めて痛感させられる出来事が続いています。いつ、どこで大きな地震が起きてもおかしくない状況の中で、「もしも」の時にあなたの命と財産を守るための備えはできていますでしょうか?
地震発生時、まずわたしたちの身に危険が及ぶのは、室内に設置された家具や家電の転倒、落下、移動によるものです。阪神・淡路大震災や東日本大震災でも、家具の転倒による死傷者が多数報告されており、室内の安全対策は防災の第一歩と言えます。
今回は、地震発生時に慌てないための具体的な家具の転倒防止対策に焦点を当て、さまざまなアイデアをご紹介します。ご家族やご自身の状況に合わせて、ぜひ今一度、室内の安全対策を見直してみてください。
1. 家具の固定:揺れに強い部屋を作る基本
地震の揺れで家具が倒れるのを防ぐためには、壁や天井にしっかりと固定することが最も重要です。市販の防災グッズを上手に活用しましょう。
ポール式器具やL字金具でしっかり固定
背の高いタンス、食器棚、本棚などは、地震の際に転倒しやすい家具の代表です。これらには以下の方法で対策しましょう。
・ポール式器具(突っ張り棒タイプ):家具と天井の間に突っ張って固定するタイプです。設置は比較的簡単ですが、天井の強度や家具の高さに合わせて適切な長さのものを選びましょう。家具と天井の間に隙間ができないよう、しっかりと突っ張ることが重要です。
・L字金具(アングルタイプ):家具の天板や側面を壁に直接ねじ止めするタイプです。最も強力な固定方法とされています。取り付ける際は、壁の裏にある柱や間柱にねじ止めすることが必須です。石膏ボードの壁に直接ねじ止めすると効果が薄いため、専用のアンカー(壁の中に挿入してねじを固定する部材)を使用するか、専門業者に相談しましょう。
連結金具で一体感を出す
複数の家具を横に並べている場合、地震の揺れでそれぞれがバラバラに動いて倒れる可能性があります。
・連結金具:隣り合う家具同士を連結金具でつなぎ、一体化させることで、転倒のリスクを減らすことができます。これにより、個々の家具が独立して揺れるのを防ぎ、全体としての安定性を高めます。
開き戸には耐震ラッチを
食器棚や吊り戸棚の開き戸は、地震の揺れで勝手に開き、中の食器や物が飛び出してくる危険があります。
・耐震ラッチ:地震の揺れを感知すると自動でロックがかかり、扉が開くのを防ぐ金具です。後付けできるタイプも多く、ホームセンターなどで手軽に入手できます。中の物が飛び散るのを防ぐだけでなく、避難経路を塞ぐ事態も防げます。


2. 家具の配置の見直し:安全な空間を確保する
家具を固定するだけでなく、配置を工夫することも地震時の安全性を高める上で非常に重要です。
避難経路の確保
・玄関や窓の周り:地震発生後、速やかに避難できるように、玄関や窓への経路には家具を置かないようにしましょう。また、家具が倒れて扉の開閉を妨げない配置になっているか確認してください。
・通路の確保:室内の主要な通路には、倒れやすい家具や背の高い家具を置かないようにし、広めのスペースを確保しましょう。
寝室・子供部屋の安全確保
就寝中に地震が起きた場合、倒れてきた家具で負傷する危険性が高まります。
・背の高い家具の配置:寝室や子供部屋には、できるだけ背の高い家具を置かないのが理想です。もし置く場合は、ベッドや布団から離れた場所に配置するか、頭上に落ちてこないような工夫(たとえば、ベッドの足元側に配置するなど)を凝らしましょう。
・重いものの収納:引き出しがある家具の場合、重いものは下段に収納し、重心を低くすることで転倒しにくくなります。
ガラス製品の飛散防止
窓ガラスや食器棚のガラス扉は、地震の揺れで割れて破片が飛び散り、深刻な怪我の原因となります。
・飛散防止フィルム:ガラス面に飛散防止フィルムを貼ることで、万が一割れても破片が飛び散るのを防ぎ、負傷のリスクを低減できます。DIYで貼れるタイプも多く販売されています。
・厚手のカーテン:窓には厚手のカーテンを閉めておくことで、ガラスが割れた際の衝撃を和らげ、破片の飛散をさらに防ぐ効果が期待できます。
3. 家電製品の転倒・移動防止:見落としがちな対策
大型のテレビや冷蔵庫などの家電製品も、地震の揺れで転倒したり移動したりする危険があります。
滑り止めや粘着マットでピタッと固定
・耐震ジェルマット(粘着マット):テレビ、電子レンジ、小型の棚などの下に敷くことで、揺れによる滑りや転倒を防ぎます。さまざまなサイズや形状があり、目立たない透明なタイプもあります。設置面に粘着するため、定期的にホコリを取り除き、粘着力を維持しましょう。
・滑り止めシート:洗濯機の下や食器棚の中の食器類の下に敷くことで、滑りや散乱を防ぎます。
固定ベルトやワイヤーでしっかり固定
・テレビ用固定ベルト:特に大型の薄型テレビは重心が高く、転倒しやすい傾向があります。専用の固定ベルトで壁やテレビ台に固定することをおすすめします。多くの場合、テレビ背面のネジ穴を利用して取り付けられます。
・冷蔵庫用固定ベルト:冷蔵庫も大型で重いため、地震の揺れで大きく動き、転倒する可能性があります。壁に固定するベルトやワイヤーで対策しましょう。
4. その他の安全対策アイデア:普段から意識したいこと
家具や家電の直接的な固定以外にも、日頃から意識しておきたい安全対策があります。
寝室にはスリッパを常備
・枕元にスリッパや靴:地震の揺れでガラスや食器が割れ、床に散乱する可能性があります。夜中に地震が起きた際に素足で歩いて怪我をしないよう、寝室の枕元やベッドの下に、すぐに履ける丈夫なスリッパや靴を置いておきましょう。
火災防止対策も忘れずに
家具の転倒とは直接関係ありませんが、地震による二次災害で最も恐ろしいのが火災です。
・感震ブレーカーの設置:大きな揺れを感知すると自動的に電気を遮断する感震ブレーカーを設置することで、停電からの復旧時に発生する通電火災を防ぐことができます。これは、阪神・淡路大震災でも多くの火災の原因となった現象であり、非常に有効な対策です。
・消火器の設置と点検:各家庭に消火器を設置し、家族全員がその場所と使い方を把握しておきましょう。定期的に点検し、使用期限が切れていないかを確認することが重要です。
家族で定期的に話し合いを
・防災会議の開催:家具の配置や固定状況は、家族構成の変化や模様替えなどで変わることがあります。年に一度は家族全員で「防災会議」を開き、室内の安全対策を点検し、改善点がないか話し合う機会を設けましょう。
・危険箇所の共有:小さな子どもがいる家庭では、どの家具が危険か、どこに近づいてはいけないかなどを具体的に教え、家族全員で危険箇所を共有しておくことも大切です。

最後に
地震はいつ起こるかわかりませんが、日頃からの備えをしっかり行うことで、被害を最小限に抑え、大切な命を守ることができます。ご紹介した「家具の転倒防止!安全対策アイデア集」を参考に、今日からできる対策を始めてみませんか?
防災対策は一度行ったら終わりではありません。常に最新の情報を入手し、ご自身の環境に合わせて対策を更新していくことが重要です。あなたとあなたの大切な人の命を守るために、今すぐ室内の安全対策を見直しましょう。