不動産の売却理由を
報告する義務はある?

不動産を売却するときには理由がありますが、住み替えなどポジティブな理由なら伝えやすいものの、金銭的な理由や雨漏りがするなどネガティブな理由なら売却価格が下がってしまいそうで積極的には伝えたくないと感じる方は多いでしょう。

そこで、この記事では不動産を売却する理由についてどの程度まで伝えたらよいのか、使え方の秘訣や必ず伝えなければならない場合について解説します。

不動産売却理由の報告義務

不動産を売却する理由の報告義務とは、不動産売買契約において、売主が買主に対して、物件の状況や売却の動機などに関する情報を提供することをいいます。

売主の説明義務は、法律で明確に定められているものではありませんが、契約交渉の過程で、売主が買主に情報を提供することが公正に適すると考えられる場合に発生します。

売主の説明義務には、以下のようなものがあります。

  • 物件の瑕疵(欠陥)に関する告知義務
  • 物件の価格に影響する事項に関する告知義務
  • 物件の売却理由に関する告知義務

物件の瑕疵に関する告知義務

物件に欠陥がある場合に、その内容や程度を買主に伝える義務です。

物件の瑕疵には、物理的な瑕疵(建物の構造や設備の不具合など)、心理的な瑕疵(事件や事故の発生など)、環境的な瑕疵(周辺の騒音や臭気など)、法律的な瑕疵(権利上の問題や制限など)があります。

物件の価格に影響する事項に関する告知義務

物件の価値や将来性に関わる事項を買主に伝える義務です。

例えば、物件の築年数や間取り、方角、日当たり、風通し、眺望、駐車場の有無、管理費や修繕積立金の額、大規模修繕の実施状況や予定、周辺の商業施設や公共交通機関の利便性、地域の開発計画や用途地域の変更などが該当します。

物件の売却理由に関する告知義務

売主が物件を売却する動機や背景を買主に伝える義務です。

例えば、住み替えや転勤、離婚、相続、金銭的な問題などが該当します。

売主の説明義務を怠ると

売主が説明義務を怠ると、買主は契約解除や損害賠償を請求できる場合があります。

そのため、売主は、物件の状況や売却の理由について、正確かつ適切に買主に伝えることが重要です。

売主の説明義務に関する情報は、物件状況確認書(告知書)という書面にまとめて買主に提供するのが一般的です。

物件状況確認書は、不動産業者が売主に対して質問を行い、その回答をもとに作成します。

物件状況確認書には、物件の瑕疵や価格に影響する事項、売却理由などが記載されます。

不動産売買は、高額な取引であり、契約の内容や条件によっては、売主や買主にとって大きなリスクや損失が発生する可能性があります。

そのため、不動産売買においては、売主と買主の間で、物件の状況や売却の理由などに関する情報を正しく共有することが重要です。

不動産を売却する理由の伝え方の秘訣は

以上のように、売却理由を買主に伝えなければならないのですが、伝え方にはコツがあり、ありのままに正確に伝えなければならない理由とある程度抽象的でも許される理由とがあります。

  • 不動産の瑕疵(欠陥)に関しては、説明義務があるので、正直に伝えることが重要です。

 瑕疵の内容や程度、修繕の有無や費用などを具体的に説明し、買主の疑問や不安を解消するように努めましょう。

  • 不動産の売却理由がネガティブなもの(離婚、事故、金銭的な問題など)の場合は、伝え方に工夫が必要です。

買主に不快な印象や不安を与えないように、事実を端的に伝えた後、現在の状況や今後の展望について前向きに話すことがおすすめです。

  • 不動産の売却理由がポジティブなもの(住み替え、結婚、転勤など)の場合は、積極的に伝えることが有利です。

買主に不動産の魅力や住み心地の良さをアピールすることで、好感度や信頼感を高めることができます。

不動産の瑕疵については正確な告知が必要ですが、その他の理由なら必要以上に詳細である必要はありません。

また、嘘にならない程度で言い換えも可能です。

例えば、賑やかな商店街等が近隣にない地域では「閑静な環境」と言い換えることができます。

不動産売却の理由は、売主の説明義務の一つとして、買主に伝える必要があります。

しかし、売却の理由によっては、買主に不利益や不安を与える可能性があります。

そのため、売却の理由を伝える際には、工夫や配慮が必要です。

事前にメリットとデメリットを箇条書きするなどして、伝えたいことを整理しておくとよいでしょう。

不動産の売却理由を伝える際は、売却の専門家に相談することも有効です。

不動産仲介会社や売却コンサルタントなどに依頼することで、売却理由の伝え方のコツや注意点を教えてもらうことができます。

不動産売却は、高額な取引であり、売却理由によっては、買主の判断や売却価格に影響する可能性があります。

そのため、不動産売却においては、売却理由を適切に伝えることが重要です。

物件の瑕疵(欠陥)は必ず報告すること

物件に瑕疵があれば、瑕疵がない物件に比べて売却期間が長くなったり売却価格が下がったりする傾向にあります。

だからといって、告知しないのは得策ではありません。

万一告知していなければ買主から契約不適合責任を問われてしまい、もっと大きなダメージを負うおそれがあるからです。

売主が物件の瑕疵を告知しない場合、買主は契約解除や損害賠償を請求することができます。

そのため、売主は物件の状況について、正確かつ適切に買主に伝えることが重要です。

不動産売却で多い理由

他の方はどのような理由で不動産を売却するのか、気になる方は多いのではないでしょうか。

最後に不動産売却で多い理由を紹介しておきます。

  • 住み替え

家族構成やライフスタイルの変化に合わせて、より快適な住まいに移るために売却する場合です。

例えば、子供の誕生や進学、老後の暮らし、リモートワークなどがきっかけになることがあります。

  • 資産整理

不要になった物件や相続した物件を処分するために売却する場合です。

例えば、空き家や貸家、実家などが該当します。

売却することで維持管理や税金の負担を減らすことができます。

  • 資金面の問題

住宅ローンの返済が困難になったり、資金が必要になったりするために売却する場合です。

例えば、収入の減少や失業、病気や事故、教育費や介護費などが理由になることがあります。

  • 離婚

離婚に伴って、住まいを変えたり、財産分与のために売却したりする場合です。

例えば、新しい生活を始めるためや、元配偶者との関係を断ち切るためなどが理由になることがあります。

  • 転勤

勤務先が変わったり、転居したりするために売却する場合です。

例えば、通勤時間の短縮や生活環境の改善などが理由になることがあります。

  • 立地や環境が悪い

物件の周辺に問題があったり、住み心地が悪かったりするために売却する場合です。

例えば、騒音や臭気、犯罪や事故、災害や汚染などが理由になることがあります。