土地に埋設物が
あったらどうする?

土地を買って、いよいよ家を建てようとしたら「土地に埋設物があるのでこのままでは家を建てられない」と言われたり、駐車場として利用していた土地を売ったら買主から「埋設物があるので撤去してほしい」と要望があったりしたら困ってしまいますよね。

今回は、土地に埋設物があることがわかったらどうすればいいのか、また、地中埋設物の調査方法について解説します。

地中埋設物とは

地中埋設物とは、地中に埋まっている建築行為を妨げるような廃棄物のことです。

地中埋設物は、人工物や自然物に分けられます。

人工物とは、建物の解体や改築などで発生した建築資材や構造物、排水管や浄化槽などの設備、文化財に該当する遺跡類などです。

自然物とは、大きな岩や石、湧き水などの地形や地質に関するものです。

地中埋設物の種類によっては、撤去費用や法的責任が異なりますので、注意が必要です。

地中埋設物が問題になる3つの理由

地中埋設物が問題になる理由は、主に以下の3つです。

  • 地中埋設物があると、新たに家を建てる際、建築工事に支障をきたす可能性があるからです。

地中埋設物が基礎工事の邪魔になったり、地盤の強度を低下させたりすることがあります。

そのため、地中埋設物を撤去する必要がありますが、それには費用や時間がかかります。

  • 地中埋設物があると、地震などの災害が起きたとき、地盤の強度に影響することも理由の一つといえます。

地中埋設物が地盤の緩みや空洞を生じさせることで、地震の際に液状化や沈下などの現象が起こりやすくなります。

これは、建物の倒壊や損傷のリスクを高めるだけでなく、人命にも危険を及ぼすことがあります。

  • 地中埋設物があると、健康や環境にも悪影響を与える可能性があります。

特に、浄化槽や医療廃棄物などの場合は、有害物質が地中に漏れ出したり、地下水や土壌に汚染を引き起こしたりすることがあります。

これにより人や動植物の健康被害や、周囲の衛生状態の悪化につながることがあります。

以上のように、地中埋設物が問題になる理由は、建築工事や地盤の強度、健康や環境などに影響を及ぼすことにあります。

もし、土地に地中埋設物があることが分かった場合は、専門家に相談して、適切な対処法を探ることをおすすめします。

地中埋設物を発見した場合、どうすれば良いか

土地に埋設物があったらどうすればよいかは、埋設物の種類や量、土地の売買契約の内容、建築の目的などによって、対応が異なるものの、一般的には以下のようなことが考えられます。

  • 地中埋設物を発見したのが、解体工事中の場合は、まずは工事を一時停止して、解体業者や不動産業者と協議します。

解体業者は、地中埋設物の種類や量、位置などを確認し、撤去に必要な追加費用や期間を見積もります。

解体業者は、地中埋設物の存在を予測できないため、追加費用の負担は依頼者になります。

依頼者は、解体業者に撤去方法や費用の内訳などを説明してもらい、納得してから支払うようにしましょう。

また、撤去した地中埋設物の写真や証拠を残しておくと良いでしょう。

  • 地中埋設物を発見したのが、建築工事中の場合は、まずは工事を一時停止して、建築業者や不動産業者と協議することになります。

建築業者は、地中埋設物の種類や量、位置などを確認し、撤去に必要な追加費用や期間を見積もります。

建築業者は、地中埋設物の撤去を行う場合や、地盤改良や基礎工事の変更を行う場合があります。

売買によって取得した土地の場合には追加費用の負担は、土地の売主や不動産業者に請求できる場合があります。

土地の売主が地中埋設物の存在を知っていたかどうか、また、地中埋設物が土地の瑕疵に当たるかどうかによって、責任の有無や程度が異なります。

土地の売主や不動産業者と話し合って、追加費用の負担や工事の進め方を決めましょう。

  • 地中埋設物を発見したのが、土地の売買契約前の場合は、まずは土地の売主や不動産業者に連絡します。

土地の売主は、地中埋設物の存在を知っていたかどうか、また、地中埋設物を撤去する意思があるかどうかを明らかにします。

土地の売主が地中埋設物の撤去に同意する場合は、撤去費用や期間、責任の所在などを契約書に明記しましょう。

また、地中埋設物の種類や量、位置などを確認するために、地歴調査や地中レーダー調査、ボーリング調査などの方法を利用することもできます。

これらの調査には費用がかかりますが、後になって紛争になるリスクを減らすことができます。

以上のように、地中埋設物を発見した場合は、ケースバイケースで対処する必要があります。

もし、このような問題に直面した場合は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

土地の売買契約をする際に埋設物について注意しておきたいこと

土地の売買契約をするときには、いろいろと注意しておきたいことがありますが、地中埋設物については以下の点に気をつけておくとよいでしょう。

  • 土地の売買契約をするときに、地中埋設物に関する条項を明記することが重要です。

例えば、地中埋設物が発見された場合の責任の所在や費用の負担の割合、撤去の方法や期限などを定めることができます。

これにより、双方の権利義務を明確にすることができます。

  • 土地の引渡し後に、地中埋設物が発見された場合は、売主と買主の間で話し合って解決することになります。

地中埋設物が土地の瑕疵に当たるかどうかは、具体的な事情によって判断されますが、一般的には、建物を建築するにあたって支障となる質・量の異物が地中に存在する場合には、瑕疵になると考えられます。

その場合、売主は買主に対して、埋設物の除去費用や地盤改良費用などの損害賠償を支払う義務があります。

ただし、買主が地中埋設物の存在を予見できた場合や、売主が地中埋設物の存在を知らなかった場合などは、責任の免除や分担が認められる場合もあります。

  • 売主と買主の間で話し合いがまとまらない場合は、第三者の仲介や調停、裁判などの方法に訴えることができます。

しかし、これらの方法には時間や費用がかかりますし、結果も予測できません。

できるだけ、円満な解決を目指すことが望ましいでしょう。

土地に埋められたものを探す方法

土地に埋められたものを探す方法は、いくつかあります。

一般的には、以下のような方法が使われます。

  • 地歴調査

これは、土地の過去の所有者や用途、建物の有無などを調べることで、地中に埋設物がある可能性を推測する方法です。

例えば、過去に工場やガソリンスタンドなどがあった場合、タンクやパイプなどの埋設物が残っている可能性が高いと考えられます。

  • 地中レーダー調査

これは、電磁波を地中に送り、反射波を受信することで、地中の構造や物質を可視化する方法です。

地中レーダーは、金属やコンクリートなどの埋設物を検出するのに有効ですが、土壌の水分や塩分などによって影響を受けることがあります。

  • ボーリング調査

これは、地中に穴を開けて土砂を採取したり、棒やハンマーで地面を打ったりすることで、地中の状態を調べる方法です。

ボーリング調査は、埋設物の種類や深さを正確に把握するのに有効ですが、費用や時間がかかることがあります。

以上のように、土地に埋められたものを探す方法は、目的や予算に応じて選択する必要があります。

もし、このような調査を行いたい場合は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。

地中埋設物と契約不適合責任

地中埋設物があると、土地の利用に支障をきたすことがあります。

その場合、売主や不動産業者に対して法的責任を追及できる可能性があり、その法的責任の一つが、契約不適合責任です。

契約不適合責任とは

契約不適合責任とは、売買した物の「種類」「品質」「数量」が売買契約の内容と適合しない場合に、売主が買主に対して負う責任です(民法562条以下)。

土地に地中埋設物が存在することによって契約上予定していた方法での土地利用ができなくなった場合には、土地の「品質」に関する契約不適合が存在するといえるでしょう。

契約不適合責任が発生すると

契約不適合責任が発生すると、買主は「追完」「代金減額」「損害賠償」「契約解除」をすることで売主の契約不適合責任を追及することができます。

  • 履行の追完請求:契約の内容に適合する完全な目的物を引き渡すように請求できます。

地中埋設物の場合、売主側で撤去工事を実施してもらうことで契約の目的を達することを求める方法です。

  • 代金減額請求:相当の期間を定めて履行の追完を請求し、催告期間内に売主が履行の追完をしない場合は、契約不適合の度合に応じて代金の減額を請求できます。

地中埋設物の場合、撤去工事費用相当額について代金減額が認められる可能性が高いといえます。

  • 損害賠償請求:契約不適合による損害を賠償請求できます。

地中埋設物の撤去工事を買主側で行った場合の地中埋設物の撤去工事や入居が遅れたために余分に発生した家賃などが損害賠償請求の対象となる可能性が高いでしょう。

  • 売買契約の解除:売買契約上の義務を完全に履行することが不能である場合などには、売買契約自体を解除することが認められます。

地中埋設物が存在する場合には、撤去工事が事実上不可能であることや地中埋設物の存在によって土地を購入した目的を果たせないような場合には売買契約の解除が認められると考えられます。

売主の契約不適合責任を追及できる期間は、原則として買主が不適合(この場合は地中埋設物の存在)を知った日から1年間に制限されます(民法566条本文)。

ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知っていた場合や売主に重大な過失があることで知らなかった場合には、1年間に限らず売主の契約不適合責任を追及できることとされています(同条但し書き)。

売主としては、地中埋設物の存在を知っていれば売買契約の際に正直に説明しておくことが大切です。

地中埋設物に関するトラブルは、売主や不動産業者の説明義務や調査義務なども関係してくる複雑な問題です。

もし、このような問題に直面した場合は、専門家のアドバイスを受けることをおすすめします。