土地を売却する時、
隣人に相談するのがベストな理由

相続した実家や自宅を売却しようとするとき、まず隣人に購入しないか相談するのがよいといわれます。
一般に「隣地は高くても買え」といわれますが、それはなぜなのか、また隣人に売却するときに注意しておきたいことをこの記事では解説します。

隣人が購入するメリット

隣人が地続きの土地を購入すると隣人の土地の価値が高くなります。
そのため「高くても」購入したほうがよいといわれているのですが、隣人の土地の価値があがるのは以下のような理由からです。

1. 土地が広く使える
2. 日当たりや風通しがよくなることもある
3. 知らない人が購入して環境悪化の心配がない

土地が広く使える

土地が広くなることで次のようなメリットがうまれます。

● 建ぺい率や容積率が大きくなる
● アパートやマンションの建設ができる
● 駐車場や家庭菜園に使える
● 隣地を買い足すことで土地の形がよくなることがある

敷地面積が広くなるので、敷地面積を基準にする建ぺい率や容積率などが大きくなり、増築や大きな家への建て替えが可能になります。
土地の広さによっては、賃貸アパートやマンションを建築して人に貸すこともできます。
地続きに土地が広がれば自宅の駐車場として利用したり、余った土地で家庭菜園もできたりするので活用場面が広がります。
また、旗竿地や三角地、道路に面していない土地などの不整形地が隣地を購入することで正方形の土地になったり、道路に面するようになったりすれば確実に土地の資産価値は高まります。

   日当たりや風通しがよくなることもある

   隣地に家が建っているために、日陰になったり風通しが悪くなったりしていることがありますが、隣地を購入すれば建物がなくなり、このような悩みも解決します。

   知らない人が購入して環境悪化の心配がない

   隣地が売却されれば、どのような方が購入するかわかりません。
   そのため、どのような方が購入するのか、隣人は心配です。
   おかしな人が引っ越してきたり、コンビニや駐車場ができたり、歓迎できない環境になるのではないかと心配です。
   そのため隣地の方自身が購入してしまえば、知らない人が購入して引っ越してくることがないので安心でしょう。

   売主のメリット

   隣地の所有者に購入を持ちかけて話がまとまれば、公告をして土地購入者をさがす手間が省けます。
   一般の方から購入希望者を募集すると通常は早くても3ヶ月程度はかかってしまいます。
   早く売却がまとまれば時間も手間も節約できて安心です。

注意すること

   隣人に購入の相談をするときには以下の点に注意しておきましょう。

   1. しつこくしない
   2. 早いうちから金額の話をしない
   3. 隣人の「売ってほしい」はあてにしすぎない

   しつこくしない

   隣地を購入するとメリットがあるからといって、隣人が乗り気をみせていないのにしつこく話をしつづけるのはやめましょう。
   しつこくし過ぎると隣人関係が悪くなることがあります。
   隣人との関係が悪くなってしまうと売却話だけではなく、後々まで尾をひいてしまうことがあるからです。
   例えば、第三者に売却するときには境界確定が必要なのに、隣人との関係が悪くなってしまったので協力が得られないことになれば境界確定ができないために相場よりも安く売却しなければならないことになりかねません。
   また、売りたい気持ちが先走ってしまうと、言葉が悪いですが足元を見られて安く売却することになってしまうおそれもあります。

   早いうちから金額の話をしない

   隣人に具体的な金額を早く伝えてしまうとその金額が基準になってしまい値段交渉によってその金額以下になってしまいがちです。
   後から相場が高いことがわかっても、それ以上高くしにくくなってしまいます。
   お互いに隣人だからと「高く買ってくれるだろう」「安く売ってくれるだろう」と勝手に思い込み、あてが外れると険悪になってしまいます。

   隣人の「売ってほしい」はあてにしすぎない

   隣人から「土地を売るときはまず自分に言ってね」と言われていてもあまりあてにしすぎないようにしましょう。
   隣人は隣同士だから「安く売ってもらえるかも」と期待していることがあります。
   現実になると隣人の経済状況によっては売買代金を準備するのが難しいおそれもあります。
   このようなときは、隣人同士だと本音を言いにくいことがあるので第三者に仲介してもらったほうがスムーズにすすみます。

不動産会社に仲介を依頼する

   隣人同士だと遠慮があるので売買代金の交渉や引渡の条件などの交渉は他人が入った方が率直に交渉できてまとまりやすいことがあります。
   直接交渉だと関係が悪くなると後まで尾をひいてしまうことが隣人との売買で気をつけたいとところです。
   また、不動産会社が仲介に入ることで隣人が土地購入のためにお金を借りたい場合などの事情があれば借入先の金融機関の紹介ができるなど隣人のメリットになるお世話ができるでしょう。

積極的に隣地に売却した方が良い土地

   一般の方から購入希望者を募集してもなかなか売却が難しい以下のような土地は、多少売却価格が低くなっても積極的に隣人に購入を持ちかけたほうがよいでしょう。

   ● 公道に面していない土地
   ● 田舎で他に購入希望者を見つけにくい土地

   売却しようと考えている土地が公道に接道していなければ建築基準法によって建て替えが難しい土地なので、宅地としての価値がありません。
   そのため一般から購入希望者を募集しても購入を希望する方は限定されてしまい売却は難しくなります。
   反対に売却しようとしている土地が公道に面しており、隣地が公道に面していない場合には、売却しようとしている土地を隣人が購入すると隣人の土地の価値が高くなるため是が非でも購入したいと思うはずです。
   田舎で人口が少なく管理ができない土地であれば、購入希望者をみつけるのが困難なため、売却しようとする土地の近所で管理できる方に購入を打診しましょう。
   田や畑が広くなれば隣地の所有者は耕作しやすくなるので価格によっては購入を承諾してくれるでしょう。

まとめ

   隣人が地続きの土地を購入するのは隣人にもメリットがあり、売却が早く進むため売却する側にもメリットがあります。
   しかし、あまりしつこくしすぎると隣人関係が悪くなるおそれもあります。
   隣人に売却できなくても、一般から購入希望者をさがせばよいので隣人に売却することにこだわりすぎないようにしましょう。
   隣人への売却は、売却方法の選択肢の一つにすぎません。
   なによりも隣人とよい関係を保つことが、土地売却の秘訣です。