不動産を買った時の契約書がみつからない!
必要な時と対処法

自宅を買ってなにごともなく過ごしてきたけど、ふと気がついたら購入時の売買契約書が見当たらない。
売買契約書が大事なものだというイメージはあるけど、売買契約書がなければ、どんなときにどのような不利益があるんだろう?
この記事では、売買契約書はどのようなときに必要なのか、みつからないときの対処法について解説します。

買ったときの売買契約書が必要なときとは?

売買契約書とは、売主と買主との間で合意した不動産の売買に関する約束事を書面にしたものです。
この売買契約書があるおかげで、売買に関するトラブルの責任をどちらが負担するべきかがわかります。
しかし、多くの場合は不動産を引渡した後にトラブルが発生するのは長くても数年です。
引渡しなどトラブルがなくて過ごしてきたのに売買契約書が必要になるのは、次の場合です。

1. 売却するとき(買換えも含む)
2. 住宅ローンの借り換えをするとき

売却するとき(買換えも含む)

売買契約書は不動産を売却するときに必要になります。
買換えも自宅の売却と購入ですから、同様に売買契約書が必要です。
売買契約書には売主と買主との間の重要な取り決めである「売買代金」が記載されているからです。
不動産を売却したら、翌年2月に確定申告をしなければなりません。
不動産を売却して利益がでたら、「不動産譲渡所得税」を納めることになります。
売却利益は、
売却代金ー経費(購入代金などの取得費+譲渡費用)
で計算します。
そのため、取得費を証明するのに売買契約書が必要になるのです。
売買契約書がなくても取得費は認められるものの、その額は譲渡金額の5%となっています。
たとえ3,000万円で売却した不動産の購入代金が2,000万円だったとしても、売買契約書がないために150万円で取得したことになるので、譲渡所得税も高額になる不利益があります。

   譲渡所得税についての売買契約書がみつからないときの対処法はこちらに詳しく解説しています。

   また、不動産譲渡所得税だけではなく、自宅を売却して損がでた場合には、「損益通算及び繰越控除の特例」が受けられることがあります。3,000万円で売却した自宅を4,000万円で購入していたとしても、売買契約書がないために150万円で取得したものとみなされれば、本来つかえるはずの損益通算や繰越控除が利用できないばかりか、譲渡所得税まで納めなければならなくなります。

 住宅ローンの借り換えをするとき

   現在利用中の住宅ローンを金利が安くするために借り換えたり、支払方法を変えるために借り換えたりすることがあります。
   このように住宅ローンを借り換えるときにも売買契約書が必要です。
   住宅ローンは住宅ローンを所有するための資金を貸し付ける目的なので、住宅の購入資金がいくらなのかが重要になります。
   そのために売買契約書をみて購入代金を確認する必要があるのです。
   その他住宅ローンの担保評価のためにも売買契約書を利用します。
   とはいえ、金融機関は顧客の利益を優先してくれるので、売買契約書がみつからないことを打ち明け、現在の住宅ローンの返済明細書などで代替できないかを相談すれば、時間がかかるものの前向きに検討してくれるでしょう。

売買契約書がみつからないときの対処法

   売買契約書には売主と買主が記名押印して両者が保管していることが一般的です。
   また、売買契約を結ぶときに仲介した不動産会社がコピーを保管していることがほとんどです。
   そのため、売買契約書がみつからないときには以下の方法をためしてみましょう。

   1. 仲介をした不動産会社に連絡する
   2. 売主に協力してもらえないか相談する
   3. 他の資料で購入代金を証明する
   4. その他の方法を検討する

   仲介した不動産会社に連絡する

   購入したときに仲介をした不動産会社は売買契約書のコピーを保管していることがほとんどです。
   まず、売買契約書の写しを保管していないか不動産会社に問い合わせてみましょう。
   不動産会社でも契約から何年かは保管していたものの何十年もたっていれば廃棄していることもあります。
   その場合には、不動産会社から売主に連絡してもらい、写しをもらったり、再作成の打診をしてもらったり、売主の協力が得られないか不動産会社に相談してみましょう。
   ただし、売買契約書を再作成するときには契約書に収入印紙の貼付が必要なので注意しましょう。

  売主に協力してもらえないか相談する

   不動産会社の協力が得られないときには、直接売主に協力してもらえないか連絡してみましょう。
   何年もたっていれば、「今さら売買契約書がどうして必要なの?」と不審に思われるおそれもあります。
   ていねいに売買契約書が必要になった事情を説明するのはもちろんですが、売主が個人ならあまり無理強いもできません。
   他の方法でも取得費を証明できるので、他の方法を検討しましょう。

   他の資料で購入代金を証明する

   取得当時の資料で準備できる以下の書類等はないか、さがしてください。

   ● パンフレット
   ● ちらし、見積書
   ● 領収書
   ● 通帳の取引履歴
   ● 住宅ローン借り入れ契約書
   ● 住宅ローンの返済明細書
   ● 住宅ローン控除のための確定申告書の写し
   ● 抵当権設定登記

   これらの書類は、売買代金を直接証明するものではないので、税務署が必ず認めてくれるとは限りません。
   そのため、できるだけ種類が異なる多くの書類を集めて、申告する取得費の正当性をアピールしましょう。

   その他の方法を検討する

   その他以下の方法によっても取得費用を計算することができます。
   これらの計算は複雑なことが多いので、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

   ● 市街地価格指数
   ● 建物の標準的な建築価額
   ● 税理士や不動産鑑定士による不動産取得費査定

   これらの方法については、こちらに詳しく解説しています。

まとめ

   売買契約書は不動産の引渡しが終わっても、売主と買主のトラブル解決のため、また数年先に万が一売却することになったり、住宅      ローンを借り換えたりするときにも、必要になる大事な書類です。また、大事なものだからとしまいこんでしまって、どこに保管したかわからないこともなかにはあります。売買契約書は、大事なものですから、確実に保管すること、もしみつからなくても他の方法があるのでそちらの方法がとれないか、落ち着いて検討してみましょう。