入籍前に住宅を購入したい!
ローンは利用できる?
近年は、結婚を機に住宅を購入したいという方が多いです。また、事実婚や同性婚を選択し入籍を予定されていない方もいらっしゃいます。 今回は、住宅ローンと婚姻との関係を解説します。
入籍前でも住宅ローンは利用できる
まずお一人で住宅ローンを借り入れることができる場合には、入籍の前後を問わず借入が可能です。入籍の前後を問われるのは、お二人の収入を合計(収入合算)して住宅ローンを利用する場合です。 住宅ローンの申込自体は入籍前でも可能ですが、ローン契約をするときやローンの実行時までに入籍をすることが条件になることが多いのが実情です。利用する住宅ローンの種類によって収入合算する方の条件や連帯保証人になることができる方の条件が異なります。入籍前でも利用できる住宅ローンの紹介は、次項で詳しく解説します。 現在では、事実婚や同性婚を選択するカップルも増えていますから、これらの方たちにむけても住宅ローンが用意されています。
収入合算とは
住宅ローンを利用できる額は、借り入れをする方の勤務先や年収、家族構成などを銀行が独自の方法で審査を行い決定されます。借り入れをする方の条件によっては、希望する額を借り入れることができないときに夫婦や親子などでその収入を合算して住宅ローンを利用することができ、このことを「収入合算する」といいます。 収入合算できる方の範囲は多くの銀行では同居する配偶者または親子となっており、誰でもができるわけではありません。また収入合算できる金額についても銀行ごとに異なります。収入合算をして借り入れる場合には、合算される方は連帯債務者や連帯保証人になることが求められます。
入籍前に住宅を購入するメリットとデメリット
入籍する前に住宅を購入することにはメリットもありますがデメリットもありますから留意しておきましょう。 結婚して新しい生活が始まるといろいろと忙しくなりますから、時間的に余裕がある結婚前に家具の準備や住宅購入も済ませておけばゆっくりと新婚生活がスタートできます。 しかし結婚し実際に生活をして行く中で出産などを契機に夫婦の価値観が変わることもありますから、今後のライフスタイルに変化がありうることを予測して二人でよく話し合っておくことが大切です。また夫婦二人名義にする場合には、入籍前に購入し、不動産登記をすませると氏名が変わった方については氏名変更の登記が必要になります。自分で登記申請をする場合には1筆1000円必要であり、司法書士に依頼をすれば2万円程度費用がかかることがありますから、購入し不動産登記をする前に住所や氏名を変更しておくことで節約できます。
利用する住宅ローンは今後のライフスタイルを考慮する
結婚してから二人がどのように生活をしていくか、今後のライフスタイルを充分に話し合ってから利用する住宅ローンを選択しましょう。 利用する住宅ローンによって返済をする方が異なります。 例えばペアローンを利用する場合には住宅ローンの返済が終わるまでお二人ともが別々のローンを返済する必要がありますから、返済が終わるまで借入時と同じ条件で働くことができるかを考慮する必要があります。妊娠や出産を機会に退職すれば返済ができなくなります。一方でお二人が働いていればペアローンを利用することでお二人ともが住宅ローン減税を利用できるメリットがあります。
このように、ライフプランと住宅ローンの組み合わせによってメリットが異なりますから、今後のライフプランに合わせてメリットがある住宅ローンを選択しましょう。
入籍前に利用できる住宅ローンの紹介
多くの住宅ローンではローン契約を結ぶタイミングや住宅ローンを実行するタイミングまでに入籍をすませることが条件になっています。ここでは、入籍前に利用できる住宅ローンを紹介します。
フラット35 フラット35では収入合算できる方の条件に「婚約者または内縁関係にある方を含む」ことが明示されています。フラット35は独立行政法人住宅金融支援機構が用意している制度融資でいろいろな金融機関を通じて利用できます。住宅金融支援機構のホームページには収入合算できる方の範囲が次のように示されていますから入籍前でも借り入れをすることが可能であることがわかります。
収入を合算して申込みできますか。またその場合に条件はありますか。 – フラット35
民間金融機関の住宅ローン
大手都銀などでは、収入合算できる配偶者の定義に同性パートナーや事実婚の方を含めることが多くなっています。以前と比べて収入合算できる方の範囲が広くなっています。住宅ローンを申し込むにあたって入籍予定などの今後の予定を金融機関の担当者に相談しながらすすめていくことで、希望に沿った対応を選択しアドバイスをしてくれます。
住宅ローンの種類
借り入れをするにあたって、住宅ローンの種類と収入合算を利用する場合の違いを把握しておきましょう。
単独債務 住宅ローンを借り入れる方(債務者)がお一人の場合です。収入合算を行っても単独債務者として借り入れることがあります。この場合収入合算を行なった方は連帯保証人になります。また住宅を所有している方は原則として連帯保証人になることが求められます。例えば、夫が単独債務で借り入れを行なっても、妻がその親から住宅資金贈与を受けるために共有になり、妻が持分を取得した場合にはほとんどの場合妻も連帯保証人になるように求められます。 単独債務の場合には、債務者が団体信用生命保険に加入することで万一亡くなられた場合に、借入金を生命保険によって返済されることから残された方の負担がなくなります。
連帯債務(収入合算) 収入合算することでお二人が共同して借り入れを行い、共同して返済していく契約です。住宅の名義は債務の返済割合と手持ち資金の支出の割合によってお二人でもつことになります。お二人の収入によって返済を行なっていきますから、一人が退職しても残る一人が返済を続ける必要があります。住宅ローン控除は連帯債務者全員がその返済割合や共有持分の割合によってそれぞれが受けることができます。お二人がそれぞれ団体信用生命保険に加入することで一方の方が亡くなられた場合には残る方の負担はなくなります。
ペアローン 借り入れはお二人で行いますが、連帯債務と異なるのは、お一人ずつの借り入れとなり、手続きもそれぞれ行う契約であることです。ペアローンの場合はお互いに連帯保証人になりあうことになります。住宅の名義は借入額と手持ち資金の支出の割合によってお二人でもつことになります。お一人ずつが債務者となりますから、手続きは二人分になり融資手数料や登記手続き費用などが二重に必要です。住宅ローン控除は借入額によってそれぞれの方がうけることができます。借入額分についてのみ団体信用生命保険に加入することになりますから、例えば夫が亡くなった場合に夫の債務は返済されますが、妻の債務は残ることになり、妻は引き続いて自分の借入額について返済を続けることになります。
ローンについては様々な選択肢がありますが、結婚してからお二人でどのように生活をしていくか、今後のライフスタイルを充分に話し合ってから利用する住宅ローンを選択していくことが大切です。
家族信託とは?
家族信託された不動産の売却方法は?
認知症に対応するための制度として成年後見制度と並んで話題にあがる家族信託について、また家族信託された不動産の売却方法について解説します。
家族信託とは
家族信託とは、信頼できる家族の間で財産の管理や運用を任せる方法の一つです。成年後見制度による後見人は本人(被後見人)を代理する権限がありますが、その権限は本人の財産を維持し管理することに主眼がおかれています。そのため成年後見人は賃収物件のリフォームや資産の運用も基本的には権限外の行為であり、特に本人が居住する不動産を売却するには家庭裁判所の許可が必要になっていることなど家族信託における受託者の権限と比べて制限が多いのが特長です。
家族信託と商事信託 家族信託は平成18年に信託法が改正されたことによって認められた新しい信託制度です。改正以前は信託銀行など信託を行なえる機関は限定された営業行為として認められていました。 営業行為として行なわれる信託を商事信託といい、非営業行為として行なわれる信託が家族信託(民事信託)です。 商事信託の場合は営業が目的ですから当然に報酬が発生し、信託する財産もある程度の規模でなければ信託財産として受けてもらえません。 家族信託は非営業行為だとしても信託を受けてくれる人(受託者)に対して報酬を支払うことは可能です。
家族信託の契約当事者 信託は 1. 委託者 2. 受託者 3. 受益者 が基本的な当事者となって契約をします。この当事者は家族信託でも同じです。
1.委託者 信託する財産を所有している人です。
2.受託者 信託目的の財産を預かり管理、処分あるいは運用を行ないます。行なうことができる行為の範囲は信託契約において定めることになります。
3.受益者 信託では管理するだけではなく、運用や処分行為を行なうことができます。運用や処分行為によって生じた利益を受け取ることができる人を信託契約において定めることになります。通常は委託者が受益者となります。
信託された財産は誰のもの? 信託された財産の名義は受託者に変更されます。不動産が信託財産であれば委託者から受託者に所有権が移転した形式をとります。しかし、受託者は単に管理運用する権限をもつようになるだけであり、収益は受益者のものになります。そして委託者は名義人でなくなりますから不動産を処分することはできなくなります。
このような権利関係は債権者の立場になるとわかりやすいのですが、債権者は委託者に対して債権を有していても委託者が所有していた不動産は受託者の名義になっているので差押ができなくなります。また受託者の債権者は受託者名義の信託財産を差押できるかといえば受託者は名義を保有しているだけですから、こちらもできません。このように信託によって特殊な権利関係が構築されます。(ただし、委託者の債権者は受益権に対して差押することができますし、信託行為が詐害行為であるとして取消を求めることができます。)
信託契約の内容によっては相続にも影響します。 例えば委託者を甲、相続人に乙と丙がいるところ、甲と丙が仲たがいをしたために丙は甲が亡くなったときに相続したくないと相続放棄をしました。この場合、信託契約の内容として第二次の受益者(受益者甲の承継人)として丙が指定してあれば丙は相続放棄をしたにも関わらず甲から財産(受益権)を承継してしまうのです。
家族信託の方法
家族信託された不動産の売却方法 家族信託をされた不動産を売却するときにはどのようにすすめていくのかを解説します。
家族信託の契約内容の確認 不動産の名義人である信託受託者に売却する権限があるかを確認しましょう 。信託契約による受託者の権限は信託条項によって定められるからです。信託登記をされたときに作成された信託目録をみてみましょう。受託者の権限は登記事項になっています。信託契約の際に受託者に売買についての権限が与えられていなければ不動産を売却することができません。不動産を売却することで信託をした目的を達する時には信託契約自体を解除して委託者名で売却することが可能です。売却後も信託を継続する場合には、信託契約を変更して受託者に売却の権限を与えることもできます。
売買契約の当事者 不動産を売却する権限を有している受託者が売買契約の当事者になります。不動産の売却仲介を依頼するための媒介契約や売買契約、不動産の引渡しなど全て受託者が単独で行なうことができます。ただし、この場合単に売主「甲」と記載するべきではなく、売主「受託者甲」と信託契約の受託者として契約などの行為をしたことをはっきりと記すべきです。
課税は誰に? 不動産の売却によって利益がでる場合には譲渡所得税を納めることになりますが、納税義務者は受益者です。既に説明をしていますように、信託財産の利益は受益者に帰属するからです。
まとめ
家族信託について、その概略と売却方法について解説しました。家族信託は成年後見制度を補完する自助の制度でもあり、遺言に代替えできる制度だとも言われています。しかし家族信託によって複雑な権利関係になり信託契約の定め方によっては思わぬ税金が課されるおそれがあり、また相続人などに過度の負担がかかってしまうこともあります。 家族信託を行なうには、家族信託に慣れている専門家に相談をしながら慎重に検討することが必要です。
建物が登記されていない!
売却できる?登記とは?
相続した実家を売却しようと調べてみたら登記がされていないことがわかりました。このような場合にそのまま売却できるのでしょうか? 今回は登記されていない建物をそのまま売却できるのか、登記する意味を解説します。
建物は登記されていなくても売却は可能
建物はたとえ登記がされていなくても売買の対象とすること自体は可能です。ただし、建物が登記されていないことで注意しておかなければならないことがあります。なお表題登記がされていない建物を「未登記建物」と言います。
未登記建物を売買するときの4つの注意点
建物の売買自体は登記をされていなくても可能ですが、以下のような注意点があります。 1. 売買の目的物をはっきりと特定することが必要 2. 買主が建物を使用する予定がなければ登記をする必要はない 3. 登記できない建物もある 4. 登記がされていないことによるデメリットがある
1.売買の目的物をはっきりと特定することが必要 売買契約書を作成し、契約書には売買目的の建物が建っている場所(地番)、構造、面積などによって売買の目的物をはっきりと特定することが必要です。売買の対象がきちんと特定されていなければ後日トラブルになるおそれがあります。この点、登記がされていれば登記記録に基づいて記載することで特定できますから特定が容易になります。
2.買主が建物を使用する予定がなければ登記をする必要はない 買主が建物を利用する予定がなく建物を取り壊す場合には改めて登記をする必要はありません。建物登記がしてあれば建物が滅失したことの登記が必要になりますから、あえて売買のために表題登記をすると余分な手間と費用がかかります。このように買主が建物を使用しない場合には建物の登記がされていないことは支障になりません。建物を取り壊せば解決するからです。
3.登記できない建物もある 登記できる建物は「不動産である建物」です。不動産といえるかは様々な要件がありますが、基礎がないプレハブや簡易な物置などは不動産とはいえないため登記できません。
4.登記がされていないことによるデメリットがある 登記されていない建物を売買するにはいろいろなデメリットがあります。次の項で改めて解説します。
登記されていないまま売却する5つのデメリット
建物の登記がされないまま売買する場合には、以下のようなデメリットがあります。 1. 登記されていなければ誰のものかわからない 2. 買主が登記するには売主の協力が必要 3. 買主が銀行から融資を受けられない 4. 固定資産税の納税者が変わらない 5. 第三者に対抗できない
1.登記されていなければ誰のものかわからない 登記がされていれば登記事項証明書をみることで所有者であることがわかりますが、登記がなければ果たして売主が本当の所有者かどうかが確認できません。売主が土地の所有者であっても建物は借地人の所有かもしれませんし、何代も前の故人が所有しているものである可能性があります。他人物の売買も可能であるとはいえ、買主が実際に有効に所有権を取得するために相当な苦労をするおそれがあります。
2.買主が登記するには売主の協力が必要 未登記建物を購入した買主が建物登記をするためには、売主の協力が必要です。建物登記をするためには申請人が建物の所有者であることを証明する必要があるからです。 例えば、建物の建築確認書のうえで建築主がAとなっていれば所有者はAであることが推定されます。建物工事が完了して工事会社から引き渡しをうけることでAが所有者になります。そしてAが亡くなった場合にはAの相続人が所有権を承継します。このような場合に所有権を証明するには次のような書類が必要です。
1) 建築確認書 2) 工事会社の工事完了引渡証明書 3) 亡Aの相続人全員がわかる戸籍などの相続資料 4) 相続人全員から買主に譲渡したことの証明書(印鑑証明書付き)
以上のような書類が必要になり、万一必要な資料をそろえることができなくて建物の登記ができない場合に、売買が終わった後であれば売主が必ず協力してくれる保証はなく資料がそろわない危険を買主が背負うことになってしまいます。このようなリスクを負わないためには、売買前にきちんと売主において建物登記を済ませておくことが重要です。
3.買主が銀行から融資を受けられない 建物が登記されていなければ買主は銀行から融資を受けられないおそれがあります。買主が銀行から不動産購入ローンを利用して借り入れする場合にはほとんどの場合、担保設定の登記が条件になるからです。そのため建物が登記されていなければ担保設定登記をすることができないことから銀行からの借り入れができなくなり売買代金を支払うことが困難になってしまいます。
4.固定資産税の納税者が変わらない 登記がされている不動産を売買して所有権移転登記を行えば法務局から市区町村役場に向けて通知がなされますから翌年から自動的に新しい所有者宛てに課税されます。しかし、登記がされていなければ市区町村役場では所有者が変わったことを把握できないことがあり、何もしなければいつまでたっても売主宛に課税されてしまいます。そのため未登記建物の所有権が移転したときには移転したことを市区町村役場に届け出る必要があります。 登記されていない建物を取り壊した場合も同様に、市区町村役場が、建物が取り壊されてなくなったことを把握できなければずっと課税されることになりますから、取り壊した場合にも念のために市区町村役場に届け出ておくと安心です。
5.第三者に対抗できない 登記の重要な効力に「対抗要件」が備わることがあります。対抗要件とは、第三者に対して自分の権利を主張することができる条件をいいます。 例えば、売主がA・B二人に同じ建物を売った場合には建物の登記を先にした方が所有権を有効に主張できることになります。登記がない建物を売買して、万一売主が他人に今回の売買対象である建物を重ねて売却をし、その他人が先に建物登記をした場合には買主は建物の所有権を取得できないことになります。敷地の土地と建物をセットにして購入したのに他人の建物の存在を認めざるを得ませんから重大な損失になってしまいます。また、借地上にある建物は建物の登記があることが借地権の対抗要件です。地主に対して借地権を主張するためには建物の登記を取得していることが絶対条件ですから、借地上の建物を売買する時には建物の登記は必須事項になります。
登記とは
さて、ここで登記とはどういったものなのかを解説します。 登記記録の構成 登記記録は3つの枠と附属記録とで構成されています。 1. 表題部 2. 甲区 3. 乙区 4. 附属記録
1.表題部 土地や建物の不動産がどこに(所在・地番)あり、何の用途で(地目・種類)、どのくらいの広さ(地積・床面積)で、建物はどのような構造であるかを表示しています。表題部登記記録の付属資料として土地測量図や建物図面が備え付けられています。
2.甲区 所有権や差押などが記載される枠です。
3.乙区 抵当権などの担保権に関する事項や借地権などの用益権などが記載される枠です。
4.附属記録 共同担保目録、信託に関する記録などがあります。
表題部がなければ甲区、乙区が編成されません。このため未登記建物のままでは所有権移転の登記や担保設定の登記ができないことになります。売買を行い、所有権移転登記をするためには建物の表題登記と売主名で所有権の登記がされていることが必要です。
未登記とは
「未登記」を今まで表題登記がされていないことを指して解説をしました。登記がされていない状態は変更があったことを自ら法務局に申請しない限り解消されません。 ・以前あった建物を取り壊したのに取り壊したことの登記(滅失登記)がされていない ・建物を増築したり一部取り壊したりしたことの登記がされていない ・建物の用途の変更(居宅から事務所への種類変更など) ・相続登記や住所変更登記 ・担保の抹消登記など売却に必要な登記がされていない
このような場合もいわば「未登記」の状態です。このうち、相続登記や住所変更登記、担保抹消などの登記は売買代金の授受に先立ってあるいは同時に必ず登記を行う必要がある事項です。買主が金融機関から融資を受けて担保設定を求められる場合には建物の登記事項について変更があればその変更登記をすることが求められます。
表題登記は義務
実は、表題登記は法律上必要な「義務」となっています。新築した建物を取得した日から1ヵ月以内に表題登記を申請することとし、その申請を怠った場合には10万円以下の過料により処罰されるおそれがあります(不動産登記法47条、164条)。
しかしながら実際には未登記建物は多数存在しています。 ・登記をする必要を感じない ・借入がないから担保設定の必要がない ・面倒だから ・費用がかかるから
未登記建物が多くある理由として、このように感じている方が多いこと、登記制度が変わった昭和25年以前に建てられた建物は新しい登記制度に移行する手続きがされていないことで未登記状態にあること、また当時は住宅ローンなど個人が銀行から借り入れる慣行がなかったために融資に伴う担保設定の必要がなかったという社会事情もあります。
登記の効力
登記の効力として対抗力、権利推定力、形式的確定力があると言われています。対抗力については先に解説した通りです。 権利推定の効力とは、登記された事項は真実であると推定されることを言います。形式的確定力とは、登記された事項は有効無効を問わずその登記事項を前提として次の登記に進まなければならないことをいいます。推定力と確定力によって、登記記録に所有者だと記録されていればその人が実体的な所有者であると推定され、万が一真実の所有者でなければ一度その人を抹消あるいはその人から移転する登記をしなければ真実の所有者の名義にすることができないことになります。
建物登記をする方法
建物の登記は所有者が自身で行なうことができますし、忙しいときや面倒に感じるときには専門家に依頼することができます。建物の表題登記の専門家は土地家屋調査士であり、権利に関する登記の専門家は司法書士です。
自分でする
登記の手続きは自分で行なうことが原則です。法務局のホームページに申請書の参考書式がありますから利用しましょう。 しかしながら、建物表題登記では次のような点が難しく感じます。建物全体が土地に対してどのような形で建っていて面積はいくらか、各階の面積と形はどのようになっているか、が登記事項になっています。それぞれの測量を行ない図面を提出しなければなりません。また申請人が所有者であることを証明する資料を準備する必要があります。新築であれば建築確認書、検査済証、工事完了引渡証明書などを準備します。年度が改まった建物の場合には固定資産税の課税証明書および納税証明書なども所有権証明書の一部として利用することができます。権利に関する登記申請は参考書式を参照すれば比較的容易にすることができます。ただし、実体的な権利の変動について注意をしなければなりません。相続については相続関係を把握することを難しく感じることが多いです。
土地家屋調査士に依頼する
測量をしたり図面を書いたりすることが難しい場合には土地家屋調査士に建物表題登記を依頼しましょう。建物の規模や複雑さによって費用は変わりますが、通常8万円前後から必要になります。
司法書士に依頼する
権利の登記には登録免許税を法務局に納める必要があります。本人が申請しても代理人が申請しても同様に必要な経費です。建物の所有権保存登記の登録免許税は原則4/1000の割合でかかりますが、新築住宅の場合には軽減措置が適用され1.5/1000の割合になります。この場合軽減されるための証明書を取得する必要があります。建物保存登記の費用は2万円程度が目安です。
まとめ
建物が未登記であっても売買自体をすることは可能であることがわかりました。しかし、未登記のまま売買を行なうと買主にデメリットがあることから、売主もトラブルに巻き込まれるおそれがあります。 未登記の建物を売買するにあたってどのようにするのがベストなのか、売買仲介を依頼する不動産会社に相談をしながらすすめていくことが大切です。
騒音が気になるためにマンションを売却、 理由は言うべき?
マンションに住んでみたけど騒音が気になるため売却したい。だけど、騒音が気になるから売却するとわかると高く売れないから黙って売った方が良いかも、と悩んでしまいますね。騒音が気になるマンションの売却にあたって気をつけるべきことを解説します。
告知義務と契約不適合責任
不動産売却は高額な取引契約となりますから責任も重大です。後日のトラブルを防止するためには、告知義務と契約不適合責任についての理解が必要です。
告知義務とは?
買主が「知っていたら買わなかった!」事実を伝える義務を言います。契約後の無用なトラブルを避けるために必要なことだからです。
不動産を売却する時には通常は不動産会社に売却仲介を依頼します。そして、不動産会社には宅地建物取引業法において告知義務があるとされています。一般に告知義務があるとされている瑕疵は次のような瑕疵です。
物理的な瑕疵 ○ 雨漏りがする ○ シロアリ被害がある 心理的な瑕疵 ○ 過去に自殺や殺人事件があった 環境的な瑕疵 ○ 近くにごみ焼却施設などの嫌悪施設があることや日照問題など
以上のようなものが瑕疵とされているなかで騒音問題は環境的な瑕疵 だと言われています。
契約不適合責任とは?
売主が種類、品質などに関して契約の内容に適合しない目的物を提供した場合に責任を負うことが2020年4月から民法改正によって定められています。 契約不適合責任は従来「瑕疵担保責任」とよばれていたものです。瑕疵担保責任は「隠れた瑕疵」について責任があるとされていましたが、契約不適合責任は「種類・数量・品質について契約の内容に適合しない」ことが問題にされます。 契約不適合責任は債務不履行の特則として位置付けられており、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除権などが認められます。
瑕疵のおそれがあれば不動産会社には必ず伝える
売却予定のマンションに気になる箇所があれば必ず不動産会社に伝えましょう。不動産会社は不動産売却のプロであり、その知見に頼るべきだからです。先のように不動産会社は告知義務を負っています。そのためには売却物件のことをよく知らなければなりません。不動産会社に物件の売却を依頼すると、物件の状況を把握するために不動産会社自身で調査するほか、売主に売却物件の状況報告書(告知書)の記載を求めることがあります。この告知書に対して、「よく覚えていない」「よく分からない」「不動産会社に任せるから適当に書いて」といって済ませたいかもしれませんが、よくわからないときでも不明点を含めて物件がどのような状態であるかを明確にしておく必要があります。明確に記しておかなければ、後日買主から「物件が契約の内容と合っていない」と売主に対して契約不適合責任を問われる可能性があります。不動産会社は売主から提供された告知書に基づいて、買主に告知するべき瑕疵にあたるのかを判断しますし、売却価格をどのくらいにすれば売却しやすいかを判断してくれます。その判断には不動産会社が蓄積してきたノウハウが左右します。後日の紛争を避けるために売主自身で告知の要否を判断することは危険ですからやめましょう。
騒音の基準
どのくらいの音量レベルであれば「騒音」といえるのか、その基準について解説します。
環境省の基準 どのくらいの大きさの音が「騒音」になるのか、環境省が一定の基準を公表しています。環境省が公表した基準によると主に住居とされる地域では昼間は55db以下、夜間では45db以下としており、これを超えると騒音になるとされています。 環境省_騒音に係る環境基準について
音の気にしかたは人それぞれで違う しかしながら、騒音と感じるかは人それぞれで異なります。赤ちゃんの泣き声や子どもの足音、ピアノなど楽器演奏の音に対して非常に不快に感じる人がいる一方で、あまり気にしない人もいます。 このように環境省が示す基準を超えているから騒音であるか、超えていないから騒音ではないと一概に決めつけることはできません。
上手に売却する方法6つ
騒音が気になるときに上手に売却するには、以下の点を考慮してください。 1. マンションの管理組合に相談する 2. 防音対策 3. いつ、どのような騒音がするのかまとめる 4. 購入予定者に聞いてもらう 5. 売買契約書に明記する 6. 値引を想定して価格決定
1.マンションの管理組合に相談する 騒音問題を解決できないかマンションの管理組合に相談をしてみましょう。直接売主が騒音をだしている人と交渉すると買主が困ることがあるからです。騒音を出している人が上下階や隣人であれば買主が入居した後に、売主と上下階や隣人との関係がそのまま影響するおそれがあるからです。管理組合が第三者の立場で公平に判断したうえで仲裁をしてくれれば円満に解決する可能性があります。
2.防音対策 防音カーテンや防音壁、遮音シートなどを設置して防音対策をしてみましょう。マンションの場合には防音対策について管理組合の承認が必要なこともありますし、費用が高額になると売却損になることもあります。防音対策を施す前に売却を依頼する不動産会社に相談をしましょう。
3.いつ、どのような騒音がするのかまとめる 騒音がいつ、どのくらいの音量でするかを記録しておきましょう。できるだけ明確に記録しておくことで説明責任を果たすことができます。自治体によっては音量計を貸し出してくれるところもあります。明確に記録して告知書に明記します。
4.購入予定者に聞いてもらう 購入希望者が内覧する際に実際に聞いてもらうことができれば納得して購入してもらえますから、後日のトラブルを防ぐことができます。
5.売買契約書に明記する 騒音を気にして売却することを売買契約書に明記しましょう。文書によって明確にすることで後日のトラブルを未然に防ぐことができます。
6.値引を想定して価格決定 騒音の程度によりますが、値引が予想される場合は値引額を想定して売り出し価格を決めましょう。はじめから売出価格を下げて売りだすよりも、「交渉の結果値引きになった」方が、購入希望者が納得しやすいからです。
まとめ
マンション売却に際して迷ったときには不動産売却のプロである不動産会社に相談しましょう。不動産会社では今までの実績によって培ったノウハウがあるからです。売主が気にしている騒音は果たして告知が必要な程度の騒音なのか。いくらくらいで売りだせば売却しやすいのか。騒音問題を解決する手段の有無などについて、培ってきた知見によって解決してくれます。
雨漏りする家を売りたい!
注意点と売却方法も紹介します
実家を相続したけれど雨漏りがしていた。雨漏りがあるのはわかっているけど安くなるといやだから黙って売ろうか・・・ 不動産を売却する機会は誰もが多くあることではありませんから悩むことは多いですが、雨漏りをしていたとすればなおさら心配は多くなります。
雨漏りがわかっていれば必ず告知を!
売却しようとする家が雨漏りすることがわかっていれば必ずその事実を、仲介を依頼する不動産会社や買主に伝えなければなりません。
契約不適合責任
売買契約を行なう当事者間には売買の目的物が契約内容に適合しない場合に、その履行の追完(補修・代替物の交付など)、代金の減額・返金、損害賠償や契約解除をする責任があります。この責任は売主が知っていたか、瑕疵が外観からわかるものかを問いません。その瑕疵があることが契約に適合しているか否かの事実が問題になります。契約不適合責任を負わない特約も当事者間では有効ですが、売主が知っていて告知しなかった瑕疵は免責されません。
告知義務
売買仲介を担当する不動産会社には宅地建物取引業法によって告知義務があると定められています。
告知しないことのペナルティ
雨漏りは建物の価値を下げる「瑕疵」となり、雨漏りをする家は「物理的瑕疵物件」となります。たとえ雨漏りを修繕したとしても告知義務はなくなりませんから雨漏りしていることを必ず伝えましょう。万一引き渡しまで誰にもわからなくても契約不適合責任を追及されて、損害賠償や売買契約の解除などを請求されるおそれがあります。悪質だと判断されれば詐欺罪に問われてしまい、お金の問題だけでは済まなくなってしまいます。
売却前に修復するべき?3つの検討事項 いっそ売りに出す前にリフォームをして売却すればよい気もしますが、その前に以下の点を検討してください。 1. 雨漏りの二次被害・・雨漏りのある家はカビやシロアリの危険もある 2. リフォームする前に考えること a. 雨漏りの完全修復は難しい b. 住宅診断をうける c. 修繕費用はどのくらい必要? d. 修繕しても必ず売れるとは限らない 3. 不動産会社に相談する
雨漏りの二次被害・・雨漏りのある家はカビやシロアリの危険もある 雨漏りがあったことでカビが生えたりシロアリが発生していたりと雨漏りによる二次被害が考えられます。雨漏りがあったことで湿度が高くなりシロアリが好む環境になっていたり、柱や梁など建物の躯体部分が腐食していたりすることもあります。このようなことがわかっていればもちろん告知義務の対象になりますが、外観からわかりづらいために売主も気がつかずそのまま売却してしまうことがあります。しかし、このような場合であっても契約不適合責任を免れることはできませんから充分に注意をしなければなりません。
リフォームする前に考えること
<雨漏りの完全修復は難しい>
雨漏りの原因はいろいろとあります。建物の老朽化によるもの、外壁やベランダ、バルコニーの防水塗膜の劣化やひび割れ、はがれ、穴あきなど。雨漏りの原因となる全ての要因を失くさなければせっかく修理をしても雨漏りが再発してしまいます。雨漏りの修復を依頼するには複数の工事会社から相見積もりをとることが必要です。事前に確認をして、追加の工事費用の請求や工事の遅れが発生しないように充分に注意をしなければなりません。
<住宅診断をうける>
雨漏りを修復した後は住宅診断を実施して売りに出すことで、購入を検討する人も安心できますから売却価格も高くなることが期待できます。
<修繕費用はどのくらい必要?>
雨漏りの修繕にはちょっとした修繕でも数万円~数十万かかりますし、屋根を全面的に改修する必要や雨漏り以外に修繕箇所があるとき100万円を超えることもあります。
<修繕しても必ず売れるとは限らない>
高い修繕費を払っても必ず売れるとは限りませんし、修繕費用は持ち出したために赤字になるもあります。
<不動産会社に相談する>
売却を検討しているならば、売却を依頼する不動産会社に建物をどのようにして売却することがよいのか、売却方法も含めて相談をしてみましょう。売却する方法もいろいろとありますから項を変えて紹介します。
売却方法5つを紹介します。
1. 雨漏りを承知のうえで購入してもらう 2. 雨漏りを修繕して売却する 3. 家を解体して売却する 4. 「更地渡し可」物件として売り出す 5. 不動産会社に買取を依頼する
1.雨漏りを承知のうえで購入してもらう 購入希望者によっては、雨漏りは気になるけれど自分が工事を発注・監督をしたい、雨漏り修理のついでに自分の思うようにリフォームしたいと希望する方もいます。
2.雨漏りを修繕して売却する 建物が新しく軽微な雨漏りであれば修復をして売却することも考えられます。住宅診断をうけてその証明書をつけることができれば購入希望者は安心して購入することができます。
3.家を解体して売却する 建物が古い場合には修復するよりも家を解体して更地にしてから売却することも考えましょう。更地であれば購入者が思い通りの家を建てることができますから、購入者を広く求めることができます。更地にすると軽減を受けていた土地の固定資産税があがりますから注意しましょう。
4.「更地渡し可」物件として売り出す 建物を壊してもよいけれどそのままの状態で売却活動の様子をみたい場合には、売却の条件に「更地渡し可」の物件だと明示して売却活動をするように不動産会社にお願いしましょう。建物がほしい人と土地だけを希望する人の両建てで購入希望者を求めることができます。
5.不動産会社に買取を依頼する 売却を急ぐときには、不動産会社に直接買取できないか、相談してみましょう。自社で建売住宅を分譲する会社なら建物を取り壊して再築するため建物の瑕疵は問いません。 なかには事故物件を専門に買い取る不動産会社もありますから、不動産の売却をとにかく急いでしたいときには不動産会社に直接買取を相談することで早期に売却できる可能性があります。
まとめ
雨漏りしていることは不利な事実ですが、不利な事実を隠して売却するとトラブルのもとになってしまいます。 誠実に売却することを考え、不動産売却のプロに相談することで不動産会社は豊富な知見から良い方策を見つけ出してくれます。
土地が売れない!理由と対策
利用する予定がないから手放したいと思ってもなかなか売れない土地があります。どうして売れないのか、その理由を把握することで対策を考えることができます。 土地を持ち続けていることで発生するリスクもありますから、どのようなリスクがあるのか売れない土地を上手に手放す方法まで解説します。
売れない土地と売れる土地
土地には売れやすい土地と売れにくい土地があります。売れる土地と売れない土地の特徴を解説します。
売れる土地と売れない土地
売りに出しているからには商品ですから、需要とのバランスで売れ行きも変わります。すなわち、売れる土地は需要があるから売れるのです。
次のような土地は需要が高く売りやすい土地といえます。
1. 利便性が高い土地 a. 駅から近い b. 大型商業施設が近い c. 学校や保育園が近い 2. 家を建てやすい a. 建ぺい率や容積率が高い b. 整形地 c. 用途地域の制限が少ない
このような土地は購入後利用しやすく人気があります。反対に購入後の利用が難しい土地は敬遠されてしまいますから需要が少なく売れにくい土地になります。
土地が売れない6つの理由
売れない土地には買い手が躊躇する理由があります。
1. 土地のエリアに問題がある 2. 法律上の制限がある 3. 土地の形状に難がある 4. 土地の地盤に問題がある 5. 値段が高い 6. 不動産会社の扱いで優先順位が低い
以上のような土地は購入しても利用が難しいため、今後の見通しが立てにくく維持が難しい土地です。
1.土地のエリアに問題がある 売れる土地のような利便性がない土地や、近くに線路や汚水場などの嫌悪施設がある場合、また電気・ガス・水道・電話などのインフラが整っていなければ買い手がなかなか見つかりません。最近ではインターネットを利用する人が増えていますから、インターネット回線が使えることも売りやすくするための条件になります。
2.法律上の制限がある 農地には農地法の規制があるため農地以外に転用することが難しいために売却が難しくなります。 市街化調整区域にある農地は転用がさらに難しくなります。 家を建てるためには接道していなければならないので接道する道路がない場合には、土地は買い手がなかなかつきません。
3.土地の形状に難がある 正方形に近い整形地ほど利用しやすく売れやすい土地といえます。逆に細長い土地や旗竿地、角が残る土地などの不整形地や法面が多い土地などは有効利用できる面積が少なくなります。 土地が道路より下がっている場合には、道路面までかさ上げする費用が余分にかかってしまいます。 狭すぎる土地や逆に広すぎる土地も今後の利用が見通しにくい土地です。 放置されて土地が荒れている状態では現地を見た印象が悪く購買意欲をそいでしまいます。 境界が確定していない土地や隣地から構造物が越境している場合も売主がきれいに整えておかなければ買主が迷惑をしますから、きちんとしてから売却することになります。
4.土地の地盤に問題がある 盛土や埋立地などは地盤が弱い可能性があります。最近は自然災害が多くなっていますから、土地の崩落や液状化を心配されている方が増えています。また土地に異物が埋設されているおそれや土壌汚染が心配される場合も売却しにくくなります。
5.値段が高い 近隣の相場と比べて売出価格が高過ぎる場合も買い手はなかなかつきません。自分でもインターネットや新聞広告などで近隣の相場感を把握するように努めましょう。
6.不動産会社の扱いで優先順位が低い 不動産会社に問題がある場合もあります。不動産会社は利益を追求しますから、自社の物件や売りやすい物件を優先してしまい、後回しにされている場合もあります。不動産会社が得意とする分野もあります。不動産会社に売却を依頼する時には、複数の不動産会社に打診して得意分野を確認し売却方針を確認したうえで依頼しましょう。
手放す方法
1.難点を改善する 売れない理由にあたる点はありましたでしょうか。 境界が確定していなければ境界確定をして敷地面積を明確にします。隣地からの越境があれば隣地の所有者と撤去することの覚書を作成しましょう。土壌汚染や地盤が問題になりそうであれば地暦調査や地質調査を行ないます。隣地の所有者に購入を打診することも有効です。隣地であれば有効面積が広がって利用しやすくなりますから一般に売りだすよりも買ってくれる可能性は高くなります。建物が古くなっていれば建物を取り壊して更地にして売却する方法もあります。不動産会社の販売方法に不満がある場合は、複数の不動産会社に売却を依頼してみましょう。これらの対策をしてもなお売れない場合や、立地や法律上の制限があるために売れない場合は個人では解決できません。売出価格を見直すことを考えてみましょう。
2.売却方法を変えてみる 地方自治体などが空き家バンクの登録をしています。空き家バンクはインターネットに掲載されて全国から興味がある人が閲覧していますから購入希望者が現れる可能性が広がります。また不動産会社に直接買い取ってもらえないか相談してみましょう。不動産会社にはノウハウが蓄積されていますから有効利用ができる方策をもっていて売りにくい土地でも買い取ってくれる可能性があります。
3.土地の他の利用方法を考える 売れにくい土地であれば自分で活用できないか再考してみましょう。太陽光発電などに利用できる土地であれば売却しないで持ち続けることも可能です。
贈与・寄付
買い取る人がいない場合に手放してしまうには、贈与や寄付ができないか検討してみましょう。隣地の人がお金をかけてまで欲しくはないけれど無償ならもらっても良いと言う可能性があります。贈与や寄付を行なうときに気をつけなければならないことは、もらった人に贈与税がかかることです。また贈与した先が一般企業であればみなし譲渡所得税が寄付した側にかかるおそれがありますから注意しましょう。自治体が寄付を受け取ってくれればよいのですが、自治体は寄付を受けると固定資産税が減収になり維持費用がかかるため寄付をなかなか受け付けてくれません。
取得しない
売れない土地とわかっていて自分でも利用価値がなければそもそも相続しないことも選択できます。相続放棄をすることです。ただし相続放棄は故人の全財産をいらないと放棄することになりますから、市街地にある価値がある不動産や預貯金などの財産は相続するけれど山林やいなかにある土地は相続しないと選択することはできません。相続放棄は、故人が亡くなってから3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てる必要があります。相続財産の一部を取得したり処分したりした場合には相続放棄ができなくなります。また相続放棄をしても財産管理義務が残る場合がありますから注意しましょう。
売れない土地を保有し続けるリスク
売れない土地をそのままにしておくことで次のようなリスクがあります。 1. 固定資産税がかかり続ける 2. 土地の崩落 3. 建物があれば老朽化 4. 不法投棄・犬猫の糞尿放置で隣人から苦情 5. 人口減少で価格も下落
1.固定資産税がかかり続ける 不動産は所有しているだけで利益を生み出さなくても課税されます。土地に建物があれば土地の固定資産税は軽減されますが、建物が老朽化することによって特定空き家に指定されると軽減されなくなります。
2.土地の崩落 大雨や地震などの自然災害によって、がけ崩れや土地が崩落して損害が発生すれば損害賠償責任が発生するおそれがあります。
3.建物があれば老朽化 建物があれば定期的に維持管理をしなければなりません。管理していない空き家であれば犯罪に利用されるおそれもあり放火される危険性もあります。また建物や塀が倒壊して通行人にけがをさせる恐れがあります。けが人がでれば損害賠償責任が発生します。
4.不法投棄・犬猫の糞尿放置で隣人から苦情 空地や空き家にゴミや不用品を不法に投棄されたり遺棄されたりする恐れがあります。犬猫のたまり場になってしまい悪臭が発生するなどの問題があれば苦情は所有者に来ますし、処理も所有者の責任で行わなければなりません。
5.人口減少で価格も下落 地方では人口減少が避けられません。土地の需要は人口によるところが多く、人口が減少することで需要が減り不動産の価格も下落します。
まとめ
売れる土地・売れない土地にはそれぞれ理由があります。不動産売却に慣れた信頼できる不動産会社をみつけ、相談しながら上手に土地を手放す方法を考えましょう。
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