契約解除の種類と違約金 売主が知っておきたい注意点

契約には解除権があり、どのような契約においても解除に関する取決めを、契約書において定めておきます。不動産売買契約は取引金額が大きなものであり、契約解除に係る違約金なども大きなものとなります。

ここでは契約解除の類型にしたがい、解除権の内容や範囲について解説します。売買契約時の理解に役立ててください。

 

 

契約解除の種類

契約解除には6つのパターンがあり、売主・買主に双方に解除権があるものと、いずれか一方にしかないものがあります。

また違約金や損害賠償を伴うものと、白紙解除になる場合があり、それぞれの違いを理解しておく必要があるのです。

 

手付解除

売主・買主には契約締結後も契約を解除する権利があり、それぞれ次のような方法によります。

      1. 売主は受領した手付金額の2倍の金額を買主に支払い解除ができます
      2. 買主は支払った手付金を放棄することにより解除できます

解除できる期間は、相手方が契約の履行に着手するまで、または契約書において定めた期日までとなります。

「相手方が契約の履行に着手するまで」とは

法律用語なのですこし解釈が面倒なのですが、たとえば次のようなことは「履行の着手」とは認められていません。

    • 売主が引っ越しの準備をはじめた
    • 買主は決済の準備をするため定期預金を解約した

履行の着手については明確な基準がなく、たびたび裁判にもなっています。

参考:一般財団法人 不動産適正取引推進機構「手付解除と「履行の着手」についての一考察」

以上のように「履行の着手前」をもって手付解除期限とするのは実務上問題があり、売主・買主の合意により具体的な期日を指定することが望ましいといえます。

 

 

引渡し前の滅失・損傷による解除

地震・台風などの天災や火災などにより対象不動産が滅失または損傷が生じた場合、買主の購入目的が満たせなくなります。

軽微な損傷であり補修によって当初の目的を満たすことができる場合は、売主の負担により補修をおこなうことが一般的で、契約条項にはそのような記載がされています。

しかし損傷が激しくまたは倒壊・崩壊など滅失した場合は、補修により復旧することは負担が大きく合理的でないことから、売買契約を白紙解除することが一般的となっています。

また滅失や損傷が、売主・買主どちらの責めに帰すことができない事由であることは、いうまでもありません。

契約は白紙解除なので売主は受領した手付を、無利息で買主に返還します。

 

 

契約違反による解除

売主と買主のどちらかに債務不履行があった場合、相手方は自分の債務を履行したうえで相当な期間を定めて債務の履行を催促します。しかし債務履行の催促に応じない場合には、契約を解除できます。

また、債務を履行しなかった方に責めがある場合に限り、違約金の請求ができますが損害賠償などの請求はできません。

すでに買主に所有権が移転され引渡し済の場合には、抹消登記のうえ物件の返還をおこなわなければなりません。

このような内容の契約条項が記載されますが、たとえば売買代金を支払ったのに所有権移転をしない。あるいは所有権移転をおこなったのに売買代金を支払わないなど、わかりやすい契約違反はすくなく、契約違反と認定するには裁判による判断を待たなければならない事例が多いものです。

また契約違反と認定された場合であっても、損害額を簡単に決めることがむずかしく、あらかじめ設定した損害額を「違約金」として損害を補填する方法がとられています。ただし、契約不適合責任による解除の場合は違約金を超える損害賠償が認められるようになります

 

 

反社会的勢力排除による解除

平成16年から平成23年にかけて、全国の自治体(特に都道府県)において制定された「暴力団排除条例」にもとづき、売買契約書に「反社会的勢力排除」に関する契約条項が加えられるようになりました。

売主または買主が契約条項に違反していた場合、契約は強制解除され違反した当事者には違約金の支払いと、制裁金の支払いも義務づけされています。

一般的に違約金は売買代金の20%とし、制裁金は売買代金の80%とされています。

売主が宅地建物取引業者であり買主が反社勢力であった場合は、売主は制裁金を受け取ることができないので注意が必要です。これには理由があり、宅地建物取引業法第38条によります。

宅地建物取引業法第38条

宅地建物取引業者が売主の場合、損害賠償や違約金を定める場合、売買代金の20%を超えてはならない、と規定されています。

参考:e-Gov「第38条 損害賠償額の予定等の制限」

 

 

融資利用の場合による解除

買主が融資を利用して不動産を購入する場合、予定していた融資が受けられず売買代金の支払いができなくなります。このことは買主に責めがあることは少なく、やむを得ないケースがほとんどです。

このとき売買契約は自動解除となり契約は白紙に戻り、売主は受領した手付を無利息で返還します。

ただし、買主が故意に融資審査を遅らせ期限までに融資承認が降りないようにした、あるいは虚偽の書類を提出したことにより承認されなかった、などの場合は自動解除になりません。

このような特約条項を契約書に記載し、買主保護の措置をとるのですが、融資利用の特約による解除については期限を設けることが一般的です。

期限が経過したのちに融資が承認されなかった場合は、この特約は無効となるので契約前に買主との協議を充分おこない、期限を設けることが大切です。

 

 

契約不適合責任による解除

取引対象不動産に不具合や数量・品質・種類など、契約目的と異なる内容があった場合、買主は契約解除することができます。

契約解除には損害賠償請求も加わることがあり、売主は誠実な取引と対象不動産の状況を正確に買主に伝える必要があります。契約解除以外にも次のような責任が売主にはあります。

      1. 契約不適合部分(契約の内容と異なる部分)については買主から修補を請求されます
      2. 契約不適合部分に売主の責めがない場合以外、損害賠償請求されます
      3. 契約不適合部分が軽微でない場合、買主から契約解除されます
      4. 契約解除にあたっては損害賠償請求があります
      5. 契約不適合に関し、損害賠償や契約解除ではなく代金の減額請求されることもあります

売主には重い責任がありますが、ただしいつまでもこの責任をもつことはなく、民法では1年以内とされており、特約により引渡し後一定期間を定めることができます。さらに物件の状態や売主の事情によって免責とすることもあります。

 

 

契約解除の方法

契約解除すべき状態となったときは、文書でおこなうことが原則です。さらに契約解除は裁判に発展する場合もあり、証拠能力を満たすため「配達証明付き内容証明郵便」でおこなうことが望ましいです。

仲介する不動産会社に口頭で伝え、間接的に相手方に伝える方法は有効といえず、必ず直接意思表示することが重要です。

ただし契約解除の決断をするにあたっては、不動産会社と相談し場合によっては不動産会社の顧問弁護士などとも相談のうえ、慎重に決断するようにしたいものです。

契約解除は契約よりも厳密に判断しなければなりません。契約には解除権が留保されていますが、契約解除は撤回ができないのです。契約解除の意思表示が相手に到達して時点で解除は有効とされ、そのご一方的に撤回はできないと民法540条に定められています。

 

 

まとめ

契約解除6つの類型について解説しました。白紙解除になるケースや違約金・損害賠償・制裁金が課されるケースもあります。

契約にさいしては契約解除に関する約束ごとを理解し締結することが重要です。

とくに「契約不適合責任」はこれまで「瑕疵担保責任」といわれていましたが、2020年から変更になった条項です。

売主の責任範囲が広がりましたので、充分理解していただき契約に臨んでください。

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