いわきには「一山一家」という言葉が伝わっています。これは「同じ山で働く人たちは、みんなひとつの家族だよ」と、仲間たちの団結を表す言葉です。ここで言う山とは、いったい何を指しているのでしょう?

炭鉱の街ならではの言葉

いわきにはかつて「常磐炭鉱」がありました。福島県富岡町から茨城県日立市まで広がる、大規模な炭鉱です。常磐炭鉱には全国各地から労働者が集まり、みんなが同じ炭鉱住宅で暮らしていたといいます。人々が同じ山で共に働き、同じ住宅で暮らすうちに、常磐炭鉱には「この山に関わるすべての人はひとつの家族、みんなで助け合おう」という精神が根付いていきました。これを表現したのが「一山一家」なのです。

炭鉱の過酷な労働環境において、一山一家の精神が支えとなり、常磐炭鉱は大きく発展していきました。しかし、高度経済成長期にエネルギー革命が起き、石炭から石油へと需要が転換したことで、常磐炭鉱は輝きを失ってしまいます。

1976年、常磐炭鉱はその歴史に幕を下ろしました。「一山一家」という強い言葉をこの地に残して。

現在、炭鉱があった常磐地区の中心部は「いわき湯本温泉郷」と呼ばれる温泉街になっています。最寄りの湯本駅から歩いて行ける、気軽な温泉街です。その近くでは、地元の人々から親しまれる「温泉神社」が街を見守っています。

常磐炭鉱の流れを汲む「スパリゾートハワイアンズ」は、各地から観光客が訪れる、大人気のテーマパークです。ここには一山一家の精神が引き継がれており、東日本大震災からの復興時には、強い団結力の源となりました。

常磐地区の総合病院である「常磐病院」を経営するときわ会グループも、一山一家の理念を大切に、いわき市の医療を支えています。常磐炭鉱がその灯を消してから、半世紀近い時間が流れた現在でも、この地には一山一家が根付いているのです。

常磐地区では今後、いわき湯本温泉郷と湯本駅前を中心とした再開発が始まります。きっと一山一家の団結力で、魅力的な街へと生まれ変わっていくことでしょう。

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