仙台駅からバスで20分、仙台市太白区の大年寺山公園内に「仙台市野草園」があります。毎年3月20日から11月30日が開園期間となっており、主に東北地方に生息する野草を観察することができます。仙台市初めての植物園として1954年に開園し、2000年に仙台市の「わがまち緑の名所100選」に選ばれました。今日は緑滴る「野草園」の様子をご紹介します。

萩のトンネル

野草園に入って左手には「ハギ」を這わせたアーチがあります。宮城県の萩は古来歌枕にも詠まれ、県花や仙台市の花にも指定されているゆかりの深い花。秋には「萩まつり」と称して仙台フィルの演奏や合唱もこの「野草園」で開催されています。いまはまだ花期ではありませんが、みずみずしい葉がたおやかに風にそよぐ様は涼感を誘います。

8月はヤマユリの花盛り

今しか見られない花々を一度に観察できるのが野草園の魅力です。今はヤマユリの花盛り。園内のどの道を歩いていても強く甘いユリの香りが漂います。豪奢で華麗な花ですが、鱗茎はいわゆる「ユリ根」として食べることができ、「料理ユリ」と呼ばれることもあるのだとか。

涼しげな音を響かせる水琴窟

野草園内には水琴窟もあり、水をすくって地面にこぼすとりんりんと涼しい音を響かせてくれます。ただし蜜を吸いに来ている蜂が水を飲みに来ていることがありますので、刺されないようくれぐれも気を付けてくださいね。

「仙台市野草園」にはNHKの連続テレビ小説『らんまん』で主人公のモデルになった、植物学者の牧野富太郎博士が発見した笹が植えられています。この笹は宮城県と岩手県南部にのみ自生しており、昭和2年に博士により仙台市内で発見されました。研究を献身的に支え続けた糟糠の妻である壽衛(すえ)が昭和3年に亡くなったため、長年の感謝を込めてこの笹に妻の名をつけたと言われています。美しい花が咲くわけではありませんが、控えめで風雪にも耐える強さを持った笹に、辛抱強く寄り添ってくれた亡き人の姿を重ねてみたのかもしれません。

仙台市野草園では他にも高山植物や水生植物エリアなど、環境別にさまざまな植物を楽しむことができます。仙台の四季の移ろいを可憐な山野草で感じてみてはいかがでしょうか。