二世帯住宅で
親が亡くなったらどうする?

親と同居すると、高齢の親の世話をしたり孫の面倒をみてもらったりできるので、親にとっても子にとってもメリットがあります。

完全分離型や一部共用型の二世帯住宅にすればそれぞれのプライバシーも保てるメリットもあります。

しかし、万一親が亡くなったときには、二世帯住宅ならではの問題点もあるのです。

今回は、二世帯住宅にしていて親が亡くなったときにどのような問題点があるかを解説します。

二世帯住宅の3つの類型

二世帯住宅には間取りからみて次の3つの類型があります。

  • 完全分離型
  • 一部共用型
  • 完全同居型

完全分離型

玄関が別々になっていて中でも行き来ができない仕様になっています。

完全に独立して生活できるので、プライバシーが保たれるメリットがあります。

完全分離型の建物は登記をするときに「区分建物」として登記をすることもできますが、相続したときに「小規模宅地の特例」が使えなくなるデメリットがあるので注意しましょう。

一部共用型

一つの建物の一部を二世帯が共同して利用します。

玄関は別々になっているけれど内部で行き来できるようになっていたり、玄関は一つだけど内部は別々に生活できるようになっていたりするタイプです。

ある程度のプライバシーは保ちながらお互いが顔を合わせやすくなるので家事や育児などを共同してすることも可能です。

完全同居型

二世帯が完全にひとつ屋根の下で生活する「サザエさん」的な類型です。

亡くなった親世帯の処分の方法

親が亡くなった後に親が生活していた建物を処分する方法は以下の5つになりますが、上記の類型のどれにあたるかによって処分方法が制限されます。

  • 親世帯の部分を売却する
  • 親世帯の部分を賃貸する
  • 全部まとめて売却する
  • 全部まとめて賃貸する
  • そのまま住み続ける

部分共用型あるいは完全同居型の二世帯住宅では、親世帯の処分を分けてすることができないので親世帯の部分だけを売却または賃貸できるのは完全分離型に限られます。

また、完全分離型の家全部を売却するときの購入希望者は同じように二世帯住宅を求めている方や住居に利用しない部分を賃貸にしたり事務所に利用したりする方、リフォームを前提として購入する方など限られているため市場が狭くなり売却しにくいと言えるでしょう。

二世帯住宅の相続はトラブルになりやすい?

亡くなった親に十分な資産があれば不動産と預貯金とに分けて相続するなど、遺産分割を行いやすいといえます。

ところが、相続財産が不動産だけだときれいに分割するのが難しいためトラブルになりがちです。

共有で相続することもできますが、その場合には売却や賃貸など処分するときに共有者全員の同意が必要なため意見が合わずに何もできないようになるおそれもあります。

二世帯住宅の場合には、一方は親と(半)同居していて他方は遠隔地に住んでいることが多いため意見に食い違いが生じやすくなります。

「自分が親と(半)同居していて親の面倒をみてきた」「(半)同居していて親から資金援助や孫の世話をしてもらってたくさんの恩恵を既に受けている」など、お互いがそれぞれ自分だけ損をしているように思いがちになってしまうのでしょう。

区分建物にしてあれば自分が現在居住している部分は自分が所有し、親が居住していた部分は他の兄弟姉妹が相続するように分けて相続できますが、二世帯住宅を共有している場合には他の兄弟姉妹と共有することになり、先のように同意が必要になるため、すぐに現金化したくても難しくなってしまうことになります。

区分建物だと小規模宅地の特例が使えない

二世帯住宅が完全分離型で「区分建物」として登記してあれば「小規模宅地の特例」が利用できません。

国税庁の令和3年分「相続税の申告事績の概要」によると相続税を払わなければならない方の割合は9.3%であり100人のうち10人弱と低い割合ではあるものの相続税のことも念頭に置いて二世帯住宅を考えるのが得策でしょう。

令 和 3年 分 相 続 税 の申 告 事 績 の概 要

ただし、区分建物にした方が建築時に有利な場合もあるため今から二世帯住宅を建築しようとする方で判断が難しい場合には税理士などの専門家に相談してみましょう。

小規模宅地の特例とは

小規模宅地の特例とは、親が住んでいた家を相続したときに土地の評価を最大8割減額できる特例です。

例えば評価額が1億円の土地であれば8,000万円減額されるので相続税は2,000万円の土地として計算されます。

この特例が使えなければ相続税を納めなければならなかったのに特例のおかげで相続税を免れることができる場合もあるでしょう。

なお、この小規模宅地の特例は、親が事業をしていた土地や賃貸していた土地でも利用できます。

区分建物の場合

完全分離型の建物は家全体を共有にすることも区分建物として別個の建物として登記することもできます。

区分建物の代表的な例はマンションを思い浮かべるとわかりやすいでしょう。

同じマンションの1階101号室を親が所有していて12階1201号室を子が所有しているときにも小規模宅地の特例を認めるのはおかしいのではないか、との見解から親子二代の二世帯住宅であっても「区分建物」だと「認めない」こととされています。

No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)|国税庁

このように二世帯住宅の場合には、登記の仕方で税金の課税関係が異なってくるので注意しましょう。

なお、平成26年までは完全分離型の二世帯住宅では共有の場合でも小規模宅地の特例を利用できなかったのですが、現在はこの制限はなくなりました。