離婚するときの財産分与で家はどうする?

思いがけず夫婦関係がギクシャクしてしまい、離婚をしなければならなくなってしまうこともあります。
気持ちの整理がつかないまま、話し合うのも難しいなかで話し合わなければならないことがたくさんあるのも離婚の真実です。
この記事では、離婚をするときの財産分与の進め方や家の処分方法について解説します。

離婚による財産分与は「折半」

離婚による財産分与をするときは持分割合にかかわらず2分の1ずつに分け合うのが原則です。

  住宅を取得するときとの違い

   住宅を購入するときには自己資金を出資する方や住宅ローンの債務者になる方の持分になります。
   たとえば、3,000万円の家を購入するために、夫が手持資金1,000万円、夫が債務者になって1,000万円を借入れ、妻も1,000万円借入れをした場合の持分 
   割合は夫が3分の2、妻が3分の1に割合になります。
   このように決めなければ贈与税がかかるおそれがあるからです。

    財産分与の考え方

   財産分与による清算を考えるときには以下の3つの考え方があります。

   1. 清算的財産分与
   2. 扶養的財産分与
   3. 慰謝料的財産分与

   清算的財産分与とは、夫婦が婚姻中に財産を形成していくには一方の働きだけではなく他方の協力が必要なので、この貢献を評価して清算しなければ
   ならず、特別な事情がなければ2分の1ずつだと推定されるとするものです。
   このことから先の例で夫が3分の2、妻が3分の1になっている家についても同様に2分の1ずつだとして差額を清算することになります。
   扶養的財産分与とは、夫婦の一方が離婚をすれば経済的に困る場合に支援をしようとする考え方です。
   離婚をするときに財産分与をする財産がない場合や慰謝料が発生しないことがあります。
   また子供が幼くて子供の養育のためにフルタイム勤務できないことや高齢や病気のために働くことができないこともあります。
   このような場合に相手方の生活を支えるための考え方です。
   慰謝料的財産分与とは、財産分与に慰謝料の性質をもたせるものです。

    財産分与の合意までの流れ

   財産分与をするときには、まず財産分与の対象となる財産を把握することからはじめましょう。
   財産分与の請求は2年間に限られます。
   また、財産分与を合意するときには「清算条項」として合意が成立した以上は「何らの債権債務がない」ことが確認されます。
   そのため後から清算するべき財産がわかっても請求できなくなります。

    年金分割も忘れずに

   財産分与の話し合いからもれてしまいがちなのが退職金や厚生年金です。
   将来支給される年金も分割して受け取ることができます。
   夫婦の一方が家事専業のため厚生年金保険料を支払っていなくても他方が公務員や会社員で厚生年金保険料を払っていれば婚姻期間中に払った保険料
   に相当する厚生年金を分割して受け取ることが可能です。

離婚する時は共有名義を解消する

離婚の話し合いをするときには、気持ちの整理がつかず衝突することも多くなりがちで話し合うことも難しくなりがちなため、共有名義の不動産もそのまま放置しておきたくなります。
しかし、共有名義だとかえって後々まで面倒が続いてしまうのでできるだけ離婚するときには共有名義を解消しておきましょう。
 

共有のままだと関係が続いてしまう

共有名義のままだと売却するにしても賃貸にだすにしても何らかの処分をするときには一人で勝手にできないので相手方の協力が必要になります。
お互いの意見が合わなければ現金化することもできずに塩漬け状態になってしまいます。
さらに相手方が認知症になったり行方不明になったりするとますます処分に困ることになります。
また離婚した後に再婚した相手方に子供ができその後に亡くなった場合には再婚相手やその子供が共有者になるためその方たちとの話し合いになります。
このような場合には共有者が多くなり関係も希薄になるためお互いの協力がうまくできなくなりがちです。
そのためできるだけ離婚のタイミングで共有名義を解消するのがよいのです。

共有名義を解消する方法

共有名義を解消する方法には次のような方法があります。
1. 単独名義にする
2. 家全体を売却する
3. 自分の持分だけ売却する

   単独名義にする
   単独名義にするためには、2分の1になるまでの差額分を現金や車・貴金属などで補填しなければなりません。
   不動産は高額なので補填するのが難しいことが考えられます。
   共有になっている場合に相手方の持分を買い取るときも同様です。
   相手の持分割合が2割であっても財産分与の清算は2分の1ずつとしてしなければならないので、差分の3割も含めて買い取らなければなりません。

   家全体を売却する
   家全体を売却することにお互いが了解できれば、これが最善の方法です。
   家を売却して残った現金を2分の1ずつに折半します。
   ただし、住宅ローンの返済が残っている場合には住宅ローンを返済して抵当権を抹消しなければならないので、自己資金で住宅ローンの返済ができな
   ければ、住宅ローンの残額以上で売却できることが条件になります。

   自分の持分だけ売却する
   家全体を売却しなくても自分の持分だけを売却して共有名義を解消することも可能です。
   しかし、買取ってくれる方は限定されるため注意しましょう。

住宅ローン返済中のときは注意が必要

財産分与をする家が住宅ローンの返済中であれば名義変更をするときには注意が必要です。

  名義変更するときには金融機関の同意が必要
    住宅ローンの借入をする際に結んだ契約書には名義を変更するときには金融機関の同意が必要だとされていることがほとんどです。
   そのため金融機関の同意を得ずに名義を変更してしまうと一括返済を求められることがあります。

  ペアローンや連帯債務の場合
   利用しているペアローンや連帯債務の場合は夫婦二人が債務者になっています。
   このような場合は、財産分与に際して債務者からはずしてもらわなければいつまでも住宅ローンを返済し続けなければなりません。
   「返済を続ける約束だからかまわない」としても、相手方がローンの返済を止めてしまえば自分の責任でなく「競売」にかけられて住む家を失ってし
   まうおそれがあるのです。

   また、住宅ローンを借り入れるときには債務者や連帯保証人の収入を融資判断の基準にしています。
   そのため債務者からはずれたいのに金融機関の同意を得るのが難しくてなかなか先に進めないこともあり得ます。
                                                         

まとめ

離婚をするときには気が滅入ってしまい、物事がおざなりになりがちです。
しかし、離婚をするからこそきちんと処理をしておかなければ後々もっと困難なことになってしまいます。
冷静に判断をし、後悔のない整理をこころがけましょう。