相続したいらない土地は
国が引き取ってくれる?

親が亡くなり相続したものの引き継ぎたくない、手放したいと思っている方が増えています。
「遠くに住んでいるので利用する予定がない」
「持ち続けていれば固定資産税がかかるので負担」
「放置すれば近所に迷惑がかかるので管理しないといけないが費用や手間がかかるし遠くに住んでいるので時間もとれない」
この記事では、相続した土地を手放す方法、特に新しくできた「相続土地国庫帰属制度」について解説します。

相続したいらない不動産を引き継がない方法

相続した土地を引き継がない方法には以下のような手段があります。
1. 相続放棄
2. 相続して売却
3. 寄付・贈与
4. 国庫帰属制度の利用

相続放棄

相続放棄は亡くなった方の遺産の全部を引き継がない方法です。
銀行預金は相続するけど、田舎の土地は相続しないといった選択はできません。

相続して売却

   いったん相続して第三者に売却しても手放すことができます。
   売却するためには、相続登記が必要なこと、場合によっては相続税が発生することなどに注意しましょう。
   さらに所有者がいらないと考えている土地を、お金をだして買ってくれる方をさがすのは困難が予想されます。

   寄付・贈与

   寄付や贈与によっても手放すことができます。
   相続登記が必要なこと、相続税が発生する可能性があることは売却と同様です。
   寄付や贈与は、売買と同じく「契約」なので譲り受ける相手方の承諾が必要です。
   なお、国や地方自治体への寄付は、道路を敷設する予定があるなど特別な理由がなければほとんど受け取ってもらえません。
   寄付を受けることによって固定資産税収入がなくなること、管理費用が新たに発生することなどの理由からです。  

   国庫帰属制度の利用

   新しく国庫帰属制度が創設されました。
   詳しくは章を変えて解説します。

国庫帰属制度とは?

  いらない不動産だからとの理由で相続登記をされないまま時間が経過したために所有者がわからない、連絡がとれない「所有者不明土地」が増加して社会問題になっています。
  「相続土地国庫帰属制度」は、今後所有者不明土地を増やさないようにする方策のひとつとして創設された制度です。

  国庫帰属制度はいつから始まる?

   国庫帰属制度は令和5年4月27日から始まります。

  国庫帰属制度の概要

   国庫帰属制度は、土地を相続したものの利用する予定がないので手放したいと考える方が増えたこと、それによって管理不全をおこし、所有者不明土地が増える要因になっていることから、
   1. 相続又は相続人が遺贈によって取得した土地を手放したい方のために国庫に寄贈させる制度を創設する
   2. 国庫に帰属させるにあたり過分のコストが必要にならないように帰属させるにあたり一定の要件を定める
   ものです。
   国庫帰属制度には次のようなメリット・デメリットがあります。

   メリット

   ● いらない土地だけを手放せる
   ● 引き取る相手を探さなくてよい

   デメリット

   ● 土地の要件に当てはまらないと帰属できない
   ● 審査に手間がかかる
   ● 費用負担がある

  国庫帰属制度の対象は?

   国庫帰属制度の対象となる不動産は「土地」のみです。
   さらに以下のような土地については、国庫に帰属させた後に管理に支障があり過分の費用が発生するおそれがあるため帰属させることができないとされています。
   ● 建物または管理あるいは処分をするのが難しい工作物がある土地
   ● 土壌汚染や地下埋設物がある土地
   ● がけ地
   ● 権利関係に争いがある土地
   ● 抵当権などが設定されている土地
   ● 道路など他人が利用する土地
   ● 境界が明確でない土地
   なお、国庫帰属制度はいらない土地だけを目的にすることができます。
   相続放棄は亡くなった方の財産全てを相続できなくなることと比べて、国庫帰属制度を利用すれば引き継ぐ財産を選択できるメリットがあります。

   国庫帰属制度の手続き

   国庫に帰属させるための手続きの流れは以下のようになります。

   1. 承認申請
   2. 要件審査・承認
   3. 負担金納付
   4. 国庫帰属

   承認申請

   相続または遺贈によって取得した相続人から申請をします。
   共有で取得した場合には共有者全員でしなければなりません。
   相続または遺贈によって取得した土地であれば帰属制度が始まる前の取得でもかまいません。
   申請先は、法務局・地方法務局が予定されています。

   要件審査・承認

   申請を受けた法務局は書面により却下事由がないかを調査し、却下事由がなければ現地調査を行って帰属させることが適当かを審査します。
   却下事由がなければ帰属を承認することになります。

   負担金納付

   審査を受けるためには審査手数料を納付しなければなりませんが具体的な金額はまだ決まっていません。
   また、10年分の管理費用を基本的には20万円としていますが、草刈りなどの管理を要する土地の場合には宅地の場合100㎡で約55万円、200㎡で約80万円など必要な管理によって異なっています。
   負担金は承認を受けてから30日以内に納付しなければなりません。

   国庫帰属

   期限内に負担金の納付をすれば国庫帰属通知がされます。
   国に対する所有権移転登記は国によって嘱託登記の方法で行われます。  

まとめ

   この記事では、相続したいらない土地を手放す方法と新しくできた相続土地国庫帰属制度について解説しました。
   それぞれの方法にはメリットとデメリットがあります。
   専門家に相談しながら最適な方法を選択しましょう。