不動産売買における引渡し猶予とは?

不動産を売買するときに「引渡し猶予」をお願いしたいといわれることがあります。
不動産売買は普段経験することがないことですから、いきなり引渡し猶予と言われても一般の方はとまどうばかりです。
この記事では、引渡し猶予とはどういったものか、引渡し猶予のリスクや注意点について、解説します。

引渡し猶予とは?

不動産売買において引渡し猶予とは、売買代金の決済が終わった後も売主が負っている引渡し義務を猶予して、住居であれば売主が売却後も売却した不動産に住み続けることをいいます。
通常の売買であれば、予め売買契約書で定めた売買代金の決済日に、買主は売買代金を支払い、売主は代金の受領と交換に売買目的の不動産を引渡すことで売買が終結します。
しかし、引渡し猶予の特約があれば買主は売買代金を支払っても売買目的の不動産の引渡しを受けることができません。

引渡し猶予はどうして必要?

売主が売買目的の不動産を引渡すと住む場所が無くなるので、売主が住み替える新居に入居できるまで猶予を与えることが目的です。
例えば、売主が住み替え目的で自宅を売却する場合に、新居の売買が終わっていなければ売主は新居に入居できないため、売却した自宅に売却後も引き続き住み続けなければならないからです。
住み替え目的で自宅を売却する場合には以下の2通りあるいは売却・購入を同時並行して売却が進みます。

   ● 売却先行
   ● 購入先行

売主が購入物件を手持ちの現金で購入する場合には、自宅を売却するまでに新居の売買代金を支払って入居すればよいので引渡し猶予の問題はおきませんが、新居の購入に住宅ローンを利用する場合などには複雑な問題が生じます。
売主が売却物件を購入するために住宅ローンを利用している場合には新居の住宅ローンと二重にローンを利用することになるため新居のローンの審査が厳しくなります。
利用する金融機関によっては先に売却物件で利用しているローンを完済するように要求されるために売却を先にしなければならなくなるのです。
また売主が売却物件の売買代金を新居の売買代金にあてる場合には自宅の売買を先にして売買代金を受領しなければ新居の売買代金を支払うことができません。
このように自宅の売却を先行しなければ新居の引渡しを受けることができない場合に、引渡し猶予を利用しなければならなくなります。

  引渡し猶予のリスク

買主が売買代金を支払った後も売主が住み続けることでリスクが発生します。
不動産の所有者と占有者(利用している方)が異なるために発生するリスクです。
例えば、売主が住み続けている間に以下のような不具合が生じたときには原則的には売主の負担となるものの買主にとってもリスクになります。

   ● 引渡し猶予中に新しく汚れやキズが生じたとき
         ● 引渡し猶予中に生じた設備の不具合
         ● 引渡し猶予中の地震や火災による被害

        また、買主が賃貸住宅に住んでいる場合には、引渡し猶予によって伸長された期間の家賃負担が余分な費用になってしまうので、この費用の補てんも考慮しなければなりません。

引渡し猶予の定め方

引渡し猶予は、売買代金の支払いと不動産の引渡しを同時にする売買の例外ですから、対価の発生、期間など引渡し猶予をする条件をきちんと定めておかなければ後日の紛争のもとになってしまうので、注意しましょう。

有償か無償か

一般的には引渡し猶予中の家賃などは発生しない特約が多くされています。
期間が短く、有償にしたために売主に何らかの権利が発生することを防ぐためです。
住宅の賃貸借には借家法が適用されます。
借家法においては借家人(借主)が厚く保護されるため借家法が適用されないように注意しなければなりません。
無償であれば使用貸借となり、売主が居住しても何らの権利が発生しません。
そのため多くの場合引渡し猶予は無償だとすることになります。
しかし、買主が引渡し猶予のために余分に負担しなければならない家賃の補てんや、売主に引渡し猶予によるペナルティを負担してもらいたい場合には、売買代金の減額や使用による損害の賠償といった方法で調整することも考えられるでしょう。

期間                                                               

引渡し猶予の期間は数日~10日、長くても2週間以内とすることが一般的です。
売買代金の支払いによって売買は既に完了しているので、あまりに長期の引渡し猶予は好ましくありません。
引渡し猶予の期間が長くなればなるほど先のリスクが発生する確率は高まります。
引渡し猶予期間が経過すれば確実に引渡してもらえるのか、売主の状況についてもきちんと把握しておきましょう。

売買契約書または覚書に記載                                                               

   売買契約を結ぶときに、引渡し猶予が必要であれば条件をきちんと把握して売買契約書にはっきりと条件を記載しておきましょう。
   引渡し猶予は、通常の売買と比べて重大な例外です。
   売買契約書には、

        ● 引渡し猶予によって生じるおそれがあるリスクについて損害は誰が負担するのか
        ● 有償か無償か
        ● 引渡し猶予の期間

       などを基本的な条件として記載します。
       引渡し猶予中の電気・水道などの費用負担や固定資産税の負担についても明記することが必要です。
      なお、売買契約書に引渡し猶予が書かれていると買主の住宅ローンが難しくなることがあります。 
      そのような場合には、売買契約書ではなく別途「覚書」によることも可能ですから、仲介する不動産会社の担当者と相談しながらすすめていきましょう。