コロナ禍の不動産市場をとりまく環境

新型コロナウイルスによる感染症による混乱は、今年に入ってさらに悪化しています。緊急事態宣言が発せられる回数や、地域も増えてきました。  このような事態の中で不動産を取りまく環境はどのようになっているでしょうか。

不動産取引件数・面積

不動産の取引件数をみると例年とも前年同月比がマイナスになる月はあるものの、2020年は一戸建て住宅では2月、4月~9月がマイナスとなり、マンションの場合は1月~9月までマイナスとなりました。コロナ禍による混乱の影響がみられます。

ところが今年に入って一戸建てもマンションも1月こそマイナスだったものの、2月以降はいずれも前年同月比がプラスで推移しています。

国土交通省月報の不動産取引件数・面積                       https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/totikensangyo_tk5_000085.html               

住宅ローンの金利の動向

下記の表は住宅金融支援機構が発表した民間金利機関の住宅ローンの金利の推移を示したものです。多少の上下はあるものの、ここ数年一定しています。

住宅金融支援機構HPから                                                        民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)

                                            更新日:2021年8月3日                                                          ※主要都市銀行のHP等により集計した金利(中央値)を掲載。なお、変動金利は昭和59年以降、固定金利機関選択型(3年)の金利は平成7年以降、固定金利機関選択型(10年)の金利は平成9年以降のデータを掲載。                                     ※このグラフは過去の住宅ローン金利の推移を示したものであり、将来の金利動向を約束あるいは予測するものではありません。https://www.flat35.com/loan/atoz/06.html

アメリカではワクチン接種が進んで景気回復への期待感から金利上昇する機会をうかがっているものも当面は見送られる様子です。        一方日本では今年4年に行われた金融政策決定会合において、現在の金融緩和政策を維持することを決定しました。当面は現在の低金利が維持される見通しです。

働き方改革

コロナウイルスに感染することを防ぐために、各企業は在宅勤務を採用し、テレワークが浸透してきました。働き方が変わっただけでなく、外出すること外食することも自粛し制限されることが多くなりました。                                       このため自宅にいる時間が増えたことで、住まいを見直す人が増えています、もっと自宅で快適に過ごすために、広い家を求めたり、賃貸住まいの人が自宅を購入したりすることが増えたのが先の不動産取引件数の伸びに反映されています。                          東京では、今までは『駅近』のマンションが人気だったものが、最近では、駅近は好まれず駅から離れていても広いマンションに人気があるというデータがあります。

不動産のIT化

コロナ禍とは直接関係がありませんが、政府が進めている『脱ハンコ』政策の流れで、不動産の業界でもIT化がすすめられています。2017年10月から不動産の賃貸契約において重要事項説明をオンラインですることが可能になり、2021年4月からは売買においても重要事項説明をオンラインですることが可能になりました。                                                               2021年5月にデジタル改革関連法6法が成立したことにより来年5月ごろまでには売買契約もオンラインですることが可能になる予定です。このため、今後は売主と買主が遠くにいても、離れた場所にある投資用物件でも、わざわざ出かけて行って重要事項説明をしたり売買契約をしたりすることもなくなりますし、重要事項説明や売買契約を行うために当事者の日程調整をすることも不要になる為、ますます不動産取引を行いやすくなります。  

偶然ですが、現在のコロナ禍において、この不動産取引のIT化は不動産取引にも追い風となります。ネットで物件を運び、そのままオンラインで重要事項説明を行い、契約までオンラインで済ませることができるのは、一般の人にとっても安心材料です。                     特に投資用物件のほとんどは内覧が行われていないことからIT化に適しています。      https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001337784.pdf

また、IT利用の延長で遠く離れた親が心配という人のために『見守り家電』をセットにして案内することも注目されています。

投資対象としての不動産

2021年の地価公示において全国の商業地の中で大阪は地下下落率上位の10か所のうち8か所を占めました。                                     長期化するコロナ禍の影響を大きく受けたと推測できますが、そのような大阪であっても大型投資がいくつかあり、東京ではシンガポールREITが388億円で日本ヒューレット・パッカード本社ビルを購入するなどアフターコロナを見据えた働きが散見されます。                              日本でもコロナウイルスのワクチン接種がすすみ、海外でもすすんでいますので、足踏みしている海外の資金が、今後再び日本の不動産市場に入ってくるのは間近だと言えます。