下落に転じた2021年の公示地価

下落に転じた2021年の公示地価

3月23日、国土交通省が2021年1月1日時点での公示地価を発表しました。住宅地、商業地などをあわせた全用途の全国平均は前年より0.5%下がり、6年ぶりに下落に転じる結果となりました。前年は1.4%の上昇でしたが、新型コロナウイルス感染拡大による来日客の激減や外出自粛の影響で、都市部を中心に大きく下落しました。

特に大きな落ち込みが目立ったのが、東京・大阪・名古屋の三大都市圏の商業地で、前年までは外国人観光客の増加や大規模な金融緩和による投資資金の流入で、都市部ではホテルや商業施設などの開発需要が高まっていましたが、新型コロナウイルスの影響で状況は一変。来日客の激減と外出自粛でホテルは不振に陥り、都心の繁華街では時短営業を余儀なくされた飲食店の撤退が相次ぎ、地価が下落する結果となったようです。

 また地方圏も、大都市圏ほどではありませんが、全用途で0.3%下落し、4年ぶりの下落となりました。再開発などで高い上昇率を維持してきた札幌、仙台、広島、福岡の地方主要4市も平均2.9%上昇と、前年の7.4%上昇より上昇幅は縮小しました。

福島県の公示価格

福島県内に目を向けてみると、県内全用途の平均では0.2%下落し、こちらも8年ぶりに下落に転じました。県内の地価は東日本大震災、原発事故で落ち込んだ後、復興需要を背景に上昇が続いていましたが、新型コロナウイルスによる経済活動の停滞と一昨年の東日本台風(台風19号)の影響が浮き彫りとなったようです。

住宅地では東日本台風で浸水被害を受けた地域では需要の減退が続き、10.5%と県内最大の下落率となったいわき市平下平窪三丁目は全国でも2位の下落率でした。一方、住宅地の上昇率を市町村別で見ると、富岡町が2.4%上昇でトップ、浪江町は同1.2%上昇と続きました。富岡町では廃炉関連の事業所・宿舎用地の取引が活発化しているようです。

商業地では新型コロナウイルスによる営業自粛などで売上が落ち込んだ飲食、宿泊、観光の各業種で下落が顕著に見られました。特に夜型の飲食店が多く立ち並ぶ福島市や郡山市などでの下落率が大きかったようです。評価にあたった国土交通省地価公示県代表幹事の佐藤栄一県不動産鑑定士協会副会長は「台風被害については当面、プラスになる要素はなく、商業地については新型コロナの収束次第という面が強い」と指摘しております。

新型コロナウイルスの影響が長期化すれば、全国的な下落傾向は長引く可能性があり、

「コロナの感染拡大をいかに抑止できるか」が今後の地価動向の行方を左右すると思われます。