媒介契約の締結後、不動産会社は販売活動に着手します。契約期間は3ヶ月とすることが多く、売主にとっては早く朗報を聞きたい思いが強くなりますが、予想に反しうまくいかないこともあります。

ときには感情的になってしまい「契約解除」という考え方がでてくることもあります。

媒介契約は成功報酬による契約であり、典型的な委託契約や請負契約とも違う形態の契約です。そのため契約解除に関する取決めについて明確な表現がされておらず、契約条項の解釈によって判断が変わることもあるのです。

ここでは稀に発生する媒介契約解除に関し、手順や注意点を解説します。

 
 

不動産会社との媒介契約を解除する理由

不動産の売却を依頼していた会社との媒介契約を解除する必要が生じた場合、どのようにするのか? そもそもどのような理由で解除しなければならないのか考えてみましょう。

よくあるパターンには次のようなケースが考えられます。

1.売却活動が積極的におこなわれていない、特に広告活動が消極的だ

2.囲い込みをおこなっている疑いがある

3.定期的な報告がなく売主から連絡することが多い

このほか稀ですが、売主の都合により売却を取りやめることもあります。

さらに契約書記載の条項に明確に違反した場合には、売主に契約解除権があり相当な期間を定めた履行催促ののち、解除ができることはいうまでもありません。

問題となるのは先述の “グレーな行為” が原因で契約解除するケースです。たとえば事例をあげると以下のようなものがあります。

      1. 広告手段はインターネット掲載のみで、不動産情報誌や新聞折込を利用した実績はありません。内覧の予約連絡もほとんどなく、販売活動を積極的にやっているようには思えません。
      2. 販売活動の成果が表れず悩んでいた売主が、たまたまインターネットで読んだ記事に『囲い込み』なる方法があると知り、調べてみたら「レインズ登録証明書」など一度ももらってないことに気づきました。もしかしたら『囲い込み』されているのかもと疑っています。
      3. 専属専任媒介は一週間に一度は報告しなければならないと契約書に記載されていますが、不動産会社から連絡が来た記憶がありません。

契約時に広告宣伝についての詳細を約束することはなく、販売活動の積極性については “売主が感じる印象” とされる可能性があります。

囲い込みについては、レインズのステータス管理のキャプチャー画像を記録するなど、明確な証拠がなければ追及はむずかしいものです。

定期報告についても電話での報告は記録がなければ、報告の有無すら明らかにすることはできません。

不動産会社の非を追究しようとしても『云った、云わない』的な話になってしまい、相手も簡単に引き下がることはなく、売主が費やす精神的エネルギーは相当なものになってしまいます。

 
 

媒介契約解除の手順

媒介契約を解除するさいに注意しなければならないのが、違約金を請求されるケースに該当するかです。

媒介契約書で定めている違約金に関する条項は以下のとおりです。

    1. 専属専任媒介契約

売主が他の不動産会社の仲介で取引を成立させたとき、および自己発見した買主と取引した場合、媒介契約をした不動産会社は約定報酬額を違約金として請求できます。

さらに、不動産会社に非のない理由により解除する場合は、不動産会社が契約履行に要した費用を請求することができます。

    1. 専任媒介契約

売主が他の不動産会社の仲介で取引を成立させたときは約定報酬額を違約金として請求できます。

また自己発見取引をした場合、および不動産会社に非のない理由により解除する場合は、不動産会社が契約履行に要した費用を請求することができます。

    1. 一般媒介契約

一般媒介では特別、違約金に関する定めはありません。

以上のように専属専任・専任の場合、不動産会社に非がないケースの途中解除は、それまで不動産会社が要した費用を請求することができます。

非があるか非がないかは不動産会社としても、簡単に「非がある」とは認めません。仮に非があるとしても契約解除には「相当の期間を定めて催告」した後でなければ解除はできません。

仮に契約締結1ヶ月後に報告義務違反やレインズ登録違反があった場合、相当な期間として1ヶ月間を設け業務の改善を促します。その結果改善されないとしても、契約終了まではあと1ヶ月しかありません。

契約解除の話しあいや業務違反の有無についてやりとりするよりも、新しい不動産会社を探す活動に時間を使うほうが意味のあることと考えられます。

 
 

不動産会社に非があるかグレーなときの解除

前述したような非があるかグレーな場合、不動産会社が簡単に非を認めることはなく、契約期間の終了を待つのが最善です。

専属専任・専任は3ヶ月と法定期間が決まっており、一般媒介でも必ず契約期間の明記は必要です。期間終了後は更新契約が必要なので、「期間満了の〇日前までに」などの定めはありません。更新は文書によりますので、満了時に文書での意思表示がなければ自動的に契約は終了します。

契約終了後、売主はレインズの登録を確認してください。

レインズ登録時の「登録証明書」が手元にあると思いますので、証明書の下部に記載されている「IDとパスワード」でレインズにアクセスします。

不動産会社が登録を抹消していれば、ページは表示されず問題ありません。登録が削除されていない場合は不動産会社に連絡し、削除を申入れましょう。

 
 

売主都合による契約解除

売主の都合により契約解除する場合、たとえば売却を中止することになったなどのケースです。

すみやかに不動産会社に連絡し、事情を説明し媒介契約解除の申入れをします。問題となるのは売主の一方的な解除であり、違約金の請求がある可能性です。

専属専任および専任の媒介契約には違約金の定めがあり、不動産会社の責めに帰すことができない事由による解除は、媒介業務に要した費用の請求ができるとされています。

具体的には広告費用やオープンハウスなどに要した費用になります。請求は不動産会社の考え方によるので断定はできませんが、請求されないことが多いのではないかと思われます。

媒介活動の期間によっても不動産会社の費用負担は変わるので、誠意のある解除申出が必要といえるでしょう。

 
 

解除後の直接取引

専属・専任・一般、すべての媒介契約において定められている、共通の約定があります。

直接取引」のタイトルがついた条項です。

媒介契約の有効期間内および有効期間終了後2年以内の期間、売主の行為に対し制限が設けられます。

媒介契約期間中には、オープンハウスや内覧でお客さんがこられます。そのようななか、訪れたお客さんが直接売主を訪ねてくることや、媒介契約終了後になんらかの事情で、再びこられたお客さんとお会いすることになり、売買の話が復活してしまうことがあります。

この場合、お会いすることになったお客さんと知り合うキッカケを作った不動産会社に、取引の仲介を依頼することが求められているのです。つまり、不動産会社には媒介契約終了後2年間は、仲介業務をおこなえる “権利” があるとみなしているのです。

不動産会社のこの権利を無視して、お客さんと売主が直接取引した場合、約定報酬額の請求ができることを規定しています。契約が終了してもある2年間の制限に注意してください。

 
 

まとめ

媒介契約期間の3ヶ月は不動産会社の変更を考えると、長くもなく短くもない丁度よい期間設定です。仲介会社を決めるさいには、いろいろ迷うことがあるかも知れませんが、「とりあえず3ヶ月」という考え方もあります。

不動産会社とのつき合いは実際に体験してみなければ、理解できない部分もあるのです。つき合っていくうちに信頼感が生まれるケースもありますし、逆の場合もあるかも知れません。うまくいかないときは、次の3ヶ月に期待をかけましょう。