ホームインスペクションは中古住宅の構造耐力上主要な部分や雨漏りなど、重要な不具合の有無や劣化具合を建築士が点検し、買主が購入するさいの判断材料を提供することが目的です。

ホームインスペクションは10年ほど前から、一部の建築士事務所などがおこなっていたサービスです。中古住宅の売買において、買主が建築の専門家から意見を聞くことにより、冷静に購入を判断できるメリットが評価されていました。

平成30年4月1日から宅地建物取引業法の改正により、「建物状況調査」に関し不動産会社(宅地建物取引業者)は、媒介契約締結時に説明をするなどの義務化がなされました

売主が売却を依頼するさいには説明を受ける事項になっています。

ここではホームインスペクション(住宅診断)の内容と、宅建業法における「建物状況調査(インスペクション)」に関する規定について解説します。

 
 

ホームインスペクション(住宅診断)とは?

ホームインスペクションの目的は、専門家である建築士によって客観的かつ公正な立場で、取引対象の住宅を点検・調査し売主および買主に対し報告し、現状について理解してもらうことです。

ホームインスペクションの調査結果は買主には貴重な情報となります。

中古住宅は1年が経過するか一度でも使用履歴があるものと定義されています。経過年数が長いと、新築とは異なり修繕すべき部位や交換が必要な設備などもあります。

住宅に使用される資材や器具などの、交換サイクルやメンテナンス頻度はある程度決まっています。将来にわたって必要な修繕工事やメンテナンスの計画を立てるさいに、インスペクションの結果は活用できるものなのです。

特に外壁や屋根のメンテナンスは耐久性に影響があり、定期的な実施が必要なものといえます。マンションの場合は共用部の修繕計画は管理組合により立案されますが、戸建住宅は所有者本人が計画を立て実施しなければなりません。

ホームインスペクションにより現状の劣化具合を把握し、数年後~10年後におこなう工事メニューがリストアップされると、戸建住宅の長期修繕計画が立てられるのです。

ムインスペクションを実施してから購入を決断したい』といった、要望がだされる場合があります。売主としては『もしも不具合や劣化具合を指摘されたら……』と、不安になるものですが、調査をおこなう専門家は欠点をみつけ出そうなどの意識はありません。

客観的に物件の “健康状態” を把握するだけです。売主にとっても現在の物件状況を知っておくことは大切なことです。

 
 

ホームインスペクション(住宅診断)の実際

ホームインスペクションは住宅の外部と内部を点検し、劣化や不具合の状況を調査するもので、調査項目の一例を示すと以下のようなものになります。

  項        目 点検部位
外部 基礎 基礎表面
基礎配筋
基礎の高さ
外壁 外装材表面
外装材表面
シーリング
屋根 屋根表面
雨どい
軒天井 仕上材表面
その他  
室内 床全体 床の傾斜
1階床 床のたわみ
2階床 床のたわみ
3階床 床のたわみ
居室床 仕上材表面
水廻り床 仕上材表面
壁や柱の傾斜
仕上材表面
天井 仕上材表面
その他  
床・屋根の骨組 床下 床下底面
防湿層の施工
乾燥状態
断熱材の状態
基礎立上がり
小屋裏 乾燥状態
断熱材の状態
梁・桁・小屋組
雨漏れの痕跡
その他  
設備 給排水給湯設備 漏水
さび
劣化
換気設備 動作
外壁貫通部

さらに新築時や増築時の建築確認済・検査済の年月日と番号を、売主が保管している場合は書類で確認します。もし確認済・検査済証がない場合には、所在地の市区町村建築指導担当部署にて、計画概要書の閲覧などにより確認します。

点検方法は基本的に「目視」によります。点検器具としては水平器・水準器・クラックスケール・打診棒・コンベックス・探知機などを用いることが多いです。

 
 

ホームインスペクション(住宅診断)の実際

ホームインスペクションは住宅の外部と内部を点検し、劣化や不具合の状況を調査するもので、調査項目の一例を示すと以下のようなものになります。

  項        目 点検部位
外部 基礎 基礎表面
基礎配筋
基礎の高さ
外壁 外装材表面
外装材表面
シーリング
屋根 屋根表面
雨どい
軒天井 仕上材表面
その他  
室内 床全体 床の傾斜
1階床 床のたわみ
2階床 床のたわみ
3階床 床のたわみ
居室床 仕上材表面
水廻り床 仕上材表面
壁や柱の傾斜
仕上材表面
天井 仕上材表面
その他  
床・屋根の骨組 床下 床下底面
防湿層の施工
乾燥状態
断熱材の状態
基礎立上がり
小屋裏 乾燥状態
断熱材の状態
梁・桁・小屋組
雨漏れの痕跡
その他  
設備 給排水給湯設備 漏水
さび
劣化
換気設備 動作
外壁貫通部

さらに新築時や増築時の建築確認済・検査済の年月日と番号を、売主が保管している場合は書類で確認します。もし確認済・検査済証がない場合には、所在地の市区町村建築指導担当部署にて、計画概要書の閲覧などにより確認します。

点検方法は基本的に「目視」によります。点検器具としては水平器・水準器・クラックスケール・打診棒・コンベックス・探知機などを用いることが多いです。

 
 

ホームインスペクションと瑕疵担保責任

売主は、ホームインスペクションと瑕疵担保責任についても、理解しておく必要があります。

令和2年4月1日から民法が改正され、瑕疵担保責任は「契約不適合責任」に変りました。名称は変わりましたが適用される瑕疵が隠れた瑕疵だけでなくなり、追完請求や代金減額が認められるようになったなどの違いはありますが、概念に大きな違いはありません。

問題はホームインスペクションにより調査したとしても、『瑕疵がない、契約不適合となる現象がない』ことを証明するものではないことです。さらに調査物件が、本来有すべき性能を満たしていると保証するものでもないのです。

ホームインスペクションにより売主や買主が知り得ることは、劣化具合や修繕工事の必要性と、次の2点に関する専門家の見解になります。

      • 構造耐力上の主要な部分に明らかな危険性がないか
      • 雨漏りの履歴がみられることおよび将来の可能性について

点検方法は目視によるものであり、見えない部分を解体しておこなうものでもないので限界があります。しかし住宅の構造や施工方法の知識がない者が点検するのと異なり、一応の信頼性が期待できるわけです。

 
 

既存住宅売買瑕疵保険の加入手続き

新築住宅には売主や施工会社に10年保証が義務づけされています。その場合多くの事業者は「瑕疵保険制度」を活用し保証保険に加入しています。

中古住宅にも最大5年間の保証が適用される保険があり、「既存住宅売買瑕疵保険」といいます。

保険加入を申込めるのは売主・買主どちらからでも可能になっており、保険会社に登録された検査員(検査機関)が検査をし、対象物件と認められるか必要な修繕工事をおこなうことにより、保険加入ができるようになります。

この検査は宅建業法で定めた「建物状況調査」にも該当しますので、保険申込の前にホームインスペクションを依頼し、劣化状況が一定基準を満たしていた場合、保険会社の検査を省略して瑕疵保険に加入することも可能になりました。

万が一引渡し後に「契約不適合責任」を問われる事象があった場合、瑕疵保険によりカバーできる可能性もあるので、ホームインスペクション+瑕疵保険は検討したいものです。

 
 

宅地建物取引業法が定めた「建物状況調査」の規定

ホームインスペクション(住宅診断)は平成30年4月1日から、宅地建物取引業法において建物状況調査として制度化されました。宅建業法第34条の2第1項第4号、第35条第1項第6号の2、第37条第1項第2号の2にて規定しています。

それぞれの条文は下記リンクから確認してください。

不動産会社(宅地建物取引業者)の義務として、建物状況調査に関する事項の説明と契約書類への明記を定めています。

      1. 媒介契約時において不動産取引の当事者に対し、ホームインスペクションをおこなう専門家について、不動産会社があっせんするかしないかを明記する
      2. 不動産取引の当事者(売主または買主)がホームインスペクションを専門家に依頼し、住宅診断をおこなった場合は、その概要について重要事項説明書に記載し説明する
      3. 上記の住宅診断をおこない、「建物の構造耐力上主要な部分」または「雨水の浸入を防止する部分」の状況について売主、買主の双方が確認したことを宅建業法第37条書面(売買契約書)に記載する

ホームインスペクションの結果は、「建物状況調査報告書」などの名称がついた書類として、依頼した売主か買主に専門家である調査技術者から渡されます。重要事項説明書を作成する宅地建物取引士は、建物状況調査報告書にもとづき必要事項について説明書に記載し、売買契約後は重要事項説明書と売買契約書に併せて「建物状況調査報告書」を買主が保管します。

 
 

ホームインスペクション(住宅診断)の実施率と今後の課題

ホームインスペクションが不動産取引に導入されたわけですが、実施率はまだ低いものになっています。

施行からまだ2年ですので、まだまだ周知されていない面もあります。また制度の建付けが「専門検査員のあっせん有無」についての告知だけであり、積極的にホームインスペクションを勧めるものではないことも原因と考えられます。

また「専門検査員のあっせん有無」についての告知は媒介契約時と規定されており、一般的に売主との媒介契約は締結されますが、買主が正式に媒介契約を締結する慣例はありません。

つまり買主がホームインスペクションについて知らされるのは、売買契約前の重要事項説明時であり、すでにホームインスペクションをおこなうタイミングではないことも大きな理由と考えられます。

今後は制度のしくみが変更されると、買主からのホームインスペクション依頼が増加する可能性はあります。売主としては断ることもできますが、インスペクションの拒否は物件の信頼性に係ることであり、商談が進まない理由になる恐れもあります。

むしろ売主が積極的にホームインスペクションをおこない、専門家による客観的な建物評価を受け、買主と物件情報を共有する姿勢が大切ではないでしょうか。

 
 

まとめ

ホームインスペクションについて解説しました。まだまだ一般に知られていない制度かもしれません。しかし調査により物件について正確な情報を知ることができた買主は、不安や疑問点なく売買契約に臨むことができています。

売主様にもぜひ、ホームインスペクションの意義を理解していただき、理想的な形で不動産取引に「建物状況調査」が根づくことを願うものです。

ホームインスペクションをおこなう全国の建築士は『日本建築士会連合会 既存住宅状況調査技術者の検索』で検索が可能です。

既存住宅瑕疵保険の詳細については『住宅瑕疵担保責任保険協会』で詳しい内容を確かめてください。